第24話 学園最強は誰だ!?
クラス対抗試合は想定していたよりも遥かに、白熱した試合展開となっていた。
まだ魔法に不慣れな生徒が多い中等部では、主に武器同士での戦いとなっていたが、様々な武器――剣を初めとして、斧、短剣、鎌、槍、素手、弓等様々な武器で戦う姿は見ごたえがあったし、高等部の2年生以上の試合ともなれば、一部試合では派手な魔法合戦や高度な魔法と武器の複合戦が繰り広げられていた。
「やっぱり高等部ともなると、魔法、武術共にレベルが高い試合になるんですね!」
目を輝かせながら問いかけて来たチャールズ皇子に、俺も同意する。
「元々国内でも屈指の名門校だからなぁ、想像してたよりはずっと強い生徒が多い」
何せクラスの生徒達がストーをある程度評価していたから、てっきりもっと低レベルな生徒が多いかとも思ってたが、ストーレベルの生徒なら中等部でもチラホラ見かける位には魔法のレベルが高いのも居たし、高等部2年から上には騎士団にスカウトしたいレベルの生徒も何人かいた。
「中でも、あの人は別格だな……」
「3年生のレーナさんですか?」
「だな。あの人はウチの騎士団に入っても、即戦力で活躍できるレベルだ」
「確かに素人の僕の目から見ても、圧倒的ですからね」
高等部3年のレーナ・ミレーナ先輩。緑色の長髪と、中世的な顔立ちが印象的な、この学園の生徒会長である。
彼女の戦闘スタイルは速度と威力に長ける雷魔法を使って牽制しながら、腰に下げたレイピアでの肉弾戦を仕掛けるやや近距離寄りの魔法剣士だ。
「センさんの目から見ても、あの雷魔法は高レベルなんですか?」
4重展開した雷矢を時間差で放ちながら、レイピアとの連携で敵を追い詰めていく様を指して、皇子は聞いて来た。
「総魔力量が多くないのに、魔力消費の激しい雷適正って言うのがやや残念ではあるけど、それも技術力でカバーしてるからね。雷魔法の使い手として、学内屈指の魔力量を持つシャーロットよりも、現時点では強いだろうな」
そう言ってシャーロットを指さすと、彼女が渋い顔で俺を見た。
「アナタが私の何を知ってるっていうのよ! まぁ、レーナ先輩に現時点で勝てるかって言うと、難しいとは思うけど」
口を尖らせながらも才能ある人間には素直なシャーロットに、思わず苦笑いする。
「すいませんセンさん、そちらの方は?」
「あー、ヘイズ侯爵家のご令嬢である、シャーロット・ヘイズお嬢様だ」
「貴方が私の家格を覚えていたことに驚きを隠せないけど……シャーロット・ヘイズと申します。以後お見知り置きを」
制服のスカートをつまみながら、シャーロットがカーテシーする。
「ご丁寧にどうも、シャーロットさんも雷魔法を使えるんですか?」
「ええ、まだ修行中の身ではありますが」
「そうですか……そうなると、センさんと同じ授業を受けられてるんですよね?センさんは、雷魔法の使い手としてはやっぱり目標ですか?」
そう邪気の無い瞳で見られて、シャーロットはたじろきつつ悔しそうな顔をする。
それもそうだろう、なんせコイツは授業の度に俺に突っかかってるのだから。
「えーっと、日々色々な事を学ばせて貰っています」
目を反らしながら言うシャーロットに、肩を竦める。
「なるほど、そうなると益々試合が見たくなってきますね……」
皇子がそう呟いたのを、俺は聞き流した。……聞き流してしまった。
◇
「やっとこれでクラス対抗試合も終わりか……」
我らがクラスは1年の中で3位と言う微妙な成績で終わったが、俺にとってはどうでも良かった。
試合が始まって初日に襲撃を受け、二日目は慣れない実況と皇子への対面と忙しかったが、三日目は残すところ高等部の優勝者へのトロフィー授与のみとなった事に感動を噛み締める。
未だ外部の人間もいるため、皇子やリーフィアが狙われる可能性が0では無いものの、身分の不確かな人間は2日目以後厳しく制限されているのと、教師や近衛が常に厳戒態勢を敷いているため、襲われる可能性は極めて低い……後はだらけていればいい筈だ。
「弟君、お疲れ様」
「サンキュ、ミヨコ姉」
ミヨコ姉が差し出した水を受け取ると、一気に飲み干す。
正直この3日間はずっと気を張っていたため、疲れがドッと肩にのしかかっていた。
「あーあ、どうせなら私も試合出たかったなぁ」
「それを言うなら、私も出たかったわ」
そんな事をナナとリーフィアが言い出すが、空笑いする。
「ナナやリーフィアが出たら、他の奴らが一蹴されるだけだろ」
そう言うと、リーフィアが難しい顔をする。
「クラス対抗って意味ならそうでも、ウチのクラスの場合センやユフィにシャーロット……後ジークも居るのよね。正直、別のクラスに勝つより私の場合出場する方が厳しい気がするわ」
そんな事を真剣な顔で言うリーフィアに、思わず皆で吹き出してしまった。
「そろそろ皇子様が、トロフィー渡すみたい」
ユフィの言葉を聞いて会場へ改めて目を向けてみれば、丁度皇子がレーナ先輩にトロフィーを手渡している所だった。
「レーナさん、優勝おめでとうございます」
「ありがとうございます、チャールズ皇子」
レーナ先輩が頭を下げながらトロフィーを受け取ると、会場が今日一番の喝采に包まれた。
当然俺達も、レーナ先輩や他の戦った選手達に拍手を送った。……まぁ、俺は片手を吊ってるから厳密には拍手じゃないけど。
そんな祝福ムードの中、皇子がレーナ先輩にある質問をした。
「今日の試合の中で、悔いが残っている事とかありますか?」
その問いに対し、会場にいた全員は首を傾げた。何故優勝者に、そんな無粋な質問をするのかと。
「悔い……ですか。私は自分の出来る全力を尽くしてこの学園の頂点に立つことが出来ました。後々反省すべき点はあるでしょうが、悔いは残っていません」
そんな風に清々しく言うレーナ先輩に、会場中は拍手を送るが、皇子は何やら不服そうに唇を尖らせている。
「確かに貴方の能力と結果には、手放しに賞賛を送ります。ですが……現時点で貴方がこの学園の頂点と言うのは、疑問が残らないでしょうか?」
その言葉に、会場が騒然となる。
当然、俺達も唖然としていた……クスクス笑うリーフィアを除いて。
「チャールズ皇子は、この学園の中で私より強い者をで知ってらっしゃると?」
やや険を帯た声で問いかけるレーナ先輩に、皇子が頷いた。
――おい、まさか
「皆さんも知っておいででしょう、この学園に最強と呼ぶに相応しい英雄がいる事を!」
そう言いながら皇子がVIP席――俺を指さしたので、思わず逃げようとするが、リーフィアに阻まれる。
「どけ、リーフィア! 俺はこれからほとぼりが冷めるまで逃げる!」
「それは残念ながら、させられないわ」
「何故?」
「面白そうだから」
満面の笑顔で言い放つリーフィアに、思わず頭を抱える。そして皇子は、なおも演説を続ける。
「レーナさん、貴方が強い事は認めましょう。クラス対抗試合での優勝は、間違いなく貴方の物です。ですが貴方は、今年卒業してしまう……このまま、英雄と剣を交える事無いまま卒業して、それで満足なんですか?」
そんな皇子の言葉に、レーナ先輩が悩み始める。
ーーいや、悩まなくていいから!
「そうですね。私も魔法剣士の端くれ……一度で良いから、英雄と呼ばれる人と剣を交えてみたいと思います」
レーナ先輩がそう言った瞬間、会場は先ほどのトロフィー授与の時よりも盛り上がった。
――いやいや勘弁してくれ、俺はもう疲れてるんだって
そう思いながら周りを見回すと、ミヨコ姉とナナ、ユフィは苦笑を浮かべ、リーフィアは喜色満面を、シャーロットは険しい顔を浮かべていた。
「レーナさんならきっと、そう言って下さると思ってました。先生方もエキシビションをを行うことに、まさか否やは無いですよね?」
そう皇子に笑顔で聞かれ、審査員をしていた先生方が微妙な顔ながらも頷いた。
「生徒の気持ちを第一に考えるなんて、やはりこの学園は素晴らしいところですね。エキシビションマッチ、期待して待ってます」
そんな風に皇子が言い放ちながら立ち去ると、会場は上限を忘れたような盛り上がりを見せる……俺の気持ちとは反対に。
……結果、皇子の演説が終わった後すぐに俺は先生方に連行され、参加の意思を聞かれることも無いまま、体調のチェックを受けた。
その際に2日前に大けがをしたばかりなため試合なんて出来ないと主張したが、ほぼ試合に支障ないレベルにまで腕が回復しているのを確認されると、20時から試合開始となる旨を言い渡された。
昨日数時間作者がタイトルを変えましたが、
見なかった事にして頂けると幸いです。




