第8話 入学式と衝撃の事実
「おっ、あんたら新入生かい?」
巨大な校舎に圧倒されながら正門へと近づいていくと、守衛の一人に声をかけられた。
「はい、新入生が3人に、中等部の編入性が一人なんですが、どちらへ向かえばいいですか?」
事前に渡されていたパンフレットに見取り図は掲載されており頭に入ってはいたが、学園の広大過ぎる敷地内には大小十数個の建物が屹立しており、体育館一つとっても複数存在しているため念のため確認すると、気持ちの良い笑顔で返される。
「新入生の入学式は正面の一番大きな建物で、入学式が後30分ほどで開始される。一応案内板も出てるから、そっちを確認して行けば迷う事は無いだろ。編入生は左に進んだ後まっすぐ行くと、巨大な赤レンガの建物が見えて来るから、ソコが寮になるな。案内は出てるが、女子寮が左側、男子寮が右側だ」
「丁寧に、ありがとうございます」
そう言って頭を下げると、「頑張れよー」と手を振られた。気の言いおっちゃんだ。
「じゃあ、私は一旦分かれるね。昼頃には入学式終わるんだよね?」
「ああ、その筈だ。今日は入学式が終われば解散になる予定だからな、寮の前ででも待ち合わせよう」
事前に渡された予定表を頭の中で確認しながら予定を決めると、その場でナナと別れ、俺達は正面の建物へと向かっていく。
「そう言えば、リーフィアは学園とか通ったことあるのか?」
ふと疑問に思い訪ねてみれば、リーフィアは首を横に振った。
「いいえ、私はずっと王宮で個人指導だったから……お陰で肩が凝ってしょうがなかったわ。センたちはどうだったの?」
「俺は一度も通ったことが無い、ずっと騎士団だったからな」
「私も殆どセンと同じです、騎士団と過ごす前は教会に在籍してましたが」
「へぇ、ユフィは元修道士だったのね。今度詳しく聞かせてくれないかしら?」
そんな会話をしている内に中央の城のごとき建造物に近づき、橋を渡って石造りの門を潜ると、デカデカと新入生は此方と書かれた横断幕と共に、簡易の受付が設けられていた。
「新入生は此方で花のコサージュを受け取ってくださーい」
「受付が終わった人から、中に入って前から詰めて座席に座ってください」
そんな先輩方と思われる人たちの威勢のいい声を聴きながら受付へ近づくと、受付の女性とが笑顔で挨拶してきた。
「おはようございます、お名前をお願いします」
「セン・アステリオスです」
「ユフィ・カレリンです」
「セン君とユフィさんね……って、セン・アステリオスって天空騎士団の!?」
そう言って少女が大声を上げ、周りが何事?とざわめき出し……俺は思わず頭を抱えたくなった。
「ご、ごめんなさい。まさか有名人にこんな所で思わなくって。はいこれ、新入生用のコサージュね……それで、後ろの人は?」
「私か?私はリーフィア・ラ・ベンデンバーグだ」
そうリーフィアが言った瞬間、受付の女性が目を見開き声を上げ――様としたところで、ユフィが口を押えた。マジグッジョブ。
「もが、もがが」
「先輩、悪いですけどコサージュ貰っていきますね?」
そう言ってユフィが口を押さえてる隙にコサージュを取ると、リーフィアの手を握ると案内板に沿って入学式の会場へと移動する。
「……セン、手」
暫く行った所で、ユフィからリーフィアと繋いでいた手を見咎められる。いや、これは不可抗力だろ……と思いながらも手を放した。
「はは、私は別に気にしないけどね」
そう言って快活に笑いながら、俺が手に持っていたリーフィア用のコサージュを取っていき――何やら考えた後、再度オレの方にソレを差し出した。
「どうせなら、センがつける?」
そう言って手を突き出され、コサージュとリーフィアの胸元を俺の視線が往復する。……本人の要望ならしょうがないかっ!そう思ってコサージュを握ろうとした所で、横から白い腕が伸びてきて、手早くリーフィアの胸元に取り付ける。
「ふふふ、残念だったわねセン」
「い、いや何を言ってるやら」
「……」
ユフィにジト目で見られながら、俺達はだだっ広い講堂に到着すると、何百と並べられたパイプ椅子の空いたところへと移動する。
「隣、座っても良いか?」
そう言って紫がかった髪の隣の男子生徒に声をかけるが、全くの無視をされる。普通は視線位寄こすだろうに、感じの悪い奴だなぁ……等と思っていて、ふと気づいたことが有る。
その生徒の耳が、中途半端な長さで横方向に伸びていたのである。しかも髪で隠れて見にくいが、僅かな突起が有る事も確認できた。
「あー、アンタ魔族とのハーフか?ハーフって魔力強い人多いらしいが、本当か?」
思わず気になってそう問いかけると、男はギロッと俺の方を見て一言だけ漏らした。
「ウゼェ」
ん?
んん?俺はコイツに喧嘩売られたのか?そう思い思わず胸倉を掴もうとするが、後ろからユフィに止められる。
「ハーフの人の中には、人間を嫌ってる人もいるから」
そう言ってユフィに宥められるが、納得がいかない。そして爆笑しているリーフィアにも、納得がいかない。そう思いながら周囲を見回してみれば、後ろの方も大分埋まってきている事を確認する。
「っと、そう言えばリーフィアは何時頃挨拶の為に移動するんだ?」
「学園長と来賓の挨拶が済んだら直ぐに移動して、その後はずっと前の方に座る感じね」
「了解、じゃあ俺達もリーフィアが移動するタイミングで舞台袖に控えてよう」
「了解」
その後も有事が発生した際の為に、それぞれの動きなどを改めて確認していく。既にリーフィアが会場に入って来た時点で学園側も最大限の警戒をしているが、間違いなくそれも徒労で終わるだろう……何せユフィが室内全員に対し、リーフィアに敵意を向けていないかを確認済みなのだから。
「あー、それでは入学式を執り行います。司会は私……」
そんな声が発されると共に、ミレーヌ王立魔法学院の入学式が始まった。
◇
入学式が滞り無く終わり、新入生たちがそれぞれ色々な場所へと散っていく。その顔にはこれからの学園生活への期待と言うよりはどこか疲れているように見える。
俺も最初こそ異世界で始めての入学式という事で期待していたが、何処の世界でもお偉いさんの語る言葉はつまらないし、入学式の段取りだって大差ない。唯一の見どころはリーフィアの新入生代表挨拶位だった。……だが檀上から見ていて最も気になったのは、原作の主人公が新入生として並んでいない様に見えた事だった。
原作の主人公――暁 悠斗は本来1年F組の生徒として入って来る筈だったのに存在しない……そのことに、妙に胸がざわつく。
「セン、どうかしたの?」
俺が悩んでいる事に気づいたのか、心配げにユフィが声をかけて来たが首を横に振る。何百と言う数の学生が居たんだ、俺の見間違いという事も有るだろう……そう思って自分を納得させていた所で、一人の男性教諭が近づいて来るのが見えた。
「あっ、リーフィア皇女殿下。こちらにいらっしゃいましたか」
そう声をかけて来たのは、確か1年D組を担当する教師……ヨーグ教諭だった。
「あら、何か用かしら?事前の打ち合わせでは、この後の予定は無かったように思うけれど」
リーフィアのそんな疑問の声に、ヨーグ教諭が一瞬鼻白むが、言葉を続ける。
「申し訳ありません、先日の打ち合わせでお目通り叶わなかった教員が、是非皇女殿下にお会いしたいと言っていまして……」
「結構です。どうせ後日お会いすることになるでしょうし」
そう言って素気無く返されたヨーグ教諭が弱った顔をしているが、俺は思わず疑問に思ったことを尋ねてみた。
「すいません先生、一件お伺いしたいのですがよろしいでしょうか?」
「えーっと、君は?」
皇女殿下との話の途中で割って入ったせいだろうか、ヨーグ教諭が煩わしそうな顔をするが構わない。
「私は、皇女殿下の護衛をさせて頂くセン・アステリオスと言います」
「あー、君が。それでセン君は一体どんな要件なんだい?」
俺がリーフィアの護衛だと言うと、ヨーグ教諭は納得した様な顔をして、改めて此方を向いた。
「はい、皇女殿下とは直接関係ないのですが……今日の新入生の中に、暁 悠斗という生徒は居ましたでしょうか?」
「アカツキ君……アカツキ君ねぇ」
この国では珍しい響きの生徒だ、新入生の名簿を把握してれば別のクラスでも覚えているかもしれない……そう思い訪ねてみると、ヨーグ教諭が「あっ」と言った後、渋い顔をした。
「確かにアカツキさんは今日の入学式に来るはずでしたね」
「来るはず?」
その表現に更に胸騒ぎを覚えながら聞き返すと、ヨーグ教諭は声を小さくしながら言った。
「アカツキ君は学院に来る途中の馬車で、事故に会われたそうですよ」
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まだまだ作者として至らない点も有りますが、これからも何卒よろしくお願いします。




