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−日本転移− 防衛魔術学校の英雄譚  作者: 空条承太郎
動乱編
6/33

接触

門から敷地内へと足を踏み入れた大和がふと右の方向を見ると、【警備隊】と書かれた表札を掲げた平屋のコンクリートの建物があり、その横にある広めの駐車場には武装されている物々しい装甲車が数台止まっているのが見えた。


(……)


大和はその光景から目を離し、無言のまま砂利道から再びアスファルトで舗装された道を男に言われた通りに真っ直ぐ進み始める。

その歩く道の両脇に一定の間隔で植えられた桜は綺麗に咲き誇っており、散った花びらは無機質なアスファルトの道を薄桃色の絨毯の様にしていた。



「……待てよ…まさか、ね」


そんな道を歩いていた中、大和は妙に後ろが気になりそのまま背後を振り返った。


(……!?)


すると真っ直ぐな道の先の大和が入って来た正門から誰かが入って来たのが見えた。大和は思わず立ち止まってその者の姿が完全に見えるぐらいに近付いて来るのを待つと思わず固まってしまう。



「…んっ、人の顔見てどないしたんや?」


その者は平均的な身長の大和と同じくらいの身長の少年。そしてツンツンした茶色の混じった若干長めの髪をしており喋って開いた口元の端には八重歯が覗いているのが見える。

少年はかなり目立つ赤いアロハシャツに下は短パンといった季節がずれてる奇抜な恰好をしており、背中には大和の様に大きな荷物を背負っていた。



「あ、ごめん…もしかして入学生なのかな、って思って」


「ん、そうやで。あんたもか?」


「うん、そうだよ…ところでさ、変な事聞くんだけども…君って北条甚八って名前だったりする?」


「…んっ?なんでわいの名前知ってるんや、何処かで会った事あったっけか?」


「いや。ない筈…ない筈なんだけど」


と、大和は言葉が詰まってしまう。

知らない筈の少年の名前を何故か知っている、なんて自分でも何故なのか理解不能だからである。

そんな戸惑っている大和に対して甚八は面白そうに笑みを浮かべて大和の肩を叩いた。



「まっ。よう分からへんけど、後で色々話し聞かせてや。取り敢えず寮まで行こうで!」


「…うん、そうだね」



大和は甚八のお気楽さを見習い、取り敢えず後でじっくり考えようとその件に関して悩むのは止め、甚八の言葉通り一緒に寮まで向かう事にした。

そしてのんびり並んで歩きながら目的の建物まで辿り着いた二人。


目的の建物は築数十年は経っていると思われるコンクリートの高い建物であり、飾り気などまるでなく色は本来の灰色、そして建物はコの字型になっているようで建物の両脇が直角に曲がっているのが見える。

そんな建物の正面玄関には机とその上で紙とペンを出して椅子に座っている老人が今来た二人に視線を向けていた。


高級感あるスーツに白髪混じりの整えられた髪。そんな恰好の老人は年季の入った皺だらけの顔に難しい表情を浮かべながら二人に対して手招きをする。

二人はそれにつられて老人に近寄り、机を挟んで対面する様な形で老人の前に横並びで立った。



「…君達は仙石大和と北条甚八だね?」


老人はスーツのポケットから眼鏡ケースを取り出して中の丸眼鏡を掛けると、机の上にあった名簿の紙を手に持ち二人を交互に見ながら話し掛ける。



「あ、はい」


「んっ?おっちゃん何でわい等の名前分かったんや?」


「ふむ。…まだ気付いておらぬか?」


「「?」」



甚八の質問に質問で返す老人、そして奇妙な質問内容に困惑する二人はお互いに視線を交わす。



「ふむ、まぁ良い。ただの戯言たわごとじゃよ。気にするでない…まぁ、それと君の質問への答えは君達二人で最後だから名前が分かっただけだとも」


「……」


「ふーん…まぁ、えっか。」


と、老人はのらりくらりとはぐらかし、名簿を二人に見せながらそう答える。大和は若干胡散臭そうに老人を見るが甚八は特に気にする様子を見せなかった。

そんな対象的な二人を尻目に老人は机の中をゴソゴソと漁り、二枚の同じ紙を取り出して二人に一枚ずつ手渡す。


二人は手渡されたその紙を見てみると、それは部屋の番号とその下に二名づつ枠で囲われている見やすい部屋割りの紙であった。



「…おっ!ラッキー。やまとっち、最上階の一緒の部屋みたいやで」


「えっ?あ、ホントだ。505号室だね」



二人は黙って部屋割りの紙を確認していき、少しした後に甚八はパチンッと指を鳴らして嬉しそうにしている。

大和も甚八の言った最上階の部屋割りの欄を見てみると、確かに505号室と書かれた部屋番号の下に自分達の名前が一緒に枠で囲われているのが確認出来た。

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