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−日本転移− 防衛魔術学校の英雄譚  作者: 空条承太郎
動乱編
5/33

異変



「ふぁーっ。ねむっ…」


ガタンゴトンッ。ガタンゴトンッ。


そんな単調な連続する聞き慣れた電車の音が、まるで子守唄の様に静かな電車内に流れていた。

古びた電車は小高い山の麓の一本しかないローカル線の線路を二車両でのんびりと走っており、そこの二両目の隅の席に大和は乗っていた。

他の乗客は農家の人の様な恰好をしている白い布を頭に巻いた年配の女性のみ。


昨晩に姉に見送られて家を出発してから夜行列車を乗り継いで目的地の学校へと向かっていた大和は疲れが溜まっているのか、そんな電車の中で時折欠伸をしながら若干眠そうにしていた。


そして特にやる事もない為気晴らしに電車の窓から外の景色を眺めると、そよ風に吹かれて草花が揺れている。空に視線を向ければ雲一つない快晴、そして満開の桜が辺り一面に咲き誇っていた。



「――次は○○駅、次は○○駅。お降りのお客様はお忘れ物がないようご注意下さい」


「あ、ようやく次か…はぁ」


暫く外の景色を眺めていると電車内に内蔵されたスピーカーから車掌による案内放送が大和の耳に届く。それを聞いて大和は立ち上がると下に置いていたリュックサックを背負ってドアの前へと移動した。


ガタンゴトンッ…ガタンゴトンッ…――。


放送が流れた後、電車は徐々にスピードを落としていく。やがてブレーキ音とともに完全に動きを止めるとゆっくりとドアが開いた。

そして大和は目的地の最寄り駅にへと降り立つ。


自販機もなく、朽ちたベンチしかない小さなホームに降り立った大和はそんな無人駅を尻目に改札口に設置されていた機械に財布から取り出した切符を通してから駅を出る。



「ふぁあっ。やっと電車移動が終わったや」


駅を出た大和は背負っていたリュックサックをおろし、欠伸をしつつ眠気を堪える。

そして事前に学校側から貰っていた目的地までの地図を確認しようとジーンズのポケットに手を伸ばそうした、が。



「…あれっ?」


何故か突然の既視感デジャヴに襲われ、地図を取り出すのを止めて周辺に目を向ける。



「?」


それに一度も来た事がない筈なのに、何故か駅から目的地の学校までの道筋が大和の頭の中に浮かんでいた。



「こっち…だよね」


大和は首を傾げながらもポケットから地図を取り出すのを止めると、時間もあるので自分の中のもやもやを解消しようと試しに頭の中に浮かぶ目的地までのルートを通ってみる事にした。




―――そしてそれから30分程歩いただろうか、アスファルトで舗装された道はとっくに消えて大和の歩く道は剥き出しの砂利道、左右を見渡せば生い茂る木々、そして前方には均等に立ち並んでいる建造物が目に映った。



「が、学校って多分あれだよね…何で分かったんだろ」


大和は少し立ち尽くして眺めた後その建造物から視線を外し、道の先に続く目の前の正門の方へと近寄って行った。

その正門の上には立派な筆記体の文字で【国立魔術学校】と大きく書かれていた表札が飾られている。



「…やっぱり合ってるし。なんでだろ?」


「おはよう」


「――…あ、お、おはようございます!」



門の横に不動の姿勢で立っていた陸上自衛隊の迷彩柄の作業服を着た中年の男が門の前に立つ大和に近寄って来て挨拶をすると、今の状況を考え込んで周りが見えてなかった大和はそれで男の存在に気付いたのか、一瞬遅れてその男に軽い会釈をしながら挨拶をする。



「もしかして入学生かな?」


「…あ、はい!仙石大和って言います、宜しくお願いします!」


「うん。やっぱり若いもんは元気良いね、それじゃあ辞令書見せてね」


「はい、分かりました…」



物腰の柔らかい中年の男は満足気に笑みを浮かべると軽い調子で大和に促す。大和の心に芽生えるもやもやは更に増していたがそれを受け、リュックサックをおろすとチャックを開けると中を漁ってクリアファイルに挟んでいた茶封筒を取り出した。

そして大和はその茶色の封筒を開き、中から一枚の紙を取り出すとそれを広げて男に手渡す。


大和が男に手渡した紙には細かな字がびっしりと書き込まれていたその紙の1番下には現役の総理大臣の名前と横に実印が押されているのが分かる。



「…赤紙の方か」


男は苦虫を噛み潰した様な表情で大和から手渡された紙を確認する。男には大和と同い年ぐらいの子供がおり、他人事だと思えない子供達を実質的に強制的に徴集する制度を親としては嫌っていたからだ。



「…うん、確認オッケー。それじゃあ敷地内に入ったらそのまま道をずっと真っ直ぐに行って、一番端にある大きな建物が君達新入生の寮になるから、そこの正面玄関で入校の手続きと案内をしてるからね」


「あ、はい。ありがとうございます」


「んっ。頑張れよ、若者!」


「はい」



男は大和の肩をガッチリ掴んで檄を飛ばし大和はそれに応える様に大きく頷くと、男は肩から手を離して後ろを振り返り門の鉄柵を開ける。

大和はリュックを背負い直し、男に開けて貰った門から学校の敷地内へと足を踏み入れた。

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