第弐章 三話『直面の危機』
異世界で生きる
それはもう仕方のない事
でも、そう思えない事だってある。
今、直面している危機。
アタシにとって、いや、女性にとっての死活問題。
化粧品がない。
スッピンを家族以外に見られるなんて絶対イヤ。
転移してきた初日、
《蒼》さんに案内されてお風呂には入れた。
色々、驚く事が沢山あったけど、お風呂上がりは気持ちいい。
これは異世界でも変わらなかった。
そして、疲れもあったのか、そのままベットで朝までグッスリ。
そして今を迎える…。
なんで化粧ポーチは転移してくれなかったんだ…。
ポケットに入っていたスマホは転移したのに…。
勿論、使えないけど。
でも、当面の問題はスマホじゃない。
化粧品だ!
これでは外に出れない…。
何とか顔を隠せるものないかな…。
部屋を見渡して見るも、それらしき物はない。
どうしよう…。
(コンコン!)
部屋の扉がノックされる
誰であろうと今は困る!
有難い事にそのノックの主は、
ノックをしたら勝手に開けてOK!
的な思考の人物ではなく、
扉を開ける事なく用件を話だした。
《黒》「……紗希さん……朝食の用意が出来ました……。」
《黒》さんか…。
《黒》さんは最初見たとき絶対不審者だと思った。
何せ帽子に覆面で顔が目元しか露出してな……
………!!
私は急いで扉に近付く!
勿論、扉は開けない!
扉越しに《黒》さんに向かってお願いした。
『《黒》さん!その覆面余ってる!?』
―1階食卓―
《白》「あれー!?
《黒》が二人居る!?」
1階に降りて来た《白》さんの第一声がそれだった。
まあ、そう言われるよね…。
今の私の服装といえば、学校の制服以外は殆ど《黒》さんと同じ。
因みに覆面を頼んだら何故かシルクハットまで貸してくれたので、被らないと悪いと思って被ってる。
目元は前髪で隠している。
お陰で前が見え辛い。
《白》「あー!
誰かと思ったら紗希さんですか!
その服で分かりました!
でも、どうしたんです??
《黒》になりたいんです??」
変な誤解をされそうだ…。
『い、いや…そういう訳じゃないんだけど…。
あの、《白》さん化粧品って持ってる?』
私は最初、朝食の用意をしている《蒼》さんに聞いたんだ。
そしたら、《蒼》さんの口からまさかの返答が…。
《蒼》「化粧品…ですか…??
私もしない訳ではないのですが、この顔がスッピンなので、これ以上すると……。
という事で常備はしていないんです…。
申し訳ないです…。」
そんな馬鹿な。
どう見てもヴィジュアル系のメイクじゃないか…。
あれがスッピンだとは……。
流石異世界…。
そして《白》さんに聞いてみたんだけど…。
《白》「あー!
スッピン見せたくないんですね!
うんうん!分かりました!☆
化粧品持ってますよ!☆
お貸ししますね!☆」
有り難う!
有り難う《白》さん!
助かった…。
覆面をしているので朝食は摂れず、先にメイクをする事にした。
《白》さんに化粧品を借りて、自分の部屋で鏡を見つめる。
よし、始めよう。
《白》さんから借りたポーチの中身を確認する。
初めて見る化粧品も沢山あったし、足らない物、何に使うか分からない物も沢山あったけど、問題ない!
ファッション雑誌やネットで研究に研究を重ねた私のメイクテクニックを今こそ見せる時!
化粧水や下地、ファンデーションなんて贅沢は言わない。
取り敢えず、眉毛描かなきゃ…。
―30分後―
出来た。
何とか人に見せれる顔が。
(コンコン!)
また部屋の扉がノックされた。
《白》「紗希さん、どうですー??
化粧品足りました??」
救世主だ。
私は扉を開ける
『《白》さん、有り難う。
お陰でホント助かったよ…。』
「いえいえー☆
でも、明日からもまた困ると思うし、良かったら今から探しに行きませんか??☆」
『探す?何を?』
「化粧品です☆」