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蒼綺月之想詩  作者: 蒼月夜
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第弐章 一話『信号機の色』





赤から青に変わる信号



歩き出す人







人。




青から赤に変わる信号



走り出す車







車。




いつもの場所



いつもの友人



何となく飽きている日々






??「……き!


ねぇ!紗希!」



あ、いけない。



『え、ああ、どうしたの由貴?』


由貴「いや、どうしたのじゃないし!

いきなり紗希ボーっとしちゃってさー!

何か悩みでもあんの?」




悩み…ね…。




『いや、特には。』


由貴「んじゃあ、私の彼氏の話でも聞く?


っていうか呼ぶ?」


『えー。』




駅前の噴水広場


其処が私達が学校終わりにいつもたむろってる場所。


特にする事があるでもなく、ただ暗くなるまで下らない話を延々にしてるだけ。


それでも最初は楽しかったな。


何でもそうだけど、新鮮味っていうか?


そんなのもあったりして。


最近はもっぱら由貴の彼氏の話題。


付き合い始めたばかりで、


イケメンだか何だかしんないけどさ、

そのうち泣かされないといいけど。


由貴「……でね~。

その時カレが~。」


正直、相槌をうつのもしんどくなってきた頃、


??「あっれ~?

紗希じゃねぇ?

お前まだここでたむろってんの?」


『圭…。』


幼馴染みの圭が声を掛けてきた。


中学までは一緒だったが高校で離れてからは、ここ噴水広場でたまに合う位だ。


因みに、由貴とも、もう顔見知り。


昔は生真面目な奴だったのに随分とチャラくなっちゃって。


まあ、見た目だけならアタシもか。


圭「ってか、紗希、今時ガングロはないっしょ。」


『うっさい。別に男ウケ狙ってないし。』


まあ、確かに今の主流は美白だろうけどさ。


圭「あー、でも貴史はガングロ好きって言ってたからな。

人それぞれだな。

うん。」


貴史って誰だよ…。


由貴「紗希は彼氏とかいらないの?」


彼氏…か…。


圭「なんだ、紗希彼氏居ないのか?


仕方ないな…。


俺がなってやろうじゃないか。」


『あんたはお断り。』


短い三人の笑い声が消えた変わりに響いたのは怒気の篭った叫び声。


??「てめぇ!!瑞原ー!!」


瑞原とは圭の名字だ。


圭は声の主を確認した瞬間、さっきまでの穏やかな顔つきは消えていた。


幼馴染みのアタシですら、見た事のない憎悪に満ちた顔で相手を睨み付けている。


怒鳴り声の主も視線を反らさずゆっくりとこちらに向かってくる。


一人ではなかった。


後ろに舎弟らしき奴を3人従えている。


由貴「あれ、鷹神(こうじん)高校の佐藤だ…。」


由貴が小声で呟いた。


あれが、佐藤か…。


何処にでもあるような、喧嘩が強いだの、繋がりがヤバイだのの噂はよく聞いてた。


ホントくだらない。


でも、大丈夫なのか、圭の奴…。


もう、圭の目の前に佐藤は居る。


当然、圭の近くにいる私達の目の前にも、だ。


圭「何の用だよ、佐藤。」


佐藤「おう、俺の舎弟が世話になったそうだな?

きっちり礼はさせてもらうぞ?」


圭「それは、お前の所のガキが、俺の連れの女に手を出したからだろ?」


佐藤「女に手を出して何が悪い?

…ああそうだ、女絡みなら女で礼をするのも悪くないな…。」


そう言って、佐藤はアタシと由貴を交互に舐め回すように見た。


キモい。


圭「こいつらは関係ない。

俺の女でもない。」


それを聞いて佐藤は下卑た笑みを圭に向けた。


佐藤「関係なくはないだろ~?

お前と関係ある女なら誰だっていいんだぜ~?」


圭「……クズが。」




鈍い音が鳴った。




倒れている男。




何が起きたのか分かるまで少し時間が掛かった。


殴ったのか。


圭が佐藤を。


頬を押さえながら佐藤が叫ぶ


佐藤「やれー!!」


一斉に舎弟達が圭に殴り掛かる。


『圭っ!』


由貴「ちょっとアンタら卑怯だよ!」


辺りも騒ぎに気付き始めたみたい。


帰宅中のOL「け、喧嘩よ!

誰か!警察!!」


揉みくちゃにされてる圭は、それでも相手の攻撃の直撃を凌いでいた。


ただ、不利には違いない。


やるしかないか…。


圭に攻撃している舎弟の肩を掴み振り向かせる。



(パシィィィン!)



思ったより音が響いた。


平手打ちを食らった舎弟は少しの間何が起きたのか分からない様だったが、理解してすぐにアタシに向かって来た。


舎弟「ってめぇ!この女ーー!!」


吹き飛ぶ舎弟。


圭だ。


そして、叫ぶ。


圭「お前ら、逃げろ!!」


『アンタ残して逃げろって?』


圭「こいつらは、女だろうと容赦しねぇ!

由貴ちゃん!紗希連れてってくれ!」


そう言ってまた揉みくちゃにされる圭。


『アンタらいい加減にし』


言い終わる前に体が引っ張られた。


『由貴!?』


由貴が私の手を引っ張って前を走る


『待ってよ由貴!まだ圭が!』


由貴「ダメ!後ろ見て!」


走りながら後ろを見る。


佐藤だ。


佐藤が追ってきている。


アイツ、圭は舎弟に任せて自分は女を追うのかよ。


由貴「捕まったら何されるか分かんないよ!

取り敢えず、人の多い建物の中に入ろう!」



大通りの交差点


目の前にはショッピングセンター


其処に続く信号機の色は




赤。




走り出す車







車。




由貴「そんな!」



捕まれるアタシの肩




ゴメン、由貴。





由貴「ちょっと!紗希を離してよ!」


佐藤「お前らも運がなかったな~。


瑞原と仲良くしたばっかりに。


こっち来いや。」



無理やり手を引かれて何処かに連れて行かれそうになるのを必死に抵抗する。


でも、所詮女の力では到底男の力には敵わない。


『痛ぇだろ!離せよ!』


由貴「誰か!警察に通報して下さい!」


その声に大通りの人々の中の何人かはスマホを取り出してくれた。




有難い。




有難いけど、




きっと間に合わない。



??「見付けた!」



誰かの声が聞こえた。


その瞬間、佐藤から引っ張られる力が無くなった。


え、なんで?


今、アタシが見えているものを、ただ素直に言うと




綺麗なハイキック





佐藤「……がっ…はぁ!」


そして、倒れ込む佐藤。




由貴「晃彦!」


……アキヒコ?


誰?


晃彦「何とか間に合ったか…。

ランニング中でたまたま近くにいて良かったよ。

メールもらって噴水広場行ったら何か乱闘騒ぎ起きてたらしく警察来てたし。」


圭…。


由貴「でも、よく此処が分かったね!」


晃彦「ああ、ヤジ馬の人にこの辺に座ってた女の子知りませんか?


って聞いたら男に追われて逃げたって言ってたから慌てて追って来たら由貴の声が聞こえたから。」


由貴「流石、私の彼氏!

流石、未来の格闘会のエース!

佐藤を一撃なんて素敵!」


晃彦「佐藤?

何、強いのコイツ?」


ああ、この人が、由貴の彼氏か…。


そう言えば、今から呼ぶ?って言ってたな…。


本当に呼ぶとは…。


でも、助かった…。


『有り難う御座いました。

助かりました。』


由貴からアタシに目を向けた顔は実に爽やかだった。


晃彦「ああ、君が紗希ちゃん?

いつも由貴から聞いてるよ。

でも、何事もなくて良かったよ。


まあ、何でこの男に追われて居たのか気にはなるけど…。」



そう言って三人とも倒れている佐藤に目を向けた。





筈だった。





居ない。





倒れている筈の佐藤が。













佐藤「死ねぇーーー!!!」




(ドカッ!)









宙に舞う体。





その中で目に映る信号機の色は





赤。





走り出している車







車。




けたたましく鳴るクラクションの音







音。




今まで味わった事のない体への衝撃。












由貴「い、いやぁぁー!

紗希ーー!!」


晃彦「てめぇ!!何してんだ!!」


??「おい!女子高生が轢かれたぞ!!

救急車!!

救急車を呼んでくれ!!」


??「もしもし!!

今、海輪大通りで交通事故が!」



由貴「…紗希!

……き!

しっ……り……て!

目を…………て!


………………!!」











聞こえなくなる声













声。

























‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐






『ねぇ……《蒼》……。


ラエルさんって元の世界で


【ナイトマスター】


っていう騎士の最高位だったんだよね……??』



《蒼》「…………ええ。」


『きっと、厳しい修行とかを毎日してるんだよね!?』


《蒼》「お、恐らくは…。」


『いや、悪い事じゃないし、家庭的だから寧ろ良いんだけど、


何かイメージと違うね……。』


最近、蒼月に転移してきたラエルさんが突然部屋の片隅で、黙々と編み物を始めました。


本人いわく、


ラエル「女子力が上がったので。」


だそうで、正直なぜ突然、しかも女子力が上がったのか全然分からないけど、私達のマフラーを編んでくれているようです。






因みに、蒼月は、これから夏真っ盛りです。





《黒》「そろそろ……お昼に……する……?」


そういえば、お腹減ってた!


今日は何だろー!


《蒼》が作ってくれる料理は美味しいから、ついつい食べ過ぎちゃうから気を付けないと!


それにしても、女子力か…。




…………わ、私だって!


手芸ナイトマスターに負けてられない!


《蒼》「ラエル様、お昼にしませんか??★」


ラエル「ああ、もうそんな時間ですか…。

有り難う御座います。」


私達の家は上に5階、地下に2階あって、食事を摂る時は1階で摂るのが基本!

それぞれの部屋でそれぞれ食事を摂る事も少なくないけど、集まれる時は皆で食べたい。

きっとその方が美味しいし、楽しいから!


という事で、今日は皆で1階に集合!


移動が終わって《蒼》以外各自席に着くと


木造の机の上に《蒼》が作ってくれていた料理を運んでくれる。


今日は、緑竜さんのソテーだ!

これはテンション上がるー!


そういえば、ラエルさんの世界にも竜が居て、

凶暴だから倒さないといけないって言ってたけど、


『蒼月の竜はそんな事なくて、お喋りも出来るから、草食の緑竜さんに沢山の野菜を持っていって、

切れた尻尾下さいって言うと、


緑竜「いいよ!最近切れたばっかりだから新鮮だよ!」


って一定期間で切れて生え変わる尻尾の、切れちゃった方を貰って来るんです』


って説明したら、


ラエルさん驚いてたなー!




《蒼》が次の料理を運んできた!



……あ、私の嫌いな野菜が入ってる……。


これはテンション下がるー!


『《蒼》ー!


メウスの葉は入れないでって言ったのにー!』


《蒼》「ダメですよ、《白》。

好き嫌いをしては……。」


『《蒼》だって食べられない物あるでしょー!?』


《蒼》「私が食べられない物……。


石でしょうか…。」


『うん、まず石は食べ物じゃないよね。』



んもー!

《蒼》はたまにズレてる事言う!

仕方ない、さりげなく《黒》にメウスの葉をパスしよう!


《蒼》「皆さん、食事は行き渡りましたね??★


それでは頂きましょう…★」


やっと食べれる!


『頂きま…あーーー!!』


《蒼》「《白》、どうしたのです??」


え!?


また!?


空いてる…。


時空穴(じくうけつ)が…。


ラエルさんの時と同じ天井に…。


《黒》「時空穴(じくうけつ)…。」


ラエル「異界魔ですか!?」


ラエルさんが身構える。


確かにその可能性は無くはないけど…。


でも、何か違う気がする。


《蒼》「どうでしょうか…。

何も出て来ない事が殆どですが…。」


そう、《蒼》の言う通り何も降りて来ない事が殆どで、


降りてくる確率が高い順としては、物、次に異界魔、最後に移転者といった感じ。


そうそう異界魔や、転移者は降りて来ないから、きっと今回も…。


ラエル「あ、何か降りて来ますよ。

異界魔では無さそうですが。」


え!降りてきた!?


《黒》「………人。」


《蒼》「………。」


しかも、転移者!?


ゆっくりと降りてくる転移者を4人で支え、床に寝かせる。


茶色い髪に、とても焼いている肌、厚めの化粧。


女の子だ。


《蒼》「空いている部屋に運びましょう。」


4人は黙って頷くとゆっくりと女の子を運び始めた。









何かがおかしい。







こんな短期間で転移者が、それもほぼ同じ場所に転移してくるなんて。








多分、《蒼》も《黒》も気付いてる。










この蒼月で

















何かが変わろうとしている事を。




































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