第弐章 十話『分の悪い方』
此処か…。
草むらに身を隠し、
森の奥にひっそりと建っている廃墟を見据える。
何かの工場跡だろうか?
思ったより大きい。
入り口には見張りの山賊が数人。
中にはどれだけの山賊が居るか分からない。
その中を一人で探し回るには広すぎる…。
それでも…
行くしかない!
俺が脚を踏み出しそうとした時、
不意に背後から声がした。
??「…待って…下さい…。」
驚いた。
その声の正体が《黒》さんだったからじゃない。
この草むらの中を音も立てず俺の背後をとっていた事に。
《白》「あれ??
ラエルさん、どうして此処に??」
《白》さんもか…。
何者なんだこの二人…。
『例のクエストの途中で、此処に人質が捕らわれてるって聞いて助けに来たんですけど…。』
《白》「おー!☆そうでしたか!☆
なら私達と同じですね!☆」
『え、《白》さん達もですか?
一体どういう事ですか…?』
《黒》「実は…」
……………………。
………………。
…………。
『え!騙された!?』
《白》「みたいです…。」
『それで《蒼》さんは一人で戻ったんですか!?
1対1ならまだしも、紗希さんを守りながらなんて分が悪いですよ!
誰かを守りながら戦うって凄く難しいですから!』
どうする?
戻るか?
いや、今から走って戻っても到底間に合いそうにない。
それに、人質の事もあるし…。
《白》「ラエルさんの言う通り、誰かを守りながら戦うって本当に難しいです。」
『だったら!』
言葉を続けようとする俺を遮る様に、黒さんが俺の肩にそっと手を掛ける。
シルクハットと覆面の間から見えるその瞳は真っ直ぐに俺を見つめた。
静かに風が吹いた。
そして、ゆっくりと落ち着いた声が耳に届く。
《黒》「それでも分が悪いのは、紫蜂さんの方。」