第弐章 六話『指差す方へ』
「グオァァォーン!!」
叫び声をあげ逃げていったのは1頭の熊
蒼月熊というらしい。
俺の世界にも似たようなキングベアーってモンスターが居たな。
今ので2体か…。
これで依頼完了だな。
それにしても、あんな貴重なエリクレースがこっちでも手に入るとは!
後は農園の主に報告して…
??「お前、此処で何してる。」
後ろを振り向くと、山賊らしき男が
湾曲刀を片手に俺に詰め寄って来た。
『依頼で蒼月熊を追い払ってたんだ。』
暫しの沈黙。
??「……何か見たか?」
何か…?
『いや、何も見てない。
何かってなんだ?』
??「……どうするかな…。」
話が噛み合ってない。
ただ、何を迷っているのかは分かる。
俺は何時でも先の一刀に対応出来る様、相手の仕草に注意を払う。
??「おいー、ダメだって見逃しちゃー。」
もう一人、山賊が森の奥から姿を現した。
ニヤニヤしながら此方に近付いてくる。
山賊2「お頭から、誰も見逃すなって言われてるだろー?」
そいつも湾曲刀を片手に持っており
、刃の背で自分の肩をトントンと叩いている。
山賊1「あ、ああ…。」
後から来た山賊は、相方その返事を聞き、ウンウンと頷く。
そして、俺に向けた笑みは醜く歪んでいた。
山賊2「って事で、悪いけど…
死ねやぁぁー!!」
(キイィィン!)
そして、地面に突き刺さる湾曲刀。
山賊2「なっ!
は、弾いた!?」
山賊1「な、んだ…コイツ…。」
剣を向けて問い詰める。
『何を隠してる?』
山賊2「お、おい!
お前行けよ!」
山賊1「く、くそぉぉー!」
再度、地面に突き刺さる湾曲刀。
山賊1「ひ、ひぃ!」
何かを隠してる。
多分、良くない何かを。
さっきより、剣の切先を近付けて同じ問い。
『何を隠してる?』
山賊2「い、言えねぇ!
言ったらお頭に殺される!
どっちにしろ殺される!」
剣の切先を戻し、
構える
勿論、切るつもりなんてない。
頼むから、これで喋ってくれ。
山賊1「ひぃ!
は、廃墟に!
この先の廃墟に女を監禁してんだ!
身代金が入るまで、誰も近付けるなって言われて!」
俺は剣を抜いた。
(バキィィン!)
折れる二本の湾曲刀。
『廃墟はどっちだ!!』
山賊が震える手で指を指す。
その瞬間、
頭で思うよりも早く
俺の足は
走り出していた。