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秘密の買い物。

 『太郎ちゃん、後5箱だから頑張って』


 「はぁはぁ……後5箱もあるのか……」


 ユキの励ましの言葉に気合いを入れ直して頑張りたいところなのだが、既に10往復はしている身としては、気合いが入らない。

今、俺はユキと2人で俺が普段使っている2階にあるオフィスより、5階にある【本部長室】へと自分の荷物を、引っ越しさせている真っ最中。


 床に並べられた段ボール箱の1つを持ち上げて、横に置いてある段ボールの上に重ね2つの段ボールを1度に運ぼうと試みた。

しかし……置いてある段ボール全てが持ち上げた瞬間に底が抜けそうな程に重たかった。


 ユキが普段から使っている事務用デスクと椅子のセット以外の家具家電類は、全て置いていく事になっていたので、引っ越し前までは、楽勝で直ぐに終わると、甘い考えをしていた。今は、過去の自分を殴ってやりたい……引っ越し前に店で働くマネージャーの1人が、手伝ってくれると言っていたのだが、直ぐに終わると思い断っていた。


 ユキに重い荷物を持たせるのは、流石に男としてのプライドが許せずに、ユキにはオフィスに残り段ボール箱への上に持っていく荷物や書類関係なんかの箱詰めと、簡単な掃除を頼み俺が荷物を持っていくと言う事に決めた。そう……それも俺が自分で決めた事だ。


 ヤル気は全く無かったが、やらない事には終わらないし、放棄する訳にもいかず、俺は書類がパンパンに詰まった重い段ボール箱の1つを持ち上げて、オフィスから出ていく。


 ここで2階からエレベーターを使い、5階に直接行けていたのなら、俺のヤル気も半分ぐらいはまだ残っていた事だろう。


 この2階から5階に行くためのルートは2つある。

1つ目のルートは、重い荷物を持ったまま非常階段を使い5階まで登るルート。

2つ目のルートは、非常階段を使い1度1階に降りてから、5階に直通しているエレベーターを使うルート。

もちろん俺は迷わず2つ目のルートを選択したのだが、1階分とは言え階段の往復は、予想以上にハードだった。 


 朝から始めていた引っ越しも、荷物自体の量は少ない事から、自分のオフィスの掃除も含め、お昼前には終わらせる事が出来た。

今まで仕事をしてきた2階のオフィスのドアを閉めてカギを掛ける前に、俺とユキは2人並んで出ていく事になったオフィスを見渡す。


 『ここで、2人で仕事してたんだよね、仕事の事で口喧嘩したり、一緒に喜んだり……』


 「そうだな、色んな事がここで起きたな、でも2階から5階に移るだけで、ユキとまた一緒に仕事をするのは変わらないから、これからも俺の足らない部分を補って助けてくれよ」


 俺はユキの肩に手を回して、自分の方へと引き寄せ、ユキのホッペに軽くキスをした。


 『も~太郎ちゃん! 公私混同しないって約束したでしょ!』


 俺はユキの言葉に笑いながら。オフィスのドアにカギを掛けた。

 

 「ユキ、5階の運び込んだ荷物の片付けは、後にしてお昼でも食べに行くか? お昼何食べたい?」


 『ん~ラーメン!』


 お昼に県民のソウルフードとも呼べるラーメンチェーン店のラーメンを食べた俺とユキは、会社に戻り5階にある俺の新しいオフィスになる本部長室で運び込んだ荷物の整理を始めた。


 粗方の整理が終わり、チラリと腕時計の時間を確認した俺は、そろそろだな。そう思い、ユキにバレずに外に買い物に行く為の口実を探し始める。

色々と思い付いては、頭の中でシミュレーションしてみるが、どれもあまり上手い口実になりそうに無い。

そんな時、ふと備え付けてある冷蔵庫に目が止まった。

冷蔵庫の中身をチェックする為にドアを開くと、几帳面な面を持っていた元本部長らしく、冷蔵庫の中には何も入ってはいなかった。


 「ユキ、俺ちょっと冷蔵庫に入れる缶コーラとユキの愛飲してるペットボトル入りのミルクティーを、ドンキ行って買ってくるから、ユキ悪いけど、残った片付け頼むな」


 普段の俺ならユキと一緒に買い物に行く為に、上手く行くのか微妙なところだったが、ユキも片付けに没頭していて、細かい事に気が回ってなかったのか。いってらっしゃい。と送り出してくれた。


 5階の本部長室のドアを後ろ手に閉めた俺は、ユキに呼び止められるなんて事が起きないように、不自然な程に急ぎ、会社の建物から出て、停めてある車に向かった。


 車の前には、既に待ち合わせをしていた、俺が引っ越しをした2階のオフィスに次に入る事が、濃厚な藤田とアカネが待っていた。


 「悪い悪い、遅れた? 誤魔化して出てくるのに時間掛かった」


 俺が2人に言い訳をすると、2人もユキに話す訳にもいかない事情を知っているだけに、遅れた事に対しては何も言わなかった。


 『それじゃ、ユキさんが怪しむ前に終わらせる為にも急ぎましょうか』


 藤田はその言葉を言って助手席に、アカネは後部座席に乗る、俺も運転席に乗り込み車を走らせた。 

 

 『木村代表、ちゃんと、お金持ってきた? 後、サイズもバッチリ?』


 目的の場所に行く為に車を走らせている時に、アカネが聞いてきた。


 「おう昨日ちゃんと銀行行って引き出してきた、後、サイズも大丈夫だ、ところで3ヶ月分とかよく聞くから、3ヶ月分持ってきたが、足りるか?」


 『代表のお給料3ヶ月分なら、大丈夫だよ、足らなかったら私が貸してあげるね』


 そう言ってアカネが笑う。流石我が店のNo.1は、稼ぎも違いますなぁ。等と思っていると、目的の店に到着した。


 『代表、どっちもこの店で買うんです?』


 「いや、片方だけ、ペアの方はちょっと自分で調べて良さそうな店が近くにあったから、そこで買う予定」


 そう言って、車を近くのコインパーキングに停めて、最初の目的地の店の中へと入った。


 店の店員に事情と予算を話し、いくつかの物を実際に見せて貰う。

アカネが、その中の1つを取り、顔の前に掲げながら。


 『木村代表って意外と女の子の気持ちとか分かるんですよね~いいなぁ~ティ○ァニーの婚約指輪か~私にも誰かくれないかな?』


 色んな種類の指輪を見せて貰ったが、結局はダイヤが1つだけ付いたシンプルな物を選んだ。


 サイズも丁度ユキの指に合うサイズがあった為に、サイズ調節も無くこの場で渡して貰えると言う事だった。


 淡い青い箱に真っ白なリボンを掛けられた小さな箱を、店員に渡された。


 『ティ○ァニーブルーボックス! 本物初めて見た!』


 アカネがひどく興奮するので、訳を聞いてみると、婚約指輪を買ったら全てこの淡い青い箱に入れてくれて白いリボンを掛けて渡して貰えるらしい、そして、この箱は中に婚約指輪が入っていると言うお店からの保証の意味もあるらしい。


 店員に支払いをどうするのか聞かれた俺は。


 「一括で」


 そう言って、カバンの中から銀行の封筒に入った現金を支払った。


 次に行く店も歩いて行ける距離にあった為に、車を残し3人で連なって歩いて、次の店へと向かった。


 そして、その店でも同じように店員に事情と予算を話し、いくつかの物を見せて貰う。

ここで買う予定だった物に関しては俺の中で既に決めていた事があった為に、その事を店員に確認をした。


 「女性の指輪の方は【ピンクゴールド】で男性の指輪の方は【ホワイトゴールド】でって出来ます?」


 店員にそう確認を取ると、デザインを規定の中から選んで貰えれば、1週間程で出来ると言う事だった。


 普段から指に嵌めておく指輪の為に、生活や仕事に支障が出ない物を選び、注文して購入した。ここでも一括で払った。


 ようやく……ユキとの事に対して全ての準備が整った。

 

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【風俗嬢と呼ばれて……】堕ちたJDの末路
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