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本部長とサシ飲み。

 「ちょっと遅れてしまってるな……」


 俺は今、繁華街の外れと言うか入り口と言うべき場所にある、個人経営の居酒屋の前まで来ている。


 居酒屋のガラガラと音を立てるどこか懐かしい感じのする引き戸を開いて店の中に顔を入れると、目的の人物は既に店に来ており奥まった場所の座敷の席に着いていた。


 目が合うと、笑顔で俺にこっちこっちと手招きをしている。

どうやら遅れてしまった事は、気にはしてなさそうだ。

俺は、居酒屋の暖簾をくぐって中に入ると、待ち合わせをしていた相手の前にテーブルを挟み座った。


 「すみません本部長、ちょっと帰り際に仕事入っちゃって」


 俺が遅れた事を先ず最初に謝罪すると、本部長は笑顔で俺も数分前に来ただけだから。と言ってくれた。


 今日、昼頃に急に本部長から、携帯に連絡があり店の指定をされて、待ち合わせをしていた。


 俺が店の中を軽く見回していると本部長から。


 『なんか良い雰囲気でしょ? 昔の飲み屋って感じして、俺のお気に入りなんだ』


 そう話してくれた。確かに落ち着いてゆっくりと男同士、語り合うのが似合う雰囲気を持った店だと思った。


 本部長が俺に生でいいよね? と確認してきたので、生で大丈夫だと答える。本部長は冷蔵のガラスケースが付いているカウンター席の向こうにいる、居酒屋の大将らしき人に向けて。


 『生大2つね、後は適当に刺し身と焼き鳥お願い』


 そう注文をした。


 運ばれて来たキンキンに冷えたビールのジョッキを持ち軽くジョッキ同士を重ねてから、2人ともゴクゴクと喉を鳴らしながらビールを飲んだ。


 「しかし、珍しいですね本部長から2人きりで、しかもキャバクラとかじゃなく、こう言うお店でなんて」


 『うん、たまにはね』


 本部長は、自分の普段のキャラに合ってない事は自覚していたのか、少し照れ臭そうにそう言った。


 『お店の方は、順調そうだね』


 俺が1から作り上げたキャバクラ【The Aegean】も開店してから早、半年が過ぎている。お陰さまで売り上げの方も順調に伸ばしていた。


 「そうですね、お陰さまで、もうすっかり俺の手から離れて、店長やマネージャーに任せっきりですよ」


 「本部長の方はどうなんですか? ルイ……違った、真実(まみ)ちゃんとは? ケンカなんかしてたりしませんか?」


 【ルイ】と言う源氏名を昔持っていた、今は本部長の彼女になっている1人の女の子の事を聞いてみた。


 『もちろん、順調だよ、今日はねその事も含めて、代表に話があったんだ』


 その後は、運ばれて来た刺し身や焼き鳥なんかをお互いに摘まみながら、酒を飲んで他愛も無い話をして過ごした。


 どのぐらいの時間が経ったのか正確には分からないが、暫くすると、本部長の方から。


 『代表、ちょっと聞いて欲しい事があるんだ……』


 と言ってきた。俺はその言葉を言った本部長の顔がいつも見せる顔と違い、真剣味を帯びた顔付きをしていた事から、足を崩し胡座をかいて座っていたのを、足を戻し居ずまいを正して正座になり、本部長の顔を見た。


 本部長は、そんな畏まらなくていいよ。と言いながらも話を始めた。

 

 『俺の実家ってさ、割りと有名な温泉地で旅館をやってるんだよ、無駄に古くから江戸時代の頃から続く老舗の旅館ってやつをね……』


 本部長の実家は、もう10何代も続いている老舗の旅館となのだそうだ。そして、本部長はそこの只1人の実子であり料理修行の為に、ホテルの和風レストランで修行をしていたらしい。

そして修行が終わり実家に戻ってから、詳しくは教えてくれなかったのだが、実家とケンカになってしまい、家を出たんだそうだ。

そして、そのまま当時の社長が専務と組んで初めて出したキャバクラで働いたらしい。


 『それで、まぁ居心地も良くて、気付いたら、周りから本部長なんて呼ばれる立場になってたって訳……』


 そして本部長は、実家の父親の病気が大分芳しくないらしく、再三実家から家に戻るようにと言われていると語った。

そして、本部長自身もちょっとした事でケンカ別れになってしまったのたが、代々受け継いで来た旅館を父親の代で終わりにすると言う事に抵抗があると言った。


 『それでね、社長と専務にはもう話したんだけど、俺この風俗業界を辞めて実家に戻る事に決めたんだ』


 「そうですか……残念です、本部長にはもっと仕事を教えて貰いたかったのに……」


 俺は、そう本部長に言う以外の言葉を言えなかった。きっと本人が一番思い悩み、考えに考えた末に出したであろう結論だと。そう思ったから。


 『それで、多分近い内に社長から言われると思うけど、代表に俺の次の本部長になって欲しいんだ……俺の後継ぎは、代表しか居ないから、俺の最後の無茶ブリ聞いてくれ』


 そう言って、本部長はテーブルに両手を着けて、頭をテーブルに着くぐらいまで深く下げた。俺はその本部長の姿を暫く眺めた後に、本部長に告げた。


 「はい、その話、俺で良ければ引き受けます、引き受けさせて貰います」


 答えた俺の言葉を聞いて、ガバリと顔を上げた本部長の表情は本当に良い笑顔をしていた……


 俺は本部長に聞いておかなければならない事を聞いてみた。


 「それで本部長、真実(まみ)はどうするつもりで?」


 『うん、一緒に付いて来てくれるって言ってくれてる、だから、向こうに着いて生活も落ち着いたら、真実と籍だけでも入れようか、って事になってる』


 「本部長! 結婚するんですか?」


 俺はビックリし過ぎて、思わず大声で叫んでしまった。

俺の大声を聞いて顔をしかめている、居酒屋の大将の顔が見えて、俺は急に恥ずかしくなり、カウンターの向こうの大将に、愛想笑いを浮かべて頭を軽く下げた。

 

 『結婚しちゃダメかな? 真実とも話して代表から結婚の許可を貰おうって事になってるんだけど?』


 「いいに決まってるでしょ、何言ってるんですか! そっか~本部長とルイ……じゃ無かった真実が結婚か~……って本部長、籍だけ入れるって言いませんでした?」


 『うん、結婚式をしてやりたかったけど、真実もそんな柄じゃ無いって言うから』


 「はぁ……ダメですね、結婚は認めません、俺は真実と本部長の結婚式で仲人をするって決めていたので、結婚式をしないなら、2人の結婚は認めません」


 「だから、2人の結婚式をしましょう、身内だけ仲間内だけの小さな結婚式でもいいじゃないですか、場所は開店前のThe Aegeanを使えばタダです」


 俺はこの時、わざとらしい程に舞い上がってみせた。

そして、無理やり作った流れに無理やり乗せて、イキオイで押し通そうと決めた。そうでもしないと、本部長と真実どころか、俺ですら結婚式をしないと言う選択肢を選んでしまいそうだったから。


 そして、その夜2人の男は、お互い良い笑顔のままで、居酒屋が暖簾を下げるまで、飲み語り明かした。

 

 

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【風俗嬢と呼ばれて……】堕ちたJDの末路
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