ルイの告白。その2
『ルイ、ルイはキャバクラはどんな場所だと思う?』
店長からされた質問に私は私の思ってるキャバクラと言う物を素直に答えた。
「キャバクラ? 男の人がお店に来て若くて可愛かったり、キレイなキャバ嬢を相手にお酒を飲むところだよ」
私が店長にそう答えたら、店長は、うんうんと何度か頷いていた。私は店長に何を当たり前の事を聞いてるんだろう? そう思った。
『普通はそう思うよね、でもそれ半分、表面しか合ってないんだよ、それでねちょっと前に、木村マネージャーにも同じ質問したんだ、そしたらね、一瞬の迷いも無く【キャバクラはお客さんがキャバ嬢を相手に擬似的な恋愛を楽しむ場所です】って答えたんだよ』
店長は私にそう聞かせてくれた。そして、更に続きを。
『ビックリしたよ、キャバクラで長い時間働いた経験も無い彼が正解を言うんだから』
それが正解なの? 私はお客さんと恋なんかした事が無いって思った。
『ルイには、解らないかもね』
私は、その店長とのやり取りがあった次の日に、もっと彼が何を考えているのか無性に知りたくなって、その日の営業中に、彼から接客指導を受けている、アカネちゃんに頼んでみたの。
「アカネちゃん、私も木村マネージャーの接客指導に参加してみてもいい?」
そしてその日の営業終わりに指導に初めて参加してみた。
まだキャバ嬢って言う仕事に慣れてない女の子も居たりしたから、本当に基本的な事も話してたけど。
私でも知らなかった。気付かなかった接客方法を彼は知ってた。
そして、実際にその方法を試してアカネちゃん達は売り上げを伸ばして来てる。
私は、彼の事をもっともっと知りたくなっちゃって、次の日から、何かある度に、何も無くても彼にいつも付いて回り、色々話し掛けたりもしたの。
彼がどんな人で。どんな事が好きで。どんな事に興味があるのか。
これって完全に【恋する女の子】の思考そのものだね。その時は、まだハッキリと自覚してなかったけど。
それからは、毎日お店に行くのが楽しみになってきた。
大好きな彼。木村太郎さんに会えるんだから。
でも、そんな楽しい日々はそんなに長く続かなかった。
ある月末に行われたミーティングで、彼がお店から去って違う業種のお店に店長として行く事になってしまったから。
彼は最後に私達にこう言った。
【こんなところで終わりたくない、もっともっと出世がしたい、そんな気持ちお前達キャバ嬢なら理解してくれるよな】
理解出来るよ。とってもよく理解出来る。だって私達キャバ嬢は、売り上げを上げて少しでも多くのお金を貰える為に頑張って居るんだから。
次の日もいつもと変わらないお店での日常が待っていた。ただそこに私がいつも、くっついて回っていた彼が居ないだけで。
それから数日経ったある日、私は店長からこんな話をして貰えた。
『木村マネージャー……今は木村店長か、彼がいつだったか、お前とエリカとアカネの事について、こんな話をしていたんだよ』
「どんな話? 聞かせて店長」
『エリカは【お姉さん】アカネは【妹】ルイは【アイドル】だって、エリカはお客さんから見て、年下の女の子なんだけど、どこかお姉さんを思わせる雰囲気を持っていて、お客さんはエリカと話をして、時には少し叱られたりもして、頑張りなさいと励まして貰いに来ている』
『アカネはお客さんは、アカネの事を妹のように感じてる、どこかオッチョコチョイで抜けてるアカネ、だけど何時でも笑顔でみんなを楽しくさせてくれる、お客さんはアカネから、元気を分けて貰いに来ている』
『そして最後にルイ、ルイはアイドルだって言うんだ、お客さんみんなが好きになって応援をしたくなるアイドルって、だけどな……彼はこうも言っていた……』
『アイドルはアイドルである内は、みんな応援して好きで居てくれる、だけど何かちょっとしたキッカケがあれば、アイドルはアイドルじゃなくなってしまう、アイドルじゃ無くなった【元アイドル】は応援してくれる人が興味を失ない、みんな去っていく、そしてまた別のアイドルを見つけてしまう、元アイドルはそのまま、消え去ってしまう、俺はルイの事を、そんなリスクのある【アイドル】から【普通の女の子】に戻してあげたかった』
店長の聞かせてくれた話の内容は、私には理解が出来なかった。
アイドルで居て何が悪いんだろう? そう思った。
私はアイドルとして雑誌の表紙も飾った事がある、特集ページも組んで貰った事もある。そうやってキャバ嬢として、お客さんを掴んで来たんだから、私はアイドルでいいんじゃん。そう思っただけだった。
まさか、彼の言った事が現実に起こるなんて知るよしも無く。
私は、少し経ってから体調不良になってしまった。
少しの間だけだけど、病院に入院もしていた。退院した後も、体が異常に疲れやすくなってて、体調が戻るまでお店も休んでいたの。
その間にも、お客さんからはメールが来てたりしてたんだけど【早くお店に出てきてね】【いつ頃お店に戻ってくるのかな?】そんな内容のメールしか来なくて、私はそんなメールに返事をする事が嫌になってたから、放置してたの。
そして、体調も良くなり万全の状態で、私はまたお店に出るようになったの。だけど……
そこに私の居場所は無かった。私は長い休みとお客さんへのフォローをしなかった事で、お客さん達から【興味を無くされた】ただのキャバ嬢になってしまっていたの。
店長がいつか聞かせてくれた木村マネージャーの言葉を思い出した。
【アイドルはアイドルである内はいいがファンの興味を無くせばアイドルではいられない】
そして……私は逃げるようにあれほど好きだと思っていた【キャバ嬢】である事をやめてしまった。
作者本人が気に入っていた女の子の大事な話になるので、書きたい事がもう少しだけあります。
もう少しだけ、お付き合い下さい。




