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問題点と妥協案。

 【The Aegean】のスタートに相応しい、プレオープンが終わって翌日。普通の店舗等なら、プレオープンは2日続けて行うのが慣例なのだろうが、何分お店がキャバクラであり。初日は関係者。2日目は近隣の方々。とやるところ、近隣の方々と言うのは、同じ業種の言わばライバルとも言える人達である事から、プレオープンは関係者を招いての1日だけの開催となった。


 そして、間に2日の時間を挟み、グランドオープンする事になっている。そう……明日が本当の意味での【The Aegean】のスタートの日なのだ。


 俺は今、お店のカウンターに1番近いテーブル席に座り、店長と5人のマネージャーの幹部達。10人のチーフの店で独自に雇った社員スタッフ達とテーブルを囲み、顔を付き合わせている。


 俺の横には、いつものようにユキも座っており、ユキは、自分の膝の上にノートパソコンを置いて、そのパソコンの画面に視線を向けていた。


 「それじゃ、男性スタッフの連携に大きな問題は無かったんだな?」


 俺からの確認に、数人のマネージャーとチーフ全員が頷く。


 「俺も概ね、マネージャー達やチーフ達と同じ意見だな、でも強いて挙げるとするなら、もう少し小まめに【インカム】を使い、情報の共有を図ったら、もっと迅速に的確に、動けそうだな」


 まだ、男性スタッフ達もインカムを使うと言う事に慣れていないのか、活用をしきれていないと感じた。

これだけの広さがあれば、オーダーもキャバ嬢からのリクエストも、どうしても普通のキャバクラに比べて、情報の流れる速さが遅くなってしまう。それによって、お客さんを待たせる結果になりかねない。また、キャバ嬢からのリクエストの多くは、お客さんが快適に過ごす為に必要な場合が、ほとんどなので、こちらに対しても、もう少し迅速に動けると良いと感じた。


 俺とマネージャーやチーフとのやり取りが一段落着くと、ユキがノートパソコンのキーボードの上で指を走らせる。

ユキは、今日この時に行っている、昨日のプレオープンでの反省会の書記役をしている。


 ユキが要点だけを拾い、パソコンに入力した物は全て隠さずに、全男性スタッフに配布される。後はキャバ嬢達にも読めるように、更衣室やドレッサールームにも複数枚貼り出される事が決まっている。


 「それじゃ、次はキッチン担当のチーフから、何か無いか?」


 俺がキッチンのリーダーを勤める事になっている、1人のチーフに質問をすると。そのチーフがキッチンでの問題点・改善点を話し始めた。


 『キッチンですが、ソフトドリンクとレディースカクテルの量が足らなくなる恐れがあります、今の3~4割り増しで発注をする必要があると予想されます、また……この【The Aegean】は、皆さん知っての通り、この街にあるキャバクラよりも少し料金の高い【高級志向のキャバクラ】になってますこの事により、普通のキャバクラでは滅多に出ない、フルーツ盛りや、シャンパンも数が出ると思われます』


 キッチン担当の責任者となったチーフは、他のキャバクラでの勤務経験のあるチーフであるために、他の店を比較対象に出した、問題点を挙げてくれた。


 自分の仕事に責任を持ち、言うべき事を率直に言ってくれる人は、とても貴重だ。俺は、この会議が終わり次第、彼を呼び出して、本社所属の幹部候補生にならないかと、声を掛ける事を決めた。


 「発注に関しては、店長を通して行うと言う事になっていたが、この際、現場の事は現場が1番分かるだろうから、チーフに【ソフトドリンク】【レディースカクテル】【フード材料】【フルーツ】の発注を任せてみたらどうだ? そうすれば、店長も助かるんじゃ無いか?」


 俺が、そう提案をすると、店長は既に色んな仕事に、てんやわんやに近い状態だったからか、諸手を挙げて発注の一部を、キッチン責任者のチーフに任せる事に賛成を示した。


 そして……議題はいよいよ、この会議を開くキッカケにもなった問題点に付いての話し合いしか残されてはいない。


 「さて……大体の改善点とその対応策は出たな、それじゃ最大の問題点に付いて話し合おうか……」


 今回の会議を開くキッカケとなった問題点。それは……【こんな巨大なキャバクラで、付け回しをこなせる人材が居ない】と言う問題が、プレオープンの早い段階から発覚していた。


 1つのテーブル席に1人しかお客さんが座らずに、全部の席が埋まるのなら、何とか付け回しをこなし、キャバ嬢を的確に動かす事の出来る、マネージャーは何人かは居たのだが、1つのテーブルに2人ずつ座っただけで、お客さんの数は100人を越えてしまう。


 そんな数のお客さん相手に、フリーのお客さん。本指名しているお客さん。場内指名しているお客さん。と完璧に付け回しが出来る人材が居なかった。


 いや……正確を期すなら、1人だけは居た。そう俺だけだ。

俺だけが異様な記憶力を発揮して、付け回しを1人で行う事が出来た。他のマネージャーや店長には出来なかったのだ。


 しかし、俺はこの店を開店させる為には、全能力を惜しみ無く注いできたが。あくまでも俺の立場は、この店の【代表】であり、また本社では【無店舗型性風俗事業部】という、無店舗型ヘルス。所謂、デリバリーヘルス事業部の部長でもある。


 基本365日無休のキャバクラに、俺にしか出来ないからと言って、休みも無く、部長とさしての他の仕事も差し置いて、尽力する訳にもいかない。


 店長やマネージャー、チーフからも、この問題がいかに大きな問題かは、理解している為に、色々な意見が出た。


 『代表の他にも、後1人この店の人間では無いですが、付け回しの出来た人が居ますが、その方に頼んで、代表と交代で、なんて訳には?』


 今もマネージャーから、そんな意見が出た。そのもう1人の人間とは【本部長】の事だ。本部長は、俺のように記憶して。と言う訳にはいかなかったものの、簡単なメモを取ると言う方法で、俺と同じレベルで付け回しを行ったのだ。


 普段、ポンコツなくせに、変なところで能力が高い。


 しかし、その案は却下せざるを得ない。本部長は、我が社の全ての事業部を統括管理している、本部長だ。交代で1日置きとは言え、1つのキャバクラに付きっきりになるなんて不可能だ。


 そして、その後も長い話し合いの末に、いくかの試験的な試行が行われる事が決まった。


・店のテーブル席を25席のA組・30席のB組・VIPのC組と3つのグループに分ける事

・それぞれのグループに1人ずつ、付け回し担当を置く事(全マネージャーと店長によるローテーション)

・お客さんの入店時のテーブルは、出来る限り、A→B→A→Bと振り分けて指示を出し、1つの組に偏らせない事

・金曜日・土曜日・祝日前日は、代表1人による付け回しを行う事

・代表が付け回しを1人で行う時に限りVIPルームに1名の専属マネージャーを置き、代表からのインカム指示に従いVIPルームだけ付け回しの補助をする事

・この組分けが更なる混乱を招く自体になった時は、直ちに中止にして代表に付け回しを頼む事

・付け回し訓練ボードを大至急作り、付け回し担当になっていないマネージャー店長は、日に1名ずつ交代でインカムを聞きながら、1人で付け回しが出来るように特訓をする事

・混雑が予想される開店から1週間は、代表が付け回しを担当する事


 以上のルールが決まった。


 会議が終わり直ぐに俺は、キッチン担当のチーフの元に行き、幹部候補生になって、マネージャーとしてキッチンの責任者として働いて欲しい。と言う事を打診した。チーフからは、少し考えさせて欲しいと言われたが、ハナから拒否をする感じには見られなかった事から、一安心した。


 そして、俺はユキと共にオフィスに戻り、直ぐに藤田を呼び出した。俺が付け回しを行う1週間。その後も付け回しをする、金・土・祝日前夜の為に、出来なくなる仕事を藤田に頼む為の、調整を行う為に。 


 

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【風俗嬢と呼ばれて……】堕ちたJDの末路
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