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プレオープン。

 『太郎ちゃん、この設計事務所にも、招待状送るの? VIPルームの件で色々あったけど』


 「あ~まぁ思うところが無い訳でも無いが、そこは大人の付き合いって事で、送る」


 今ユキと藤田と俺の3人で、プレオープンに招待する関係者各位に、送る招待状の宛名書きをしている。


 ユキと藤田は、結構キレイな字を書くためこの宛名書きの役割を。そして俺は1枚だけ宛名を書いた後に、2人からそっと封筒とペンを取り上げられた為に、今はリストと書き終わった封筒の宛名が合っているかのチェックを行っていた。


 『あ~目がチカチカしてきた……』


 藤田も呼び出されて、まさか封書の宛名書きをやらされるとは、思ってもいなく最初はゴネていたが、昼にウナギを食わせてやる。と言う条件で、宛名を書かせている。と言うか……お前、これ立派なお前の仕事の内に入ってるだろ? 俺の仕事の手伝い。なんだから……


 そして迎えた、プレオープン当日。前日から、本部長とキッチン担当のスタッフ達の手により作られた、フルーツの盛り合わせ。当日に作ったオードブル等の乗った皿が、VIPルームを除く全てのテーブルに置かれ。TOP3から贈られた、シャンパンは冷やされている。


このプレオープンの為に、全男性スタッフと80名のキャバ嬢は既に店に入っており、男性スタッフはフロア内を忙しなく歩き回り、何か不備は無いかと働いている。

キャバ嬢達は2階にある更衣室で華やかなドレスに着替え、ドレッサールームで頼んでいた美容師達の手により、ヘアメイクをして貰い、プレオープンが始まるのを待っている。


 関係者達の多くから、こう言う店がオープンした時の通例に従い、綺麗な花を咲かせている【胡蝶蘭】の鉢植えや、花輪等を事前に送られて来ており、それらもオープンの店の中と外に所狭しと並べられ店を華やかに彩ってくれている。


 プレオープン開始時刻の10分前程度の時間になると、続々と招待状を送った関係者達が、店へとやって来た。

実際にこの店とビルを改築してくれた【施工会社】

やらかしてくれた設計士を抱える【設計事務所】

テーブルやソファーなどインテリアを揃えてくれた【インテリア会社】

うちの店で消費される全ての酒やソフトドリンクを卸してくれる【酒屋】

他にも沢山の関係者が、プレオープンに来てくれた。


 来店してくれた招待客達は、男性スタッフの案内により、各テーブルへと案内されていく。

数人で来た客は1つのテーブルに。大人数で来た客は、数人ずつに分かれて貰い複数のテーブルに。


 今のところ、男性スタッフの手による、案内に混乱は見られない。全員が研修で習った通りに、インカムを駆使して情報の共有を行い。スムーズな接客が出来ている。


 幹部である、マネージャー達の行う、付け回しにより、各テーブルに華やかなドレスを身に纏ったキャバ嬢達を配置されていく。


 キャバ嬢達の中には、俺がマネージャーを勤めていた頃に同じ店で働いていた。アカネやエリカ、マミやマナ達も居る。


 全ての招待客。その招待客に着くキャバ嬢達が席に着いた後、シャンパングラスを乗せたワゴンが、店の通路を通り、テーブル席に着く全ての人にシャンパングラスを配り歩く。


 そして適温に冷やされた。TOP3提供の30本ものシャンパンを、次々に開けていき、全てのシャンパングラスを満たした。


 店の開店祝いでもある、プレオープンの開始と、こんなにも素敵な店を作ってくれた人達。これからこの店と付き合って行く人達に向けた、挨拶と謝辞を述べる為に、マイクを握った俺がフロアの真ん中へと進んだ。


 俺は、あまり緊張などをする方では無い。だが、今この瞬間だけは、ものすごく緊張しており、足は小刻みに震え。喉は異様に乾き。マイクを持つ手も震えている。


 謝辞を述べる前に、1つ大きく深呼吸をしてから、キッチン前のカウンター席の方に目をやると。


 社長と専務がいつも以上に真剣な眼差しを俺に向けているのが見えた。

専務の隣には、いつものどこかおどけた顔と変わらずに、俺が失敗するのを期待しているような、本部長の顔がある。

ユキが笑顔で、両手を握り締め胸の前に掲げて俺に【ガンバレ】エールを送ってくれている。

ユキの隣に藤田が俺以上に緊張した顔で立っている。


 俺が店を出すのに、惜しみ無い尽力をしてくれた人達の顔を見た後に俺は、マイクを口に持っていき話しを始める。


 「本日は、この店のプレオープンにお越し下さり誠にありがとうございます…………」


 「…………一重にこの店がオープン出来たのは、皆様からの暖かい御支援と御尽力の賜物であり、感謝の念に絶えません……」


 謝辞を述べている最中に、突然俺に向かって声が掛けられた。


 『代表~話長すぎ~シャンパン温くなっちゃうよ!』


 声をした方を見ると、マイクを握り締め笑っている本部長の姿があった。そして、その本部長の言葉の後に起きた、招待客やキャバ嬢達の笑い声。

俺は、どうやら気が付かない内に、かなり長く話をしていたようだ。招待客が俺のつまらない話なんかを、聞きあきる前に〆ようと最後の言葉を言い放った。


 「今日!ここに!今この瞬間に!【The Aegean】開店です!」


 店内は、割れんばかりの拍手と喝采に包まれた……

  

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【風俗嬢と呼ばれて……】堕ちたJDの末路
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