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問う。ルイ編

 そろそろ切り上げて、今日は帰るか……


 そんな事を思い、仕事をキリの良いところまで、済ませた時だった。俺の携帯から、メールの受信音が流れる。


 俺は、ユキからかな? 等と先に部屋に帰っていて、多分、ご飯を作って待っていてくれている、彼女からのメールかと思った。


【差出人】ルイ

【件名】

【内容】木村部長、今日、少し話が出来ませんか? 都合良ければメールで教えて下さい。


 ルイからのメールだった。しかし、珍しいな、何か用事がある時なんかは、直接言ってくる事が多いんだが。

若干、訝しんだが特に用事も無い事から【今、仕事を終わらせた、○○時に、近所のファミレスで】そう返信しておいた。


 そして、俺はルイにメールを送って直ぐに、ユキへと電話を掛ける。


 「あっユキ、ルイから何か話があるってメール来たんだが、何かあった?」


 『うん、ちゃんとルイちゃんと、話をしてあげてね』


 ユキも、ルイからの用件を知っているのか。何だろうな?

まぁ、会ってみたら解るか。そう思い、俺はルイとの待ち合わせに指定した、ファミレスへと向かうべく、本社事務所を出た。


 ルイは、俺とユキが住んでいるマンションの部屋に、居候している。まぁ……デリヘルを、次々と開店させてた頃に、ずっと共同生活をしていたからか、俺もユキもルイも、一緒に住む。と言う事が自然になっていたので、現在、俺とユキが住んでいる部屋にルイも住んでいる事には、何の違和感も無い。ユキも含めて。


 それなのに、外で会って話がしたそうなメールを、わざわざ送ってきた。ユキと一緒に居たら、言いにくい話なんだろうか?


 俺は、車を走らせ、指定したファミレスに少し早目に到着した、中に入りルイを待とうかと思っていたが、既にルイは店に来ていたようで、入り口からもルイの姿を確認する事が出来るテーブルに着いて、俺を待っていたようだ。


 いつもと変わらないように、俺には見える笑顔で、手を振るルイ。何か深刻な悩みとか、抱えて無きゃいいんだが……


 『部長ごめんね~呼び出して』


 「あ~いや、別に問題は無いが、どうした?」


 なんて、挨拶を交わしながら、テーブルにオーダーを取りに来た店員に向かい、オーダーを言おうとしていたら。


 『あっ、食べ物頼んだらダメだよ、ユキさんが、料理してたから』


 ルイの、その一言を聞いた俺は、ドリンクバーだけを頼んだ。

ルイを少しだけ待たせて、ドリンクバーに行き、グラスにコーラを

注いで席へと戻る。


 「それで? 何か悩みでもあるのか?」


 『うん、あのね部長、私も部長が今進めてるキャバクラが出来たら、そこで働いちゃダメかな?』


 ルイからそう言われた。正直、何か深刻な悩みとかを抱えてるのかと、勝手に勘違いしていた俺は、話の内容を聞いて、良い意味で、大した相談じゃ無くて良かった。そう思った。


 「うん? キャバクラでか? 今のデリヘルで稼げてるだろ?」


 『そうなんだけど……』


 言い淀むルイに向けて……


 「また、俺の役に立ちたいって理由でか?」


 そう言うと、ルイは、黙って頷いた。

このルイの見せる【献身性】は、俺も自覚をしている、理由も含めて。そして、この理由の事で、秘かにユキとも何度か話し合っている。まだルイに、ハッキリとは伝えてないが、何か良いキッカケでも起きたら。そうユキとは決めていた。


 「そうだなぁ……正直に言えば、嬉しいけどな……」


 俺がそう言うと、ルイは途端に笑顔に変わる。


 「でもな、ルイ、聞くけどお前は、それでも大丈夫なのか? 俺はどちらかと言うと、嬉しいと思うが、キャバクラで働く事に関しては反対だな、ダメなんじゃなくて反対な」


 『うん? ダメなんじゃなくて反対?』


 俺はルイに、反対する理由を、聞かせてやった。 


 ルイは、元々は俺がマネージャーをしていたキャバクラで、キャバ嬢として店に在籍をしていた。それも、毎月のように、売り上げがTOP3に入るぐらいの売れっ子キャバ嬢だった。


 ちょっと悪いタイミングが重なり、キャバ嬢としては働けなくなり、デリヘル嬢として今は、働いている。


 そして、キャバ嬢時代には、風俗情報誌なんかでも、特集が組まれた事すらある。そんなルイが、またキャバ嬢として、やり直しをしたら、間違いなく、俺の出す予定の店には、プラスになるだろう。


 だけど、ルイが、現在はデリヘル嬢として、お客さん相手に自分の裸を見せ、自分の体を使いサービスする仕事をしている。

今もだ。そんなお客さんの中には、デリヘル嬢としてのルイを知ってる人が俺の出すキャバクラに、遊びに来ない。なんて事は言い切れない、高確率で、キャバクラで出会うだろう。


 そんな時に、デリヘル嬢としてのルイの事を知ってる、お客さんが他のキャバ嬢に、ルイの事を話したとしたら?


 それが、アカネやエリカなんて言う、昔からの知り合いなら、何も無く終わるだろう。でも、店には、昔、有名なキャバ嬢だったルイの事を知らない女の子だって、働くはずだ。


 そんな女の子達が、ルイがデリヘル嬢だと言う事を知ったら。

詳しい経緯も知らずに。


 【昔は超売れっ子キャバ嬢だったのに、デリヘル嬢をしていた】


その事実だけを知ったら。そして、その話を他のキャバ嬢にもしたら。確実に、噂は広まるだろう。キャバ嬢達の間で広まるだけの噂なら、まだ良いが。

お客さん達の間にも広まるだろう。


 【あのルイって子は元デリヘル嬢だった】


 と言う事が。そんな状況なら、変な事を考えるお客さんだって、きっと出てくるだろう。


 【デリヘル嬢だったのなら、金を出したら?】


 なんて事を。実際にルイに言うお客さんだって居るだろう。

そんな状況になる確率が非常に高いルイを、俺の都合が良いから。

そんな理由で、キャバクラで働かせたい訳が無い。


 きっと、辛い思いもするだろう……


 たくさん涙を流し泣いてしまうかもしれない……


 俺はルイに、そんな思いをしてまで、キャバクラで働いては欲しくない。


 そう、俺の考えと思いを、ルイに語って聞かせた。


 「それでも、お前はキャバクラで働きたいか? お前が自分の為に、辛い事が起きてもキャバクラで頑張りたい! そう思っているのなら、俺は反対はしない、その辺の事を、もう少し真剣に考えてみて、また返事を聞かせてくれよな」


 俺の目の前で、涙を流しているルイに、そう言って話を締め括った。


 「さて! 涙が止まったら、一緒に部屋に帰ろうな、今頃ユキの美味しい料理も出来てるだろうしな」


 ルイは、涙を流しながら、何度も頷いていた。


 

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【風俗嬢と呼ばれて……】堕ちたJDの末路
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