ユキのキャバ修行その2
『それで、要するに、お店に来たお客さんに気を配り、楽しくお酒を飲んで貰うって事だよね?』
「まぁ、そう言う事だな、細かい事言い出したらキリ無いが、そんなのは、やってりゃ覚えるからな」
俺は、今日もユキのお願いを聞いて、キャバクラで働く上で必要な事を、教えている。
今日は、2人とも仕事は、休みだ。ユキの休みは、俺と同じになってるから、俺が休みの時はユキも必ず休み。
この日、特に2人で、出掛ける事も無く、なんとなく部屋で2人して、ゴロゴロしていた。
お昼に近いぐらいまで、ゆっくりと寝て、起きたら、朝と昼兼用のご飯を、俺がファストフードの店に車で買いに行き、部屋で2人で食べた。
ユキは、元風俗嬢なんて仕事をしていた割りに、実に家庭的で、普段、俺より早く仕事を終わらせ帰れる日なんかは、料理をして、俺の為に、ご飯も作ってくれる。
休みの日まで、しなくていい。ってお願いして、休みの日は、外食するって、2人で決めた。
それで、まぁ食べてたんだが、キャバクラ接客の話題になって、いつの間にやら、いつか本社で軽く遊びのつもりで、やっていたキャバクラ接客講座の続きってやつを、やる事になって、今に至るって訳だ。
『キャバ嬢は、指名してくれる、お客さんを増やさないと、時給も上がらないんでしょ?』
「そうだな、指名もされない、フリーのお客さんや誰かのヘルプにしか着かない、そんなキャバ嬢は、お店からも【安い時給で便利に使える】そんな存在にしかならないな」
『それじゃ、どうやってお客さんに、指名して貰うの?』
キャバクラで働く、初心者のキャバ嬢が、必ず悩む問題なんだよな。これ、実は以外と簡単な解決策があるんだが、あまり使ってるキャバ嬢居ないんだよな。
簡単な解決策は【店長やマネージャーに相談しろ】ってだけだ。
店長やマネージャーなんて物に成れる人は、ほぼ全員が、1つは、その方法ってヤツを知っている。
何も分からずに、どうしたら? なんて悩むよりも、1つでも、やり方を知ってる人に聞け。ってだけだ。
当たり前過ぎるって思うんだが、これを実践するキャバ嬢が、意外に少ない。
聞けないって言い方は、少し違うかな? 聞くタイミングが取れない。が正しいかも知れない。
指名客を確保し易いキャバ嬢ってのは、本人の容姿も性格も、間違いなく、大きな要素を占めるんだが……それだけでも無い。
指名客を確保出来る状況に、指名客を取れないキャバ嬢よりも、チャンスを多く掴んでるってだけだ。
週に5~7日。オープン~ラスト。まぁ要は毎日店に居て、開店から閉店まで働いてる。キャバ嬢。
週に2~3日。開店してから~終電前。で働くキャバ嬢。
どちらが、より多くのお客さんの横に座れるか? ってだけだ。
そして、話を戻すが。店長やマネージャーは、開店から閉店まで、それなりに忙しく働いている。そんな最中に、聞ける訳も無い。それなら閉店後にって事になるんだが。
終電前に店を出ていく。閉店まで居たら家に帰る術が無くなる。だから、聞くタイミングが掴めない。
店長やマネージャーに、アドバイスを聞かないキャバ嬢の大半は、このパターンに当てはまる。
【覚えるまでの数日、ネットカフェにででも始発まで過ごしたらいい】
なんて、簡単な方法で解決するんだが。言われるまで、人ってのは、中々気付かないもんだ。言われたら至極簡単な事でもな。
指名が欲しいけど取れない、どうしたら? ってキャバ嬢は、聞けばいいだけさ。聞かれて、教え渋る店長やマネージャーは居ないんだから。
『なるほどね~言われたら、当たり前の事だね【知らなきゃ聞けよ】って』
「そうだな」
『それじゃ太郎ちゃん、私は知らないから、教えて』
いや……ユキ……お前が知る必要は無いんだが……やっぱ、働く気マンマンなんですね……
「う~ん……簡単な方法でいいなら」
ここで、本格的に事細かく教えていたら、せっかくの休みが、キャバクラ講習で終わってしまう。
・メールはマメに
・お客さんの事を知れ
・お客さんに惚れられろ
「まぁ基本中の基本は、こんなもんだな」
俺は、ユキに、基本になる、営業の掛け方を教えた。
『言われると、イチイチごもっともな事ばっかりだね』
「そうだな、それに気付くかどうかだな」
「これだけ、やってみて、指名客が取れないなら、それはもう、キャバクラで働くのが、根本的に向いてないって事だ」
「ユキも女の子だから、女の子にこんな事言うのは、嫌だが……キャバクラって所はさ、結局は男が【若く】て【キレイ】もしくは【可愛い】女の子に横に座らせて、チヤホヤして貰いながら、酒を飲むって場所なんだよな」
『そうだね~ちょっと思うところは、あるけど、結局そこなんだね』
そうだな。俺も思うところが無い訳じゃ無いが、それがキャバクラなんだよな。




