外観
あれから、ユキと2人で、本社まで戻り社長に話をしてみると、
やはり予想した通りに、あのビルのオーナーさんであり、尚且つ【最後のキャバレー】の初代の総支配人の方だったようだ。
あの人と約束をした以上、あの人がガッカリしない店を造ろうと、改めて決意した。
今日は、店のオープンに向けて、設計事務所に来ている。
ここで、店の内装の話を詰めて行き。俺のOKが出たら実際に、工事が始まっていく。
今日の俺は1人で、設計事務所まで来た。
ハッキリと言えば、こんな設計事務所に来るなんて、人生で初めての体験だ。今までは、店舗を必要としない、デリヘルの出店しか、して来なかった俺は、この手の仕事には、まったくの門外漢だ。
まぁ、それでも、俺の頭の中には、店のイメージが出来上がっているのだから、それを伝えて、設計する人に理解して貰えればいいだろう。そう思っている。
そして、本社の社長や専務は、俺が、こう言う仕事に不馴れな事に、考慮してくれて、店舗デザインから、設計、施工まで一括で、引き受けてくれる会社を紹介してくれていた。
また、インテリア類等も、今から向かう会社と取り引きのあるインテリア会社を紹介してくれる事になっている。
ユキやルイ等は、自分達で探してとかどうのこうのと言っていたが、俺は、実際に自分達でそんな事したら、絶対に不備だらけになったり、数が揃わなかったり、色んなトラブルに会うだろう。ゲームでコンビニ経営するような訳には、いかない。
失敗すれば、億に近い損失になるのだ。夢物語でやっていい訳が無い。
そこで、俺は、プロに基本は、任せ、注文だけ出して、プロにその注文に応えて貰うと言う、まぁ言ってしまえば、冒険をしない、堅実な方法を取ることにした、そのせいで、多少、必要となる金額が増えたとしてもだ。
そして、プロを交えての、打ち合わせが始まった。
『エーゲ海の感じで、白で全体をまとめて、スカイブルーでアクセントって感じですか?』
「そうですねぇ……ちょっとイメージ的に、こんな感じがいいかなぁって写真持ってきてるんですよ」
その後も、持ってきた写真や、俺のイメージを話して、1回目の打ち合わせが、終わった。
今回の打ち合わせで決定と言う訳では無く、今回の打ち合わせで話した内容に沿ってイメージ画を作ってくれるらしい。
そして、何回も打ち合わせを重ねて、俺が納得出来た時点で、実際に施工に入るという事らしい。
デザイン事務所から出て、一路、本社へと戻った。
本社に居るはずの、社長に少し話があったからだ。
社長は、本社の何時もの、黒の革張りのリクラニングシートに座り、何やら書類を書いていた。
「社長、ちょっといいです?」
声を掛けると、顔を上げ、握っていたペンを置き、俺の話を聞いてくれるようだ。
「あのビルって、上を事務所として使う予定ですよね?」
そう聞くと、社長は頷いて答えた。
「ビルの外観とか、何か決まってるんですか?」
『あ~特には決まってないけど?』
「今、俺が計画してる店、うちの会社の象徴にも成りそうな程の規模持つ店の大きさじゃないですか?」
『そうだな、あれだけのサイズの箱なんだから、自然とそう見られるようになるだろうな、なるほどな……外観も店のイメージに合わせたいって話だろ?』
まさに、その通りなんだ。その事で、社長を口説き、ビルの外観を【会社の自社ビル】じゃなく【店】に合わせたかった。
「はい、その通りです、許可いただけますか?」
『どんな、外観に、部長はしたい?』
「店の内装は、基本が白一色になりますから、外観は逆に真っ黒にしたいんです」
俺の希望を話し終えると、社長は。
『黒か~塗るの?』
何か塗って黒くするのは、俺も最初に考えた、しかし、数年で、塗装が所々剥がれていき、その度に塗り直しが必要になると、言う事らしい。
今日、打ち合わせに行ってきた、デザイン事務所で、一応、外観を黒にするのに、良い方法を聞いてきた。
薄い鉄の板で、ビル全体を覆うと言う方法があると聞いてきた。
タイル等と違い、威圧感や威厳感が増すと言うらしかった。
何枚か、実際に、その鉄の板を覆ったビルの写真を見せて貰ったが、俺のイメージにピッタリだったのだ。
社長に、こんな鉄の板があって……と、デザイン事務所で聞いてきた話をした後に、見本として見せてくれた写真の何枚かを、実際に借りて来ていたので、社長にも見て貰った。
『お~何かいかにも! って感じ出ていいじゃん! ビルとしても威厳が出てるし、うん! これで行こうか、部長』
こうして、社長を口説き落とし、俺の理想とするビルの外観で行くと言う事を決められた。
内装施工小説でも、建設現場小説でも無いので、内装のデザインイメージ。外観イメージの話も書けたので、施工関係の話の内容は、終わります。
次話からは、キャバクラオープンに向けての話へと移行していきます。




