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再びの丸投げ。

 社長から。


 『取り合えずは、デリヘルの新店舗の出店は、現段階で一時凍結、今後は既存の店舗の運営と管理に集中してくれ』


 そう言われている。まぁ確かに県内に、6店舗もデリヘルがあれば、ほぼ、県内全域をカバー出来るから、これ以上の店舗は必要は無い。むしろ、お客さんの喰い合いが生まれる可能性すらある。


 そして、管理業務に移行した途端に、俺の仕事量が一気に減った。


 管理するだけであるなら、各店舗には、店長とマネージャーが必ず1人は居て、尚且つ、複数の店舗を管理する、エリアマネージャーの藤田も居ることから、俺が自分から動く必要がある仕事等は、ほとんど無くなった。


 現在は、他の部長達もそうであるように、各店舗の視察をしたり、後は本社に詰めていたり、遊んでたりしている。


 要するに、部長ぐらいになれば、仕事をしなくても、給料が貰えるんだから、お前らも頑張れよ! と言う下の者達への目標として、存在しているだけになる。


 我が社の場合は、県内最大手。あらゆる業種の風俗店を複数、経営している。そんな会社だからこそ、上の人間は、働く必要が無くなっていく。これは、普通のサラリーマンでは、理解は難しい感覚だと思う。


 しかし、普通のサラリーマンと違い、風俗業界には【店】と言う明確な形のある物があって、初めて成り立つと言う事もあり、業務に色々種類はあるが、大元を辿れば【店の経営】この1点に集約する。


 店舗の日々の経営ならば、上の立場の者が、働く必要は無く、店長やマネージャーに任せていれば済む事である。

よって、風俗業界は偉くなれば成る程に、仕事が無くなり遊んでても給料が貰える。と言う職種になる。


 まぁ……要するに、俺も偉くなったから、ヒマ! って事なのだ。


 今日も、何する訳でも無く、俺の補佐と言うか、秘書と言うか、微妙な立場で、大した仕事も無いのに、会社から給料を貰っている、ユキと一緒に、本社に来ていた。


 何か、仕事があるかも? と言う、ふざけた理由で。


 『ユキちゃ~ん、コーヒーお願いできる~?』


 『は~い、社長さんは、ブラックで、専務さんは、ミルクだけでしたよね?』


 今も、ヒマ過ぎて、ゲームをしていた、ユキだが、お茶汲みと言う仕事を、社長から言われ、喜んで給湯室に、駆けて行った。


 『そう言えば、部長って、いつユキちゃんと結婚する予定なの?』


 専務から、ものすごい爆弾が落とされた。

俺も、このまま恋人同士って関係を続けたら良いとは、決して思ってはいないのだが……


 ルイとの事に、決着が未だ着いていない。いや……着けるのを恐がり、逃げている俺としては、非常に耳の痛くなる話題だ。


 『結婚式を挙げるなら、俺が仲人してやるからな』


 社長から、そう声が掛かる。その際が来たら是非お願いします。


 そして、そこにお盆に、湯気の立つコーヒーカップを3つと、缶のコーラを1本乗せた、ユキがやって来た。


 ユキは、社長、専務、俺の順にお盆に乗せた飲み物を配り、最後に自分の分のコーヒーカップを持って、俺の横に座った。


 『社長、何の話してたんです? 私の居ないところで、あっまた何かエッチな話ですか?』


 ユキは、流石、元風俗嬢。社長や専務や本部長が発言する、普通のOLなら【それ、セクハラですよ】なんて怒りまくるような、話題でも、へっちゃらだ。むしろ、自分もその話題に、乗っかって行く。


 『いやね、部長はいつユキちゃんと結婚するのかな~? って聞いてたの』


 『本当、いつするんでしょうね』


 そう、笑顔で答えるユキに向け、俺は。


 「善処します……」


 と、小声で答えた。


 このままでは、非常にマズい、針の筵に座らされるのは、確実だ。どうにか話題を変えなければ。俺がそう、思っていたところに、救いの天使が、陽気な声を上げて、本社の中に飛び込んできた。


 『たっだいま~あっユキちゃん来てる、社長~デザイン会社に頼んでた、イメージ画、貰ってきたよ』


 本部長が、何やら紙の束を社長に渡すと、社長と社長の横から覗き込んでいる専務の2人が、ペラペラと紙を捲る。

その後、最後まで見終わった社長は、俺の方を向き。


 『部長、この前言ってキャバクラのデザイン画、こんな感じにしてみたんだけど、どう思う?』


 そう言って、デザイン画が書かれた紙を渡してきた。

暫く、デザイン画を眺めた後に。


 「そうですね、基本的に壁を白にしたのは、良いと思いますけど、店の上、天井付近を、何で青に?」


 『え? だって部長がこの前、白い壁に鮮やかなスカイブルーの屋根って……』


 「いや……社長、喩えで言ったまでで、お客さん店の天井付近なんか見る訳無いじゃ無いですか、この場合、壁は1面を白、そうだなぁ……テーブルも白にして、ソファーをスカイブルーとか、淡い青と緑が混じったような色とか、エーゲ海の海の色にするとか」


 俺が、そう語り出すと、社長、専務、本部長の3人が、うんうんと無言で聞き入る。


 「後は……箱が大きいから、少し広めの席にして、従来のキャバクラみたいに、テーブル動かして、新しいテーブルを無理やり、なんて事も無くして……そうだ、店内に仕切り付けてVIPルームを作るのもいいかもなぁ……」


 つらつらと、自分の頭の中にある、店のイメージを、語った。


 『社長~もう、あの例の件、決めちゃったら?』


 そう、本部長が社長に言った。そして、次に社長が口を開いた時に。


 『木村部長、君には【無店舗型性風俗事業部】の他に【開発事業部】の部長も兼任してもらう、と言う事で、このプロジェクトの方も、よろしく』


 そう言われた。俺は、もう最初に、店のイメージを伝え、エーゲ海風の店と言うのが、決まった段階で、絶対に丸投げされる事を、予想していた。


 「はいはい、最初にイメージ伝えた段階で、丸投げされるんだろうなぁ……と諦めてましたよ、俺がやりますよ、好きにやっていいんですよね?」


 『好きにやって、よろしい、予算も取り合えず、箱が箱だけに、今のところは、無制限にする』


 「人も勝手に、俺の方で決めちゃいますよ?」


 『木村部長には、特別人事任命権を、社長の名前の基に、与える物とする』


 言質は取ったからな、社長。


 俺は、久し振りに、やりがいのある仕事に、着手出来ると言う事を、素直に喜んでいた。


 


   

 

 

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【風俗嬢と呼ばれて……】堕ちたJDの末路
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