私用車と社用車。
2号店のオープンまで残すところ、後数日。
そうそう。2号店の名前なんだが、当初は自然とみんなが【sweet line2号店】と呼んでいたのだが、考えた末に【happy line】と言う名前に変える事にした【line】だけを名残として残す形に変えた。これは、将来俺の手でどのぐらいの数のお店の出店が出来るのかは、不明だが同じグループのお店だと。お客さんや同業者に向けて認識して貰えるかも? と言う期待も込めてある。
ヘルス嬢からデリヘル嬢へと、仕事の内容を少し変える事になった、系列店から移って来てくれた、3人の風俗嬢も、元がヘルス勤務だっただけに、それぞれ1度ずつの講習をするだけに済んだ。
後、山下の方も元々が、ヘルス勤務一筋だっただけに、元居た店で講習の経験は何度かあったようで、女の子を連れていった時の対応ぐらいしか教えてない。
事務所兼寮の方に使ってる部屋には、現在。近藤マネージャーと山下マネージャーの男2人だけが暮らし。寮としてだけ借りた1つ上の階にある部屋に、俺とユキ、そしてルイの3人が入る事になった。
近藤はともかく、山下から多少、何かあるかと、思ったが、俺とユキが恋人同士である。と言う事も手伝い、男1人に女が2人と言う、俺が女の子を囲い込んでるなんて、誤解も生まれなかったのは、良かった。
多分、きっと、いや間違いなく、俺が驚き困ると言うだけの理由で決まった、社用車なのだが、当初、社用車として女の子の送迎用として使う予定だったのだが、近藤も山下も、車が車だけに、運転するのを嫌がった。ぶつけたりしたら……なんて事が、どうしても頭の中でよぎり、萎縮してしまった。それに加えて、まぁ少し考えたら分かる事だったのだが、とにかく燃費が悪い。
長い距離を継続的に走らせて使うと言うよりは、あっちにチョコチョコ。こっちにチョコチョコと、近距離をチョコチョコ走り回る、使い方をどうしてもする事により、バカみたいなイキオイで、ガソリンが減っていく。とても、社用車としの役目は果たせない車だったのだ。
そこで、俺が本社に掛け合い、中古で良いからもっと使い勝手の良い車に変えてくれるように、社長と専務、本部長の3人に頼んだ。
専務は、理解を示してくれて、国産のワゴン車辺りを中古で。と言ってくれたのたが……悪ノリ大好きな2人組がまた、とんでもない事を言い出してくれたのだ。
『あっ! 社長、良い事思い付いちゃったよ俺』
『採用!』
いや……本部長の良い事って……絶対、俺にとっては嫌な事でしょ? 後、社長……内容ぐらい聞こうよ。聞きたく無いけど。
『木村部長の車って、ステップワ○ンだよね? それとHu@merを交換したら、解決じゃん?』
『お~名案! さすが本部長!』
名案でも、流石でもねぇよ! お前ら……
俺は、専務に助けを求める視線を送ったが、専務は、静かに首を横に振るだけだった……諦めるしか無いのか……
しかし、ステップ○ゴンとハ○ーを交換って、交換レートが釣り合わないとか、考えないのだろうか? 考えないのだろうな、この2人は。
「あのぉ、流石に、ステッ○ワゴンとハマ○を、交換ってのは……申し訳無さすぎて……」
人間、無駄だと分かり切った事でも、時には足掻く必要もある。
『いや、これちゃんと考えて決めたから、いつもの悪ノリは、少ししか入ってないからな』
社長が急に真面目な事を言い出したが、少しは入ってたのか、やっぱり。
『うちの会社の社長、専務、本部長、部長、ここまでの役職を持ってる奴等の乗ってる車は、ベン○レー。ポ○シェ。ジ○ガー。ベ○ツ。B@W。セル○オ。まあこの辺りだ、ベ○ツとセ○シオが1番人気だけどな、そこに新たに、うちの会社の中でも比較的に早く部長になった、木村部長が乗ってる車は、ス○ップワゴン、釣り合いが取れてない! あの会社は、新しく部長になった奴に、車が買えるぐらいの給料も渡してないのか? なんて思われるのは、ガマン出来ん! よって、本日を持って、木村部長の乗ってる車は、元々からハ○ーだった、ステップ○ゴンは社用車だったと言う事にする』
にする! じゃねぇよ!
しかし……専務、ポル○ェに乗ってるのか、意外だな。こう……ボ○ボとか乗ってて【ボ○ボはね、車体が丈夫だから事故にも安心なんだよ】とか言いそうなのに。
その後、2号店の事務所に帰ってきた俺。
事務所リビングで、テレビを見ながら寛いでいた、山下に。
「山下マネージャー、ハ○ーのカギ取って」
そう言い、キッチンの冷蔵庫から、缶コーラを取り出し、プルトップを開け、缶の中身を喉に流し込みながら、山下を見ると、上手く交渉して、社用車を交換して来れたんだな。と喜んでる顔を浮かべていた。
俺は、缶をリビングのテーブルの上に置いてから、山下からカギを受け取り、自分の車のカギと交換に、山下に渡した。
「今日から俺の車を、社用車にするから、後、アレは俺の個人の車って事に、されられたから……」
山下が前に居た店の店長も、俺ほどでは無いそうだが、悪ノリ2人組のエジキ認定されていたそうで、翻弄されまくっている元店長の姿を間近で見ていたらしく、俺の言葉に、苦笑いを浮かべていた。
ユキとルイは、何故かとっても喜んでいた。
左右から抱き付かれて。
『きゃー太郎ちゃん、出来る男は、乗ってる車も違うんだねぇ』
『部長~カッコいい~惚れ直しそう、抱いて』
『ちょっとルイちゃん! 太郎ちゃんに、おっぱいくっ付け過ぎ! 後、太郎ちゃんは、私以外は抱かないから!』
何か本社で疲れて、帰ってきてからも疲れる1日だった……




