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顔を売るという事。

 ルイへの講習もこれで3回目が終わった。

2回目に、オプションの使い方等も含めて教え、今回の3回目は、総仕上げと言う形で、俺が先にホテルに入り、後から藤田に連れられてルイがやって来ると言う、よりリアルに近い形を取ってみた。


 俺は、基本何も言わずに、お客さん役に徹した。

ルイは、これまでに教えて貰った事を、上手く活かし、キャバ嬢時代に培った、接客術なんかも、自分なりに考えて、取り入れていた。


 出来としては、合格であり。尚且つ、今後はとんでもないぐらいに、人気も出そうな、デリヘル嬢へと生まれ変わっていた。 


 「ルイ、もう大丈夫だ、明日からは、お客さんのところにも派遣を始めような」


 そう言って、これ以上の講習が必要無い事をルイに伝えた。


 ルイのデリヘル嬢デビューは、概ねトラブルも無く、次の日には、早速、指名まで入る人気ぶりだった。


 それから、1週間ほどが経過した、ある日。


 俺は、藤田と後は、風俗情報誌を発刊している会社の人間2人の合計4人で、事務所として使っているリビングの、ソファーにそれぞれが座り、来月発刊する情報誌に載せる、うちの店のページのレイアウト等の打ち合わせをしている真っ最中だった。


 この情報誌。県内随一の売り上げを誇り、この雑誌を見た。と言うお客さんが、うちの店でも7割強の数に上る。

まぁ、それだけの雑誌なので、掲載する為の料金の方もそれなりにするのだが、費用対効果を考えると、使わないと言う手は無い。

因みに、レイアウトや写真等の数にもよって変わるが、雑誌1ページで、10万円~15万円ほどの料金が掛かる。

うちの店は、毎回、見開きで2ページ買っており、向こうとしても、わざわざ出向く程度には、上客なんだろうと思う。


 『今回も、ミキさん、マリナさんの顔出し写真の掲載と、こんな感じのレイアウトで良かったですか?』


 雑誌側には、予め、ある程度のイメージだけは、伝えており、そのイメージに合わせて、雑誌側がレイアウトを考えて、毎回持ってきてくれる。こちらで決めるのは、配色とか文字の大きさ、そのぐらいの物だ、後はプロにお任せしている。素人が下手に口出しても良くなるとは思えない。それが、俺の考えだからだ。


 「それで? この後に、ミキとマリナの撮影を?」


 『はい、その予定でいます』


 そんな打ち合わせをしている所に、事務所に来ていたルイが、ユキが淹れた、ドリップコーヒーをお盆に乗せてやって来た。


 『コーヒーです、どうぞ、インスタントじゃ無いですよ~』


 そう言って俺達にコーヒーを配って行った。


 『あれ? ルイさん?』


 あっやっぱり気付くか……まぁヘルスやデリヘルの他に、キャバクラのページも一緒になってる雑誌で、その雑誌で特集を何回もしてる、キャバ嬢だもんな。今、目の前に居るコイツも、キャバクラ時代に見た事ある顔だし。


 『ルイさん、キャバ引退して、デリヘルに変わってたんですね、あっそうか、木村店長さん、元々ルイさんと同じお店のマネージャーさんでしたもんね』


 コイツ頼むから余計な事言ってくれるなよ! この時俺は、そう思っていた。


 『あっルイさんも今回から、写真掲載するんですか?』


 『え? 私も? う~ん……店長が言うなら別にいいけど、キャバ嬢の時ずっと顔出してたし』


 「いえ、ルイの写真掲載は、顔出しはもちろん、顔を隠しての掲載も考えてませんから、今回もミキとマリナだけで」


 『え~! 勿体ないですよ! ルイさんの写真載せたら、めっちゃお客さん集まりそうなのに!』


 俺はこの、何も考えて無さそうなアホづら下げた男の、軽はずみな発言に、どんどんと機嫌が悪くなる。

そして、少し前に、この目の前に座ってるアホと同じ事を言って、俺に怒鳴られまくった藤田が、慌ててフォローに回った。


 『いや、聞いてました? ルイの雑誌掲載はしないって、今店長が言ったのを』


 『え? 何でですか? うちの雑誌でも特集組んだぐらいの人気あったんですから、掲載したら、宣伝効果抜群なのに』


 あ~ダメだ……キレそう……いや、キレる……キレちゃえ!


 「おい、お前は何だ? うちの店の経営コンサルタントでも、やってんのか? あぁ? 俺が載せないって決めたら、載せないんだよ、お前今すぐ! 会社に電話して、お前の上司を電話口に出せ! さっさと電話しろ!」


 突然、キレた俺の怒鳴り声を聞き付け、全員がリビングに集まって来た、何があったのか分からないが、俺の雰囲気を見て、何か起きたと言う事は察したのだろう。藤田が、ユキやミキ、マリナに向けて、事情を説明していた。俺が怒ってる理由と共に。


 俺に突然怒鳴られ、ビビったアホづらは、電話を会社に掛け上司と話していたようなので、電話を代わるように言い、上司と話をした。


 「もしもし、今、おたくの会社のえっと……名前まぁ知らんけど、アホづら下げた奴が、うちの店の経営方針に納得いかないとかで、ゴチャゴチャ言ってるんだけど、おたくの会社、いつから、客の店の経営に口まで出すようになったの? 何? このアホの言う事でも聞いたら、掲載料金の割引でもしてくれるん?」


 その後、10分ぐらい延々とイヤミを言い続け、上司はひたすら謝っていた。まぁ当然だ。コイツ等は客である店からの広告料で、メシを食っているんだから、経営にまで口を出してきていい訳がない。その後、上司が厳重に注意をする。と言う事で電話は切った。


 「なぁ、おい、兄ちゃん、お前さ、ルイがキャバ嬢だった頃に有名だったから、店のページに顔出したら、お客さん沢山来るって言ったよな? それよ、間違いないんだわ、兄ちゃんの言う通り、そして、ルイもきっと俺が頼んだら、顔出ししてくれる」


 そう言って、ルイの方を見ると、ルイは頷いた。


 「あのさ、ちょっとは考えて物を言えよ、いいか? ルイはキャバ嬢だった訳だ、客の中には当然口説いてた奴がゴロゴロと居る、そしてそんな奴等の中には、キャバ嬢が客をあしらうのを、本気で受け取り、ルイに恨みとまでは行かないが、良い感情を持ってない奴だって当然居る、そんな奴等が居るのに、ルイにデリヘルのページに顔を晒せってか? お前、その事によって、バカな奴等がルイを指名して呼び出して、変な事しないって言い切れるのか? ルイに危険な事が及ばないように責任持って、四六時中ルイの警護でもしてくれるのか? 何かが起きたらお前、何をどうケリ付けてくれるんだよ? お前、もちろんそこまで考えて、物、喋ってんだよな?」


 一気に、怒鳴り付けると、一緒に来ていたカメラマンらしき男が、俺に向けて。


 『店長さん、木村さん、本当に、本当に全て貴方の言う通りです、今回はこのアホが何も考えずに軽はずみに発言した事が全て悪い、一緒に来てて止めなかった私も悪い、今回は今回だけは、許してやって下さい』


 このカメラマンの方が100倍はマトモだ。俺はこの必死にアホな同僚を庇う、この男の顔を立てて、怒りの矛先を収める事にした。


 「おい、謝れ、謝罪しろ、社会人なら当たり前の事だよな?」


 そう言うと、アホが謝ってきた……


 「おい、俺に謝ってどうすんだよ? 謝る先が違うだろ?」


 そこまで言われて気付いたのか、ルイに向け謝罪をしていた。

その後すぐに、カメラマンの男に言われ、アホは事務所から出で行き、カメラマンの男と打ち合わせを、終わらせ、ミキとマリナの撮影も終わった。


 「ごめんな、ルイ、嫌な気持ちにさせちゃって」


 ルイにそう謝ると、ルイは店長のせいじゃないから。そう言ってくれた。


 『太郎ちゃんって、本当、私達風俗嬢を守る為なら何でもしちゃいそうだよね』 


 そう言ってユキが、笑っていた。それに釣られて、みんなが、こんな店長の居るお店で働けて良かった。とか、言ってくれた。

藤田と近藤は、何故か、一生付いて行きます! とか言ってたが、付いて来ないでくれ! と心から思う。


 顔を出すと言う事、それは確かに、売れる為には有効な手段なんだろう。だけど、それによって生じる問題も、ちゃんと考えなければいけない。


 その日の夜……


 本部長から電話が入り、本部長から、あの雑誌の発刊元の会社が、本社に来て、高そうなメロンを5個持ってきたよ? 何か木村店長さんに渡しておいて下さい。この度はうちの会社の者が大変失礼しました。厳重に注意をしておきました。って言って。

木村店長何したの? そう聞かれた俺は素直に、事の顛末を、本部長に報告した。


 本部長は電話口で大爆笑していた。木村店長を怒らすなんて相当な猛者かアホだったんだね、俺でも本気で怒らせたく無いと思ってるのに。あっメロン、明日持っていくね、あっそうそう、社長と専務がメロン1個勝手に食べちゃったから。そう俺に伝えてきた本部長の声の後ろで、社長と専務らしき声が。


 『ばか! バラスなよ! 木村店長怖いんだから!』


 そんな声が微かに聞こえていた。


 その月の掲載料金の請求が来なかったのは、まぁ……余談だな。

 

 

 


 

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【風俗嬢と呼ばれて……】堕ちたJDの末路
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