買い物
マリナが買い物に付き合ってくれる事となり、現在はマリナの着替えを待ってる。まぁ、寝起きだし、メイクなんかも必要だろうしな。
講習を言い渡した藤田は、自分の部屋で講習するのが嫌だったのか、ミキにホテルで講習をするから。そう告げて、今はミキが支度するのを、俺と一緒に待っている。
『そうそう、店長、思い出したんですが、交通費って詳しくはどうする考えなんですか? 距離とかで決めてます?』
「あ~交通費な、俺もアレには、悩んだ、他の店とか調べて見ると、取ってないところもあるんだが、プレイ料金は高めなんだよな~うちは比較的安い方に分類されるから、交通費取る事にしたんだが、市内2,000円だろ? それで、この市と隣接してる市の、地図見て大体半分ぐらいまでを、3,000円、半分から向こうを4,000円って感じで、遠くなる度に増やそうかと、それも後で地図買ってきて、マジックか何かで線引きして、誰でも分かるようにしないとな」
この交通費ってやつが、中々難しい。取らなきゃ済む話なんだが、取らなきゃ、プレイ代金の内のデリヘル嬢に渡した残り40%だけじゃ、車の維持費や人件費なんかで、赤字に成りかねない。
取ってる店が大半だから、お客さんも取られるって事に、抵抗はそんなに無いが、高過ぎたら逆に安い店に流れるだろうし、安ければ赤字だしと、本当に難しい。
まぁバカみたいに遠い所から頼むぐらいなら、この市まで来てホテルに部屋取った方が安い。って事ぐらいは、みんな解ると思いたい。
『取らないと赤、確実なんです?』
「プレイ料金を一律5,000円上げたら、取らなくても黒になるけど、お客さんは、まずプレイ料金の値段で店を決めるからな、そこは安めにしておきたいんだよ」
そんな、幹部同士らしい会話をしていると、先ずミキが少し遅れてマリナがリビングにやって来た。
『『お待たせ、待ちました?』』
「いや、待ってないよ、藤田と話してたから」
ここで、待ってたなんて言ったら、間違いなく機嫌が悪くなる。
風俗嬢には、出来るだけ優しく、おだてて、気持ち良く仕事をして貰う。それも、俺達、男性スタッフの仕事だ。
4人揃って、部屋を出て、マンションのエントランスで、2組に分かれた。藤田達は歩いて5分ぐらいで着く一番近いホテルに行く。との事だ。俺はマリナと、マンション裏の駐車場に行き、会社が用意した、無駄に高級な黒のワゴン車に乗り込んだ。
車を最初の目的地に、走らせてる最中に、マリナから、風俗嬢って仕事してる女の子に偏見が無いのか? なんて事聞かれたが、前にユキに語った事を聞かせたら、何やら物凄いキラキラした目で俺を見ていた。まぁ、風俗嬢達のおかげで、ご飯食べてる身なんだから、感謝こそすれど、偏見なんて持つ訳ない。って当たり前の事なんだが、きっと、今までそう言う目で見てくれる人に、会わなかったのだろうな。
『店長~先ずはどこに買い物に行くんですか?』
「ん~最初は服屋、ちょっと行った所にある服屋に、セーラー服を頼んでたから、先ずはそれを取りに行く」
『セーラー服か~私着て似合いますかね?』
「ん~似合うんじゃないか? マリナまだ20代前半なんだし」
そんな、他愛も無い会話を交わしながら、服屋に到着した。
町に昔からあるような、どこか流行りからは取り残されたような感じの服屋を見て、マリナは【ここで買うの?】って顔してるが、こう言う町に昔からある服屋ってのは、大体が、近くにある学校の【指定制服】ってのを必ず売ってる。逆に手に入りやすいんだよな。
こうして、無事にお店で使うコスプレ衣装のセーラー服を5着購入出来た。ちゃんと本社宛に領収書を書いて貰う。必ず何としても、開設費として、会社に払って貰う。こんな物まで、運営費として、お店で払ってたら、運営費が無くなってしまう。今日買う物全てを。
『なるほど~学校指定の制服か~本格的なコスプレ衣装より、本格的で安く買えるって訳ですね、店長、本当頭良いんですね』
そう言って、微笑むマリナを助手席に乗せ、次の目的地に向かった。
「次は、ドラッグストアに行くから」
ドラッグストアでは、マリナが入り口で買い物カートを持ってきて、押してくれるようだ。俺は、こんな事ぐらいで【この子はなんて良い子なんだ】そう思ってしまう。とにかく、風俗嬢は、男性スタッフに少し冷たい。と言う固定観念が俺にも、すっかり定着してしまってるようだ。
『何買うんですか?』
「除菌出来るウェットティッシュとコンドーム」
マリナにドラッグストアで、買う物を言う。マリナは、店の天井からぶら下がってるPOPを見て、目的の物が売られている場所に検討を付けたのか。
『あっ店長、店長、ウェットティッシュとかは、あっちみたいですよ』
そう言って、カートを押して、売り場に行ってしまう。俺は、少し遅れてマリナに付いていく。
「取り敢えずは……箱になってるヤツ5個と詰め替え用を5個でいいかな……」
そんなような事を言いながら、マリナが押してくれているカートの中に、除菌ウェットティッシュを入れる。
そして、同じように、コンドームをなるべく厚い物を選び、こちらも5ダース、カートに入れた。
『店長、コンドームって薄い方が気持ち良いんじゃないんですか?』
そうマリナに聞かれたが、別にお客さんに着けさせる訳では無い。この子は、何を勘違いしてるんだろうか……コンドームをお客さんに着けさせるようなサービスしてたら、風営法違反で逮捕されちゃうだろうに。
「厚くていいの、これはピンクローターに被せるコンドームなんだから、破れにくさ重視なの、後……しないと思うが、先に言っておくぞ、コンドームをお客さんに着けてもらう必要があるような事を、店に内緒でするなよ?」
店を守る為なら、風俗嬢より店を優先させるぞ! と言う思いが伝わったのか……
『うん、私も店長のお店で長く働きたいから、そんなお店に迷惑掛かるような事しないよ、絶対だよ!』
そう言ってきた。俺は、それを聞いて笑顔でマリナの頭を軽くポンポンと叩きながら、そうか。そうか。と微笑んだ。
会計を済ませ、しっかりと本社宛の領収書を貰い、店を出て、買った物を車に乗せる。
マリナは、移動すると思ったのだろう、助手席に乗り座って待っていた。俺は、助手席の側に行き、窓をコンコンと軽く叩き、マリナに微笑みながら、指をドラッグストアの向かい側の店に向けて、指す。マリナも意味を理解したのか、慌てて助手席から降りてきた。
『先に言ってくださいよ~恥ずかしい』
俺がマリナに指差しで行き先を告げた店は【100円均一】の店。
ここは、ドラッグストアと100均が同じ敷地内に入っている場所だった為、ここの店を最初から選んで決めていたのだ。
「ここで、パンスト買うからな、どうせ、お客さんの手でビリビリに破かれるから、100均ので十分だろ?」
そう言うと、マリナは無言で首を縦に振る。
100均で黒とベージュのパンストを、それぞれ20枚ずつ購入した。
「次で最後だから」
それだけをマリナに言い、車を発車させた。
着いた店は、所謂【大人が楽しむ為のオモチャ】を売ってる店だ。ここは、俺が1人で店に入り、マリナには、車の中で待ってて貰うつもりだったのだが、マリナは興味が出たようで、待ってていいぞ。そう言っても、付いてくる気マンマンなようだ。
店で1個500円ぐらいの一番値段の安いピンクローターを5個買った。因みにマリナは終始【うわぁ~すごい、これどう使うの?】を連呼していた。
全ての買い物が終わった所で、車の中で、最初にマンションに行く前から用意をしていた、14,000円の入った封筒をマリナに渡した。
「それじゃ、これが今日のお手伝い賃な、ミキの講習代と金額は同じだから」
『はい、店長ありがとうございます』
そう言ってマリナが、自分のバッグに封筒をしまった。
帰り、マンション近くの、ファストフードのドライブスルーに寄り、自分達の分と、今頃は、講習を終わらせマンションに戻ってきてるであろう2人への、お土産物の分も買って、マンションの事務所に戻って行った。