表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/90

藤田の講習

 藤田は、男性スタッフ用のマニュアルを、覚えようと、マニュアルが書かれている紙を、読み続けている。

俺は、そんな藤田に、頑張れよと心の中でエールを送り、座っていたソファーから立ち上がり、キッチンの隅に置かれたゴミ箱の、不燃物入れにカラになった、コーラの空き缶を捨て、リビングには戻らずに、そのまま、キッチンを抜けて、ミキの部屋の前まで移動した。


 ……コンコンコン


 「ミキ~起きてるか~?」


 礼儀として、いきなりドアを開けるような事はせずに、中に居るミキに声を掛けると、ミキは起きていたのか、すぐに自分からドアを開けて、俺に顔を見せてくれた。


 「おはよう、ミキ、ちょっとリビングの方に行っててくれるか? 仕事の話があるから」


 そう、ミキに説明をしている時に、俺の声が聞こえた。そう言いながら、もう1人のデリヘル嬢のマリナも、俺に挨拶しようと自分の部屋から出てきていた。


 「あっマリナ、おはよう、今声を掛けに行こうかと思ってたところだったから、マリナもちょっとリビングの方に行こうか」


 そう言って、マニュアルを未だに読んでいる藤田が居るリビングへと、3人で入っていった。


 俺達3人が、リビングに入ってくると、藤田が読んでいたマニュアルから目を離す。ミキとマリナは、キッチンの冷蔵庫の中から、それぞれが買い置きしていたのであろう、飲み物を手に、リビングのソファーに座った。


 全員がソファーに座り終わってから俺はみんなに話をし始める。


 「藤田とマリナは、前は同じイメクラで働いてよな? 藤田とマリナには、詳しい説明をしてないけど、うちの店のオプション、全部、意味と使い方って分かるだろ?」


 藤田とマリナに、向けてそう声を掛けると、2人揃って、頷く。


 イメクラと言う風俗は、色んなシチュエーションを、想定して、お客さんと風俗嬢が、それに合った役に成りきって、楽しむ遊びとなっている。そんな数あるシチュエーションの中には、うちがオプションとして設けた物を使用するような、シチュエーションもある。

そんなイメクラで実際に、それらの小道具を使い、お客さんと接していたマリナは、もちろんの事。その店で男性スタッフとして働いていた、藤田も、未経験の女の子に教える側に立っていたので、当然、理解しているはずだ。


 そう思い確認をしてみたが、2人ともが大丈夫そうだ。


 「ミキは、特に変わったシステムやオプションなんかがあるような店じゃなく、極々普通のヘルスで働いてたから、オプションの使い方がいまいちピンと来てないだろ?」


 『うん、オプションの種類見て、これはこんな感じかな? ぐらいしか分かんなかった、あっコスプレ衣装は分かるよ』


 予想通りの答えだな。そう思いながら、持参してきた小さな紙袋の中身をテーブルの上に並べた。


 テーブルの上には、ピンクローター。コンドーム。新品の黒のパンティストッキングが置かれた。


 「先ずは、ローターの使い方と言うか、使う前に、ミキがしなきゃいけない事から説明するからな、使う直前に必ず、ローターを除菌ウエットティッシュで拭くこと、拭いた後は、コンドームを1枚取り出して、ローター本体に被せる事、被せたらコンドームが外れないように、本体の根本で結んで留める事、これを必ずやってから、お客さんに渡すようにしろよ」


 そうミキに説明をしながら、実際に目の前で1度やって見せてる時に、藤田から、横やりが入った。


 『店長って、普通のヘルスの経験しか無いですよね? なんで、そんな事ちゃんと知ってるですか?』


 「うん? どう使う物なのか、どう使ったら衛生的に安全に使えるのか、って考えたら、当たり前に思い付くような事だろ?」


 俺は、当たり前に考えて、当たり前の答えを出し、当たり前に説明しただけなのだが……


 『誰にも聞かずに、正解出したんだ……さすが変態……』


 その藤田の失礼極まり無い独り言を、マリナとミキが聞きつけて、変態って何? と藤田に聞いている。


 俺はまた、みんなに変態だと思われる訳か……


 藤田は、俺がキャバクラ時代にやった逸話を、大袈裟に誇張して、ミキとマリナに聞かせていた。


 「ほらほら、そんな事は、どうでもいいから、ローターの使い方は理解したか? ミキ」


 『除菌シートで拭いて……コンドーム被せて……縛る……うん、分かった覚えたよ』


 「それじゃ、次はパンストな、これはイメクラと使い方と言うか、お客さんへの説明が増えるから、ミキだけじゃ無くマリナも藤田も聞いて覚えろよ」


 実際にお客さん相手に使うのは、ミキとマリナだけだ。しかし、藤田は教える側にも、成らなくちゃいけない、教える時に、知りませんでした。なんて事はあってはいけない、ちゃんと覚えて貰う必要があった。


 「イメクラじゃ、オプション入ってから、控え室でパンスト履いてお客さんのところに行ってたろ? うちでは、ここでお客さんに要望を聞く、目の前で履くところを見学するか、見えない場所で履いた方がいいか、必ず聞いて、お客さんのリクエスト通りにな」


 そう説明して、それぞれの顔を見ると、全員、理解はしてる顔を浮かべている。


 「と……まぁこんなとこだな、何か分からないところとかあったか?」


 最後に確認を取ると、全員が理解した。そう答えた。割りと簡単な事しか言ってないから大丈夫だろう。


 「それじゃ、オプションを使う為の準備の説明は、終わりな、藤田! 今から実際に全部のオプションを使って、ミキにオプションの【講習】しろ! お客さんがどんな風に使って楽しむのか、どんな風にしたら喜ぶのか、ミキに教えろ」 


 俺の突然の講習しろ発言に、藤田は何故か慌てている。逆にミキは、これから講習なんだ。と割りと普通な感じで居た。


 「何を慌ててるんだ? お前、この店のマネージャーだろ? 教えるのは、当然の仕事だろ? ミキ見てみろよ、分からない事は、講習を通じて教えて貰うって言う、この業界の当たり前を、ちゃんと分かってるから普通にしてるぞ」


 この講習と言う物、実際は、女の子よりも、講習をやる事になる男性スタッフ側の方が、尻込みするケースの方が、実は多いのだ。

女の子は、講習と仕事と割り切れる子が大半なんだが、男は、同じ店でこれから働くと言う事が、ネックになるのか、尻込みする奴の方が多い。俺はもう、仕事と割り切って考えられるようになっているが、慣れてない場合、緊張する。俺も慣れるまでは、緊張の連続だった。


 俺は、自分の財布を取り出して、財布を開くと。


 「それじゃミキ、これ90分コースのミキの取り分な、後、オプションがローターとパンストだから、オプション2つ分の料金」


 そう言って、90分コース20,000円の60%の12,000円とオプション2つ分の2,000円の合わせて、14,000円をミキに手渡した。


 女の子が講習を覚える男性スタッフの為に行う講習に、店が女の子に講習代金を払うのは、当然の事なんだが。

店が、女の子に教える講習の場合も、女の子にお金を払う。

一見、教えて貰う側なんだから、お金貰うのは変だと思うだろうが、実際は、その教える部分だけで終わる訳も無く、最後まで続く事から、その分の料金を払うと言う、ちょっと普通の人には、変だと感じるような事が、実際に行われている。


 「場所は、まぁ藤田の部屋でいいだろ、シャワーはお風呂のヤツ使えばいいし、それが嫌なら、ホテル使ってもいいが、ホテル代は藤田が自腹で出せよ」


 そして、俺は、もう1人のデリヘル嬢である、マリナに向き合う。


 「お店がオープンしたら、競争になる部分があるのは、マリナも理解してると思うが、まだオープン前だな、そして講習とは言え、ミキにだけ、給料が支払われる、これは不公平だし、講習だからと言っても納得も出来ないと思う、だからマリナは、これから、俺に付き合って、買い物のお手伝いに付いてきて貰う、ちゃんとミキに渡した金額と同じ金額を、バイト代として払うから、いいよな?」


 そう伝えると、マリナは笑いながら。


 『はい、ミキちゃんへの講習だから仕方ないのは、分かりますけど、ちょっと気分良くないのは、思いました、木村店長って本当に私達、風俗嬢に優しい人なんですね、お買い物のお手伝い喜んでお付き合いしますよ』


 そう言ってくれた。良かったと素直に思う、オープン前から、給料に差を付ける事に違和感を感じた為に考えた処置だが、受け入れて貰えて。

 

 


 


 


 

 

この後の買い物パートまで、一緒に書こうかと思いましたが、長くなりそうなので、分けました。日常と言うよりかは、実際に女の子がお客さんにサービスする時に必要な物を買いに行くので、その話は、次話に持ち越しします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【風俗嬢と呼ばれて……】堕ちたJDの末路
こちらもよろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ