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襲来

 今日も、お店が開店する1時間程前に、お店に入る。

最後のチェックに余念の無い、慌ただしく店内を動き回る男性スタッフを尻目に、キッチンを抜け、更衣室に入った。


 更衣室の中では、開店時間から店に出る予定となっている、レギュラーとして働いているキャバ嬢やアルバイトとして週に何日か出勤してくるキャバ嬢達が、ドレスに着替えたり、ドレッサーの前に座り、メイクをしていたりと、普段と変わらない光景が写っていた。


 俺は、1人1人キャバ嬢に挨拶をすると共に、今日もよろしくね。そう声を掛けていく。店長が言うところのキャバ嬢達の掌握は出来たのだが、だからと言って傲慢になっては、直ぐに彼女達に呆れられてしまうだろう。締めるところは締め、自分を律するところは律する必要がある。


 「おはよう、エリカ、アカネ、ルイ、TOP3が仲良く揃って何か悪巧みでも話してるのか?」


 そう言って、珍しく3人が仲良く話してるところに、冗談を言いながら声を掛けた。

あれからも、俺の指導に欠かさず出て、それを自分なりに活かしたアカネは先週とうとう、ルイを抜きNo.2にまで昇り詰めていた。


 『来週、お店でエリカちゃんの、誕生祭をやるでしょ? その事について、ちょっとね』


 そう言ってアカネが俺に、何の集まりなのかを説明してきた。


 『それより、マネージャー! この新しいドレスどう?』


 そう言いながら、ルイが椅子から立ち上がり、俺に新調したのであろうドレスを見せてくる。そのドレスは胸元が大きく開き、ルイの少し大きめな胸が強調されるデザインをしている。


 「うん、似合ってるな、でもちょっと胸元開きすぎてないか? お客さんは喜びそうだが、男性スタッフは目のやり場に困りそうだな」


 『アカネちゃんに抜かされちゃったから、少し気合い入れて頑張ろうと思ってるんだ』


 そう言ったルイの顔は、アカネにライバル心を燃やしつつも、ドロドロとした感情を一切見せない、明るい宣言に見えた。

実際、アカネも笑顔で『負けないんだから』等とルイに答えている。


 「ほら、いつまでも、おしゃべりしてないで、準備しろよ、もうすぐ時間だぞ」


 3人にそう声を掛け、俺は、更衣室の片隅にキャバ嬢達の手により、追いやられてしまった、事務机の上から、自分のインカムを取り、シャツの胸ポケットに本体を差して、ピンマイクとイヤホンを着けた。


 さぁ今日も仕事の開始だ。


 店長と大村マネージャーと俺との3人で、ローテーションしている仕事で、俺は今日は伝票係だったのだが、先程、大村マネージャーから相談を受け、少し体調が良くないと言う理由で、大村マネージャーを常に座ったまま仕事の出来る伝票係に変え、本来やる予定になっていた、付け回しを俺が担当する。


 お店が開店時間を迎えてすぐに、お客さんが来店してきたのだが、丁度その時に俺は、キッチンに居て、キッチン担当の男性スタッフが注いでくれた、コーラを飲んでいた。


 【3名様ご来店です。3名様ともにフリー】


 と言う、男性スタッフの声がインカムから流れたのに次いで。


 【3名様、6番テーブルにご案内】


 と言う、店長の指示がインカムから聞こえた。俺は、手に持つコーラを一気に飲み干して、キッチンから出るとその足で、キャバ嬢達が待機している【待機席】へと向かう。


 【6番テーブル様、お飲物はハウスボトル】


 お客さんが飲む、飲み物が決まったと言う報告を聞いた後、俺は、待機席に座る3人のキャバ嬢の名前を呼んだ。


 「ミホ、キョウコ、ユイ、行こうか」


 この3人は、まだ店に来て日は浅いが、3人共がヤル気も向上心もある、店にとっては、優遇してやるべきキャバ嬢だ。

まだ、店に入ったばかりの3人に、本指名をしてくれるお客さんは居ないが、そこそこの数の場内指名は取れている。フリーのお客さんに積極的に着けてやり、チャンスを与えてやるべきだ。


 3人の華やかなドレスに身を包んだキャバ嬢を引き連れ、6番テーブルへと向かう。


 テーブルに着いた後は、お客さんからよく見えるように、キャバ嬢3人を並ばせ、俺はあくまでも引き立て役に徹し、お客さんがキャバ嬢を見るのに邪魔にならない、隅へと立ち位置を変える。


 「ご来店ありがとうございます」


 そう声を掛け一礼した後に、それぞれキャバ嬢を着けていくのだが、俺は、席に座るお客さん達の顔を見た瞬間に固まってしまった……


 「な……何してるんですか?」


 そこには、川原専務、中村本部長、田中部長が座っていた。


 『来ちゃった……てへ』


 「てへって……可愛くないですよ?」


 本部長のセリフにツッコミをして、呆れてしまった。

キャバ嬢達は、まだこの人達に会った事が無かったらしく、キョトンとした顔を浮かべ、並んで立っている。


 『ほらほら、私服着てるし、お客さんだよ? 僕ら3人は』


 専務のその言葉に、咄嗟に気持ちを切り替えて、自分の仕事をこなす。


 「ご来店ありがとうございます」


 仕切り直しとばかりに、再び一礼した後。


 「御紹介します、ミホさんです」


 ミホの名前を呼びながら、ミホの背中を軽く押し、1歩前に出させる、そして、ミホを田中部長の横に、手の指を真っ直ぐ伸ばし、手のひらで田中部長の隣を示しながら。


 「ミホさん、あちらの席に」


 そう言ってミホが座る場所を、ミホに教える。その後も同じように、残った2人のキャバ嬢を順に紹介しながら、キャバ嬢に座る場所を示していく。


 3人のキャバ嬢が全て、俺が決めた場所に腰を下ろすと。


 「ごゆっくりと、お楽しみ下さい」


 最後にもう1度一礼して、お客さんに背を向けて、テーブルから離れていった。 


 俺は、その後、真っ先に指令席に座る店長の元に駆け寄り。


 「あの人達は……」


 『あ~専務達? あの3人組、特にキャバクラ大好きで、よく自分の会社の系列のキャバクラに行くんだよ、もちろんお客さんとしてね、ほら、僕達って、他のキャバクラに行っても、顔知られちゃってるから、入り口で帰れって言われちゃうでしょ? だから、たまにこうやって、自分達の系列のキャバクラに遊びに来るって訳』


 なるほど……店長に言われて、納得した。


 『ちゃんと、お金も払ってくれるから、お客さんとして接してね、ちょっとやりにくいとは思うけど』


 そう言って笑う店長を見ながら、何か試されてる気がする俺だった……


 その後は、なるべく意識をしないように、普通のお客さんとして、普通のお客さんに接するように、専務達に接する。


 専務達は、特に誰かを場内指名するでも無く、ずっとフリーのまま、何セットも延長を繰り返す。


 そして、そろそろ専務達に着けるキャバ嬢が一巡しそうな時に、俺は、ヘルプを3人引き連れて、店内を回り始める。


 先ずは1人目……。


 「失礼します、アカネさんをお借りします」


 そうお客さんに声を掛け、アカネの事を本指名している、お客さんの席からアカネを抜く。


 「御紹介します、ミユキさんです」


 そう言って、ミユキをアカネのヘルプに着けた。


 ヘルプ2人とアカネを連れ、次のテーブルへと向かった。

次のテーブルでも、先程と同じように、エリカを抜き、ヘルプを着ける。


 エリカ、アカネとヘルプを連れて、次のテーブルに行き、ルイを抜いた。


 そして、この店のTOP3を引き連れて俺は、6番テーブルへと向かう。


 「次着くの、専務と本部長と部長だから、後、なるべく場内取るように仕向けて欲しい、もうフリーで着けれる子一巡したから」


 俺は3人にそう、指示と頼み事をする。

3人を見ると全員が、何も文句を言わずに、頷いてくれた。


 こんな場面の時に、ちゃんとキャバ嬢を掌握していると、文句も言わずに【信頼してるマネージャーの頼みだから仕方がないか】と、不平不満を言わずに素直に従ってくれる。


 そして、3人は、専務達の席に着き、俺の頼み事を実行に移してくれた。


 10分程経った時に、インカムが流れた。


 【6番テーブル様、エリカ、アカネ、ルイ場内入りました】

 


  

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【風俗嬢と呼ばれて……】堕ちたJDの末路
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