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成長してる?

 キャバクラ勤務もあれから1週間が経った。

ある程度、男性スタッフ達とも打ち解け、店長や大村マネの計らいで、一緒に仕事帰りに、ご飯など食べに行ったりと気を回して貰ったおかげだ。


 店長と大村マネは、最初の印象通りに、優しい人なんだが、キャバ嬢に対しては、そこそこ厳しく接している。


 これに付いては、キャバ嬢と言う者は、順位や売り上げ指名の数などの、男性スタッフには縁の無い、店の中に存在する競争社会の中に身を置いている為に、自然と、自我が強くなり、男性スタッフ等をストレス発散の手段として使ってしまうようになってしまうからだそうだ。


 確かに俺や店長、大村マネに対しては、そんな事をしてこないが、普通の男性スタッフには、ちょっとした買い物に走らせたり、ちょっとしたミスでも必要以上に強く当たったりしている場面を何度も見た。


 まだ俺には、こんな時にキャバ嬢を叱って、男性スタッフを助けてやる事が出来ないが、店長や大村マネからは、そう言う事も出来るようになるよう言われている。 


 今日も俺に与えられた仕事は、伝票書きとお金の管理だ。

これが、ヘルスなんかと違って意外と大変な作業だった。

ヘルスでは、コースと料金と指名の有無ぐらいをお客さんが来た時点で書いて、風俗嬢に渡したら、会計の時まで、触る事が無いが、

キャバクラだと話は別だ。


 常に、お客さんからは、キャバ嬢に飲ませるソフトドリンクの注文が入り、オツマミのフードなんかの注文も入る。

それに加えて、フリーで入ったお客さんが、店が付けたキャバ嬢を気に入れば、途中から場内指名も入る。


 とにかく、お客さんが帰るまで、気が抜けないのだ。

ここで、ミスをして、ドリンク1杯でも付け忘れたりすると、キャバ嬢へのキャッシュバックの金額に差が出てしまう。


 順位に拘るキャバ嬢達にとって、このドリンク1杯の差が多きな差になる。だからキャバ嬢は、男性スタッフには基本厳しい目を向ける。まぁ本音を言えば、それじゃお前は? となるのだが、そんな事言ったらヒステリー爆発は必然だ。


 インカムに流れる男性スタッフ達の、やり取りの中で、伝票に追加で書くべき事だけを、聞き分けて、伝票に記入していく。


 最初の頃は、常に店長か大村マネが横に付いていてくれて、記入漏れや計算の間違い等を指摘してくれたのだが、俺にばかり、付きっきりと言う訳にも行かない為、3日からは、俺1人で伝票を付けている。


 人間、何事も慣れると余裕が出来るもので、今では、インカムでの男性スタッフ同士の、バカ話や、冗談も聞く余裕が出来ている。


 【3番テーブル、チェック入りました】


 「おっと、お客さんのお帰りだ。えっと……2セット居て2名だから、セット料金が、28,000円。本指名してるから、2,000×2×2で8,000円。ドリンク4杯で4,000円、合計が……40,000円と……」


 計算が済んだら、インカムで男性スタッフに知らせる。


 【3番テーブルチェックOK】


 この俺がインカムに流した言葉を、男性スタッフが聞き付け、キャッシャーボックスまで伝票を取りに来る。


 後は、お釣りがあれば、お釣りを、メッセージカードを入れるぐらいの小さなお店のロゴの入った封筒に、お釣りを入れて、スタッフに手渡す。


 これを平日で大体50~70回。土日なら100回を越えた数、ひたすら繰り返していく。


 ずっと座っていられるのだが、中々大変だ。


 【木村マネです、コーラお願いします】


 そうそう、お店の中では、飲み物は、飲み放題だ。

フロアに出ている人は、自分達で、手の空いた時間を見計らい、さっとキッチンの中に入り、飲み物をグラスに入れ、喉を潤す。


 俺の場合と言うか、店長とマネージャーは、どんなにヒマでも、必ず男性スタッフに言って、持ってきて貰うようにする事を、店長から言われている。これも、幹部になったら同じように出来る。と言う向上心を養う為の一貫なんだそうだ。


 そして、この伝票書きには、もう一つ特典があり、この中に居る限りは、タバコを吸い放題なんだ。

外側からは、お客さんからは、完全に見えない為、いくらタバコを吸ってても、構わない。

男性スタッフ用の喫煙所って訳だ。


 『木村マネ、だいぶ慣れました? 伝票仕上げるの早くなってるし、大村マネよりも早いんじゃないかな?』


 今も、1人、男性スタッフがタバコを吸いにやってきて、俺にそう声を掛けてきた。


 「そう? そうだといいけど、でも、少し余裕は出てきて、タバコ吸うぐらいのヒマは見付けられるようになったけど、まだまだ必死だよ」


 俺が、そう答えると、男性スタッフは、おもむろに胸に付けているピンマイクを摘まみ、スイッチを入れながら……


 【業務連絡、木村マネの伝票仕上げ大村マネより早くなってると思う奴、コールバック】


 そう、言って全スタッフに流した。


 「ちょ……店長も大村マネも聞いてるんだから」


 【早くなってまーす】【店長よりも早いかも】【早い】【以下同文】……


 等の返事がインカムから聞こえてきた。

  




 

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【風俗嬢と呼ばれて……】堕ちたJDの末路
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