キャバクラ勤務初日
今日からは、心機一転。キャバクラ勤務の初日だ。
俺が勤務する事が決まった店は、俺が店長として働いて居たヘルスがあるのと同じ繁華街の中にある店になった。
この繁華街の中だけで、俺の働いてる会社の系列店が、キャバクラで3店、ヘルスで2店もある。
その内の1店で今日から働く。
今日は事前に本部長から言われているように、16時に本社に行く事になっている。ヘルスと違い制服は無いから、ちゃんとスーツを着てくるようにとの事だ。
少し余裕を持って家を出た。因みにだが、俺は今、実家を出て、部屋を借りている。ユキとその後付き合う事になり、今は同棲をしてるって訳だ。まぁ、仕事に関係の無い話だから、どうでもいいか。
本社に着き、挨拶をしながらドアを開けると、中には本部長ともう1人男性が俺を待っていた。
「おはようございます、すみません、遅れちゃいましたか?」
遅れては居ないのだが、上司を待たせてしまったのかと、そう挨拶をする。
『おはよう、マネージャー、遅れてないよ、ちょっと打ち合わせしてただけだから』
本部長がそう返してくれた。そう、今日から俺は店長からまたマネージャーになって、働くのだ。
『紹介するね、こっちが今日からマネージャーが働く事になる、キャバの店長の、毛利くん、毛利くん、こっちがマネージャーの木村くんね』
『お~本部長がめっちゃ推してる期待の新人さん、よろしくね店長の毛利です』
「よろしくお願いします、マネージャーの木村です、キャバクラの勤務経験が無いので、迷惑を掛けてしまうかも知れませんが、よろしくご指導お願いいたします」
そう挨拶をした。本部長は、相変わらず堅いね~と言い、店長と二人で苦笑いを浮かべていた。自分でも、もっと、ざっくばらんにとは、思うのだが、初対面の方だと、どうしても堅くなってしまう。
その後、少し話をした後で、店長から。
『それじゃそろそろお店に行こうか、今日は、僕の車1台で行くから、マネージャーは車を会社の駐車場に置いたままでね、帰りはここまで送るから』
『後で顔出すからね~』
事務所を出るときに、本部長からも声を掛けて貰った。
店長と二人で、車に乗りお店に向かってる最中に店長から言われた。
『うちのお店は、18時~深夜の1時までの営業だから、明日からは、17時までに、お店に入ってるようにお願いね』
「はい、わかりました」
『それと、ヘルスでもそうだったと思うけど、お店には、お店で雇ってる社員やアルバイトも居るから、彼等は、僕らよりも早くから店に来て、掃除や仕込みなんかもしてるから、僕らはあくまでも店の運営と経営が仕事だからね』
うちの会社は、幹部と幹部候補生、お店で雇う社員とアルバイト。これらの関係が、しっかりと分けられている。これは、わざとそうしている部分もあり、向上心を刺激させる為でもあるらしい。やる気さえあれば、能力さえあれば、社員やアルバイトでも本社勤務の幹部や幹部候補生になれる、そして、雑務から解放される。と言う明確な差を設けている。
『お店で働く女の子、まぁキャバ嬢だね、彼女達の送りも、店で専属の人をアルバイトとして雇ってるから、送りも無いからね』
『後は、ヘルスと違って、キャバ嬢とそこまで仲良くなる必要は無いから、まぁ仲が良くて困る事は無いけど』
この店長の言葉の意味は、ヘルスと違い、お客さんの相手をする時に、キャバ嬢は、ある程度のチームプレーと言うか、同じお客さんに他のキャバ嬢がヘルプなんかで付く事もあり、どうしても、キャバ嬢同士で仲の良い者、気が合う者で、所謂、派閥と言う物が出来てしまう。そこで、あまり仲の良くない派閥同士があって、俺らのような幹部が、片方の派閥のキャバ嬢と仲良くしているのは、あまりよろしくないらしい。そう言う意味だと教えて貰った。
そして、お店に着くと、早速店長と一緒に中に入って行く。
『おはようございま~す、今日から新しいマネージャーさんが来ます、みなさんよろしくお願いしますね』
店長に紹介された俺は、大きな声で挨拶をした。
「おはようございます、今日からお世話になります、マネージャーの木村です、よろしくお願いします」
店の中に居て、掃除や仕込みなんかをしていた男性スタッフが、手を休めて、挨拶を返してくれた。
その後、俺は店長と共に、店の裏側にある、キャバ嬢の更衣室兼男性スタッフの休憩所兼事務所と言う場所に連れて来られて、店長からメニューを渡された。
『ヘルスと違って料金も、料金が掛かる物も違うから、これしっかり読んでおいてね、後でテストするから』
そう言われ、どこでもテストするのは、同じなんだな。と、思わず少し笑みがこぼれた。
『うん?』
「あ、いえ、何でもないです、どこでもテストするのは同じなんだなぁと、ヘルスでもテストした事を思い出して」
『そっか~まっちゃんと覚えてね』
店長が、自分の仕事の為に、俺から離れてから、メニューを開いて内容を確かめる。
「う~ん……ハッキリと言うと複雑だな、でも覚えられない程でも無いな」
「Openから20時までが、1セット50分で5,000円……
20時1分から22時までが、1セット6,000円……
22時1分からlastまでが、1セット7,000円……
本指名が2,000円……場内指名が1,000円……
ドリンクがオール1,000円……フードがフルーツ盛りを抜かしオール2,000円……
フルーツ盛りが、1万円……」
ブツブツと呟くと言う俺の暗記方法を繰り返していると、俺はふとある疑問がわき、メニューをペラペラと捲ってみた。みたのだが普通はあるべき物が載ってなかった。
「店長~すみません、これ、ボトルキープの値段載ってないんですが?」
『あ~うん、わざとだから、ボトルキープの値段も覚えてもらうんだけど、1度に覚えられないかな? ってわざと載ってないメニューを使ってるんだよ、マネージャーの大好きなテストに合格したら、次に覚えてもらうから』
「テストが好きな訳じゃありませんからね」
そんなやり取りをして、二人で笑い合った。
店長も人が良さそうな人だ。これなら上司との付き合い方で悩む必要も無さそうだな。俺は、本当に恵まれてるなぁ。
その後のテストでは、もちろん合格を貰い、次はボトルキープの値段の暗記に挑戦する。
その後のボトルキープのテストにも合格を貰え、店長からも、覚えるの早いね。そう褒められた。
その後、開店時間が迫ると共に、ぞくぞくとキャバ嬢達がやって来ては、店長や俺が居るのにも構わずに私服からドレス等に着替えて行く。覗き見るような事は絶対にしなかったが、ヘルス嬢は裸になるのが仕事だから、平気だったが、キャバ嬢も平気なんだなぁ、と変なところで感心してしまった。
開店の5分程前に、店長からインカムを渡され、耳に装着して、本体をシャツの胸ポケットに入れて、店長と共に表へと出た。
『はいは~い! みんな注目~今日から新しいマネージャーの木村【さん】が来てます、新人さんなんで、あまり困らせたたりしないようにね~店長からのお願い』
そう紹介された。俺はキャバ嬢達に向け。
「今日からお店に出る事になったマネージャーの木村です、よろしくお願いします」
そう挨拶をした。したのだが、キャバ嬢達は、そんなに興味が無いのか、まちまちにパチパチと、おざなりに拍手する者や、小さく頭を下げるだけの者、完全に無視する者、様々な反応だった。
『まぁ最初はこんなもんだよ、その内みんなも慣れるから』
店長にそう耳打ちされた。
『さてと、女の子達は、みんなドレスとか着てるけど、男性スタッフは着てる服が3種類あることに気付いたかな?』
「はい」
『先ずは私服のスーツを着てる僕とマネージャー、これは本社の社員しか着れない、白のシャツにネクタイに黒のスラックス、これはお店が雇った社員の中でチーフとして働いてる人、ウイングカラー……あっ大木くんちょっといい? こんな感じのエリのシャツに、黒のリボンタイを締めて、黒のベストに黒のスラックスを着ているのが、チーフ以外の社員とアルバイトの子達、まぁその内覚えると思うけど、一応ね』
その後開店時間となり店は営業を始める。
流石に開店と同時に、お客さんが来るような事は無いようで、キャバ嬢達は携帯片手に、お客さんを呼ぶ営業活動に、男性スタッフは順番にキッチン担当の人が作る、賄いメシを食っていた。
俺は店長に言われた、フロアの横にある外から見えない小さな四角い穴が開いてるだけの空間に居た。キャッシャーボックスと呼びここで、お金の管理をするそうだ。
そこに、店長が私服スーツを着た男性を連れてやって来た。
『紹介が遅れちゃったけど、この人がもう1人のマネージャーの大村くん、こっち新人の木村くんね』
その後、マネージャー同士で挨拶を交わす、この人も人当たりは悪くなさそうで、安心した。
『それじゃ、今日は、木村マネは、ここで僕と一緒にお勉強、大村マネは、表に出ていつものように【付け回し】をよろしく』
こうして、幹部だけのとても簡単な打ち合わせも終った。
「店長、質問いいですか?」
『もちろん、何でも聞いてよ』
「さっき、何で俺の事を、木村【さん】って紹介したんです?」
『あ~もちろん、新人と言えど、本社の幹部候補生の方が、お前らより上なんだぞ! って解らせる為だよ、ナメられたら仕事やりにくくなるから、木村マネも注意してね』
なるほど、確かに女性ってそう言う一面あるよな……
「もう1つ、付け回しって何ですか?」
『あ~幹部だけがやる仕事の内の1つだよ、お客さんに対して、キャバ嬢を誰をどのお客さんに着けるか、いつ交代させるか、指名客に指名したキャバ嬢が着いているか、ヘルプが着いてどのぐらい、経つか、指名キャバ嬢をいつ戻すか、まぁ、お店の一番重要な、部分に関わる仕事だね、もちろん! 木村マネにも覚えてもらうからね』
一言、大変そうだな……俺に出来るかな? しか思えなかった。
その日は、店長が付きっきりで、一緒になって、伝票の書き方と料金の計算の仕方を、ひたすらこなした。
お客さんが来たら伝票に来た時間と人数を書き、その時間のセット料金も書く。
本指名があるなら、指名したキャバ嬢の名前も書く。
その後、男性スタッフに伝票を渡し、お客さんの元に持っていってもらう。
お客さんが帰る時に、先に伝票を持ってきて貰い、何セットいたのか、料金はいくらになるか、指名料も指名し続けたセット数も、何かドリンクやフードを頼んでた場合は、それらも、全部計算して、伝票に書き込み、男性スタッフに渡す。
お客さんが料金を席で払うと、そのまま座っていて貰い、お釣りを用意して、小さな白いお店の名前が書かれた封筒に、お釣りを入れ、お客さんに渡す。
電卓を横に置いて、ひたすらその作業を繰り返していた。
そして、慣れない仕事をミス無くこなす為に、自分でも気付かず相当、集中していたのか、気が付けば、お店に【ホタルの光り】が流れていた。
作者は、続けて2本程度の作品を書き、連続で投稿するアホです(笑)
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(セコい意図が見え見えなんだよ!ってどこからか聞こえて来た気もしますが、気のせいでしょう)