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イニシエーション

僕の新作のソード・エターナル・ワールドの第2話です!よかったら最後まで読んでください!!

 白暦537年、オリバとフィーネは15歳となり、エルベロット村の中心にある教会で成人の儀式を執り行っていた。

ゴシックな景観に白色の壁、教会の屋根は今日の青い空にも負けないほど鮮やかな青色をしている。

2年前に比べて、オリバは細身ながらも腕に筋肉がつき、随分と逞しくなった。

それに顔もキリッとして、目元には男らしい鋭さをも感じる。

フローラはその容姿から優しさが溢れ出しており、マリーゴールドのような女性らしい華やかさがある。

移りゆく季節の中で、大地に生い茂っていた草花は生え変わり、村の景色を一変させていた。

太陽の光を浴びたカモミールも眩しいほどの輝きで2人の成人を祝福しているかのようにも思えたのだった。

 「これよりオリバ・スプリングとフローラ・ノースブルクの成人の儀式を執り行う。今日成人を迎える2人にエルベロット村村長として、祝福を贈る」

 その言葉と同時に村中から集まってきた人々も2人を拍手とともに祝福したのだった。

 「こんなにも人がいる…な、なんか緊張するなぁ」

 隣にエプロンドレスを着て立っているフローラはオリバの方をそっと向き、人差し指を口に当てている。

 「しー!儀式中だよ!!…でも確かにちょっと緊張するね」

 「ご、ごめん。人と話すのは得意なんだけど、こんなにも人がいるのには慣れてなくてさぁ、儀式のことを半分忘れかけていたよ」

 こっそりとそんな会話をしている間にも、刻々と儀式は進んでいた。

両手を前に広げ、教会を訪れた者すべてに歓迎をするかのようなトレイシア像は、村長の言葉と同時に温かさを増して、その神聖なる雰囲気が場の空気を包み込んだ。

 この世界は本当に神様が存在し、石でできたそのただの像も神聖なものであることを再認識させられる出来事であった。

 「オリバ・ストリング、フローラ・ノースブルクあなた達2人の成人を祝福します。トレイシアの名のもとあなたを剣士として召命します。そして、あなたは賢術師として召命します。これからの長い旅路において、その役目を存分に果たしてください」

 その美しく透き通った声はフローラの召命された職業への驚きを打ち消すかのような安らかな声であったのだった。

 声が聞こえなくなると、トレイシア像が眩しいほどの光に包まれ、皆が瞳を閉じた。

 目を開けた皆の眼に映ったのは、柄の部分が真っ白で刃の部分は鋭い輝きを放った暗い青色の剣と、真っ白な杖の先にエメラルドのような輝きを放つ石が埋め込まれた大杖であった。

 その2本を見たオリバやフローラを含む人々は皆目を丸くした。

 なぜならば、白は神聖な色であり、その色を基調とする装備は神器と言われていたからだ。

 思わず、驚きを声にしてしまった者も数多くいた。

 その後その2本はオリバとフローラそれぞれに村長によって手渡され、無事成人の儀式は幕を閉じたのであった。



 その夜、オリバとフローラの2人の成人を祝う宴が執り行われた。

 主役であるオリバとフローラは全身を華やかな正装とドレスに身を包み、他の者たちもいつもは着ないような美しい服や装飾品を身に着けていた。

 夜も更け、少し欠けた月と星の光だけが大地を照らす村の真ん中で、大きく炎をあげる明かりが若き2人を照らしていた。

 「まさかフローラが賢術師になるなんてな。俺も含めみんなが儀式中にも関わらず驚いていたよ。まあ何と言っても平民初の賢術師だからな!昔から賢術(サークレットスペル)、得意だったもんなお前」

 「私も驚いたわ。おまけに私もオリバもまさか神器が授けてもらえるなんて。トレイシア様にも少しは期待されてるっていうことなのかしら?」

 「全くだ。何となくだけど、トレイシア様に今の教会を変えて欲しいって頼まれたんじゃないかなって思ってるんだ」

 「流石にそれは考え過ぎなんじゃない?でも確かに、聖君司祭がネフェスタリア・ノイズ様になってから聖トレイシア教会はおかしくなったとか、暴走しているだとかお父様から聞いたことがあるわ」

 「とにかく、正直俺は今の教会があまり好きじゃない。俺の剣でズバッと変えてやるさ!」

 「聖王騎士と戦うつもりなの?私との旅を酷いものにはしないでよ??」

 「そういうことになるなぁ。まぁ旅のことは旅をしながら考えればいいか。でもついに、俺たちも成人を迎えたんだな。村中のみんなが俺たちのことを祝福してくれている。成人を迎えたということは、明日にはこの村から出発しなくちゃいけないってことでもあるけれど」

 「そうね。この村で生まれ、この村で育って、ずっと暮らしてきたこのエルベロット村がこれからは故郷になると思うとちょっぴり寂しいわね…っていうかぁ、今日の私について何か言うことはないの?今日はこんなにもかわいいドレスを着て、髪形も可愛くしてもらったんだけどなぁ」

 「か、可愛いよ。そ、そんなこというから、意識しちゃったじゃないかよ」

 「なに顔赤くしてるのよぉ。ほんと、そーゆーところはオズベルお兄ちゃんとそっくりだよね」

 「別に赤くないし、お前の方が赤いんだし!それと、俺は兄ちゃんとは違うよ!!」

 2人とも顔を赤くしながらこの後も宴を楽しみ、満月も祝福するかのように輝く夜空の下、成長した2人は新たな門出を挙げたのであった。



 宴の翌日、オリバとフローラは旅の支度を整えフローラの父である村長と出発の挨拶をしていた。

 「儀式の際、トレイシア様が2人に授けられた2本の神器はオリバ君の剣は白狼(はくろう)の剣、フローラの大杖は白蛇(びゃくじゃ)の大杖だ。これからの旅路でそれぞれの武器のメモリーを開放し、真の姿を見い出すことでオリバ君達は主となることができよう」

 オリバとフローラはそれぞれの武器の名前に子供のように喜んでいた。

 その後、フローラの父は銀貨10枚と銅貨8枚を2人に渡し、トレイシア像に祈りをささげた。

 祈りに答えたかのようにトレイシア像は温かい光に包まれ、その温かさはまるで2人を祝福しているかのように見えた。

 こうして2人は生まれ育ったエルベロット村とその村人に別れを告げ、オリバはフローラとともに旅にでたのであった。



 エルベロット村を出発したその日の暮れ時。

 オリバとフローラは小さな洞窟で(たきぎ)をする準備に取り掛かっていた。

 「オリバ、こんな感じでいいかしら?」

 「組み方はバッチリ!でもこの木湿ってるな。これじゃあ・・・・・・」

 「それなら任せてよ!賢術(サークレットスペル)で!!大気を通ずる風よ、わが前にある薪を乾燥させよ『 クリエイトエアーエレメント! 』」

 「よし、次は俺だな!わが前にある薪に炎を与えよ『 ジェネレイトブレイズエレメント! 』」

 2人の賢術(サークレットスペル)(たきぎ)を完成させた。

 たった一つの光は何もない洞窟に温かさをもたらした。

 「よし!初めてにしては上出来だな!!まだ3月で結構寒かったし、これで寒さは何とかしのげそうだな」

 「そうね、温かいね。今日はとりあえず2時間おきに見張りを交代しましょ」

「そうだな。じゃあ最初は俺がするよ・・・・・・」

 こうして2人の旅の一日目は平和に夜を迎えたのであった。 

お読みいただきありがとうございました!

次話は来週の日曜日0時に投稿します!

よかったら来週も読んでください!!

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