不文律事項録
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白暦520年、聖都ゴルボノーブの聖ルクソノール大聖堂にて、ネフェスタリア・ノイズの聖君司祭戴冠式が行われていた。
トレイシア像に向かって、ネフェスタリアが宣言をした。
「わたしネフェスタリア・ノイズは聖トレイシア教会、聖君司祭としてその位を践祚致します。女神トレイシアに代わって・・・・・・」
ネフェスタリアがそう宣言すると、トレイシア像が神々しく光って、両手を広げている像はまるで祝福しているかのように、誰の眼にも映った。
その日戴冠式と同時に、他の教会の重要な役職の発表も行われた。
「聖王はドルトアリネ・フェイリオール3世。大司祭はロメネバ・ディエゴ。元老院はアドスネア・ノイズ。聖法司はベレリア・フイイバ。以上の者をこれから聖トレイシア教会の・・・・・・」
人民たちは新たな聖君司祭や聖王などを大いに祝福して戴冠式は平和に幕を閉じたのであった。
戴冠式から1週間が経ったある日。
聖君司祭ネフェスタリア・ノイズは人民の前でこれからの世界を大きく一変させる発表をしたのだ。
「女神トレイシアを信仰すべし民よ。この時をもって、不文律事項録に新たな事項を追加する。
不文律事項録 第1章、
第1項。聖トレイシア教会が指定した土地への侵入は厳禁とする。
第2項。聖職者の発言は何人たりとも脅かすことはできない。
第3項。人民による教会への反抗の一切を認めない。
以上3つの事項を最重要事項とし、これらの事項に反したものは罪人と処す」
これらの発言に対して、人民たちのうちには不満をこぼしてしまう者もいた。
そのもの達は次々に兵士によってその場で取り押さえられた。
その現状を目の当たりにした他の人民たちは黙り込むように、聖ルクソノール大聖堂の中を静粛にしたのだった。
場所はエルベロット村に移る。
2人の旅人がエルベロット村に到着し、その宿屋に宿泊をした。
宿の者に旅人がこう話したのだった。
「お姉さんよ。知ってるか?新しく聖君司祭になったネフェスタリア・ノイズ。践祚からたったの 1週間で大暴れだよ。不文律事項録に新しく3つも追加されたんだよ。その内容がよう・・・」
「どうしたんだい?そんなにも大変な内容なのかい??」
「おう…ブラックグラウンドっちゅう大地への侵入の不可だったり、聖職者たちの言う事には逆らっちゃいかんとかよ。なんていうか、聖職者が事実上最高権力者になるような発言ばかりだったんだってよ。」
「そりゃあ、エライことになってるんやねぇ」
「それだけやないぞ。これは聞いた話なんやけどなぁ。なんやら教会に対して文句を言った奴が兵士に取り押さえられて、捕まったらしいんよ。」
「まぁ。でもそれはあくまでも聞いたことなんやろ?さすがにそんなことはせんと思うがね…」
旅人から回ったこの話は、あっという間に村中に知れわたったのだった。
時は進んで白暦534年、エルベット村付近のカモミールのお花畑にて。
オリバとオズベルは剣を軽く交え、フローラとフィーネはカモミールで花飾りを作って遊んでいた。
「オリバ、随分と剣先が振るうようになったなぁ」
「まぁね。そりゃぁ兄さんが旅に出てから2年も経ったわけだし、俺だって2年間家の商売の手伝いだけをしてたわけじゃないんだからさ。でも、兄さんは相変わらず強いなぁ」
「フィーネを守るためには強くないとな!あいつは可愛いから男がたくさん寄ってくるんだよ...」
「やっぱ兄さんはフィーネ姉ちゃんの事が好きなんだな!」
「そ、そんなことねーよ!あいつは俺の幼馴染なだけであってだなぁ。い、いってみればお前とフローラみたいなもんだ!!」
2人は頬を赤くしながら、2年ぶりの再会に浸っていたのであった。
「ねぇねぇ、お姉ちゃんはオズベル兄ちゃんのことどう思ってるの?」
「オズベルのこと?どうかしら...私は好きよ。いつも旅している時に守ってくれるし、家族のことも私のことも本当に大切に思ってくれてるしね。フローラは知ってると思うけれど、普段はクールに振舞ってるつもりでも案外優しいのよ」
「うん!もちろん知ってるよ!!ずーっと4人仲良くいられたらいいね!!!」
「そうね。そーいえば、この花飾りに使ってるカモミールの花言葉を知ってる?カモミールはね。『苦難の中の力』っていう意味を持ってるの。これからどんな事があってもきっと、この花が私たちを繋いでくれるわ」
「じゃあ、この花飾りは私たちを繋ぐ御守りにして持っておきましょ!」
「そうね、そうしましょう!」
そう言ってフローラとフィーネはオリバとオズベルの花飾りも作り始めたのであった。
「そーいえばオリバ、リズの村に行くための洞窟にゴブリンが数十匹いたんだ。なんとか倒せたんだが、まさかゴブリンがいると思わなくてな。お前が旅をする2年後も洞窟には奴らがいるはずだ。だから・・・・・・」
「大丈夫だよ!俺も結構強くなったし!!」
「油断は禁物だ。ったく、お子ちゃまだなお前は」
「な、なに笑ってんだよ!ってか、俺はもう子供じゃないんだ!!」
「はいはい、わかったよ」
そう言ってまた、オズベルは頬に笑みを浮かべたのであった。
そんな会話をしているとあっという間に日は暮れ、4人はエルベロット村に帰って行ったのだった。
翌日、エルベロット村の入口門にてオリバとフローラはオズベルとフィーネの出発のお見送りをしに来ていた。
「んじゃ、オリバまたな。フィーネ行くぞ」
「ちょっと待ってオズベル!オリバ君、これ、はい!お守りに4人全員が持っておきましょ。オズベルにも、はい!」
「ありがとう、フィーネ姉ちゃん。これって、カモミールだよね?なんで?」
「私も昨日教えてもらったんだけど、カモミールの花言葉は『苦難の中の力』 なんだって。どんな困難が降りかかっても私たちを繋いでくれる。そんな願いを込めて作ったんだよ」
フローラはそう言って笑顔で3人の顔を眼に映したのであった。
「あ!あとオズベル兄ちゃん!!お姉ちゃんのことちゃんと愛してあげてね!!!」
「な、なにを言い出すんだ。べ、べつに俺は…い、いくぞ!フィーネ!!」
こうして、顔を真っ赤にしたオズベルと頬を赤くしてどこか嬉しそうなフィーネは再び旅へと出発して行ったのだった。
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