覚醒
次男の暴走が止まらない。
「アン〇ンマン!アン〇ンマン!アン〇ンマン!アン〇ンマン!アン〇ンマン!アン〇ンマン!」
意味もなく連呼。
妻を指さし、「アン〇ンマン!」
私を指さし、「アン〇ンマン!」
長男を指さし、「アン〇ンマン!」
テーブルを指さし、「アン〇ンマン!」
米粒つまんで、「アン〇ンマン!」
何でもかんでも、「アン〇ンマン!」
アン〇ンマンに目覚めた次男がところ構わず連呼する。
私と妻は次男の成長を喜んだ。
言葉の意味を若干理解していない様だけど、言葉を言えるようになってきたのだと嬉しく思った。
この時は……
ある日のスーパーでの出来事である。
「アン〇ンマン!アン〇ンマン!」
今日も次男はすこぶる快調である。
次男を微笑ましく見守る私と妻。
そんな次男がいきなり覚醒する。
「見て!! アン〇ンマン!アン〇ンマン!」
おぉ!! ちゃんと二語文になってる!!
※二語文とは、目的語と述語などの文の構成要素の2つの単語から成る文のこと
喜んだ私は、
「おぉ、そうだねそうだね! アン〇ンマンだね!」
と若干有頂天気味になってたと思う。
周りというか、次男の人差し指が指し示す方を全く見ていなかった。
私の左後方に、完全に引き攣った顔で固まるおばさんがいたのだ。
こんなこと言うのもなんだが、それはもう、見事な恰幅の方であった。
比較対象を一般的なドラム缶だとするならば、おばちゃんはそれの1.5倍はあったかと思う。
少し涼しいくらいの生鮮コーナーの一角が恐ろしいほど温度が下がった気がした。
うん、その後は何がどうなったかは割愛させて欲しい……
まぁ、簡単に言えば、私の頭は簡単に地面にくっつくということだ。
成長は確かに嬉しい。嬉しいんだけどさ……
なんかこう、今回のはないよね……っていうお話。