雑誌
最近妻は、昔から着ていた服が気に入らないと言い出すようになってきた。
まぁそれもそうだろう。
前から着ていた服なんて大概、今よりも若い時に着ていたもの。
そうなると、今の歳に合った服が欲しくなるのは当たり前。
と、言うことで服を買いに出かけようとする。
が、基本ここで邪魔が入るのが子持ち家族の宿命。
長男も次男も服になんかにまったく興味がない。
当然の如く数秒で飽き、そこらじゅうを走り回る。
で、自分が着る服を見るより子供らを見る羽目になって、疲れて帰宅というのがいつもの流れである。
大手のデパートなどであれば、私が有料の遊び場に連れて行って3人で遊ぶのだが、そう言ったところには気に入る服は少ないものらしい。
女性は難しい。
という、前置きを前提に話を始める。
上記のように、ウィンドウショッピングもままならない状態で服を見るなんてとても出来ない。
なので妻は考えた。
「ファッション雑誌買ってきて、検討つけて買いに行けばサイズだけ確認してみればいいんじゃん!」
子ども達を寝かしつけて買ってきた雑誌を広げて、吟味を始めること数分。
横でキーボードを叩きながら執筆している私の視界の端に、右手をせわしなく前後に動かしてイライラしている妻の姿が映る。
「……なぁ、なにやってんの?」
「見てよこれ! 買ってきてさっき開けたばっかりなのにもう汚れついてんだよ!?信じらんない!!」
「汚れくらいなんてことなんだろ。 印刷ミスとか? どれ、見してみ?」
「ほらここ! モデルさんの顔のとこ! これってひどくない?」
「……うん。 確かにひどいね」
「でしょ?」
「うん、君がね」
「はぁ? なんでよ!?」
ものっすごい剣幕で若干キレ加減な妻。
あなただけは味方だと思ったのに!!的な目が痛い。
でも。
だがしかし。
ここではっきり言ってやらないといけないこともあるのだ。
「あのさ、これ、モデルさんのホクロだよ………」
「え?」
「これからは、その、いろいろよく見ようね…………」
「…………はい」
妻が汚れだと思っていたのは、モデルさんのホクロでした。
今この場で妻に代わり、当時の雑誌モデルさんに謝罪を致します。
申し訳ございませんでした。