食欲
うちの次男(1歳9か月)の食欲が酷い。
朝・昼・晩の食事の準備をしていると――
「ぎぃやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
と、殺人現場かと思う程に泣き叫ぶ。
お察しの通りだとは思うが、腹が減りまくって泣いているらしい。
今切っている生肉をそのままよこせと言わんばかりに転げまわる。
普通に考えて無理だから、さすがにあげはしない。
「静粛に。 泣いてもメシは出来上がらんぞ。 むしろ効率が落ちてメシの時間が遠のくぞ」
「ぎぃやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「いいかね次男よ、パパの効率が――」
「ぎぃやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!ぎょぇぁぁぁぁぁぁ!!」
「ふむ……聞く耳持たずか。 ならばできるまでそこで泣くがいい」
「がぁぁぁぁぁぁぁぁ! えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
そんな次男を数分放置して飯を準備していたら、なにやら外から赤き光が。
はい、これもお察しの通り。
警察の方々でした。
ご近所さんが虐待か何かだと勘違いして、ありがたいことに通報してくださいました。
俺は危うく犯罪者になるところだったけどね!!
事情を説明し、警察の方も納得してくれたのですが帰り際に一言。
「お父さん、一口でもいいのでなにかあげてくださいね。 私たちの仕事も増えちゃうんで……」
ちょっとだけ疲れた声でいう警察官の方に申し訳なさを感じつつ、そっと「はい」と答えました。
用も済ませて、背中を見せて歩き去っていく警察官を見送り、そっと玄関ドアを閉めた私はポケットに入っていたチ〇ルチョコを次男の口に放り込みました。
満面の笑みでリビングに走り去っていく次男。
さすがに今では警察こそこないものの、毎日この繰り返し。
おそるべし次男。
おそるべし警官。
おそるべし食欲。
そして何より、おそるべし、お隣さん。
お節介をありがとう。