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天才魔法使いは自由気ままに旅をする  作者: 背伸びした猫
~5章~ メノード島
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獣人の少女、トランプに興じる

 リク様と別れ、数人の護衛と共に別の部屋へと招待された。部屋の一角にはリリィのためか、バイキング形式で料理が並べられていた。……ちょっと味見してきたい。だが、ルカが部屋に入る共にそこらにあった机と椅子を並べて手早くカードを配ってしまった。ふとシエラの方を見るとその手にはトランプとたれがたっぷりと掛けられた肉の乗った皿が……皿⁉



「ちょっとシエラさん、トランプ汚れちゃったらどうするの!」


「ルカ、よく考えるのじゃ。あれだけの量、どうしたって余るじゃろうし最後には冷える。ならば、早く食べてやるのが料理人のためじゃないのかや?」



 シエラの珍しい正論に驚きながら、料理をする身としては私も同意見だったので、先に昼食を取ることにした。シエラはあれだけの量、なんて言っているけれど、多分シエラのことを考慮したうえでの量だと思う。

 リク様たちは食事会を含めての会談と言っていたのであちらはあちらで何か食べていると思う。後でリク様に美味しいものがあったかどうかを聞かなければ。



「あいら、どれがおいしいの?」


「リリィは好きな料理とかある?」


「ぜんぶすき!」



 らしい反応。だけれど、そう言われてしまうと正直困る。仕方ないので、私とリリィのお皿に別々の料理を取って二人で分け合って色々なものを食べることになった。



「みんなはたべないの?」



 そうリリィが声を掛けたのは、少し離れたところで繭一つ動かさずに立ち続けている護衛として付いてきた兵士達だ。



「いえ、私たちは――」


「みんなでたべたほうがおいしいよ?」



 私の妹のアイナは周りを見て気を利かせることが多いが、リリィは天然でそれをしている。

 結局、ついてきた兵士、人間も魔族も含めて全員がともに食事をとることになった。少しギクシャクしている気がするが、長い間戦争をしてきてこれだけで済んでいるだけでもいい方だと思う。多分だけれど、陛下や魔王様の信頼する部下じゃなければこうはいかなかった気がする。そんなことを考えながらリリィと一緒に食事を楽しむ。ルカとシエラは二人でこそこそと何かを話しているので作戦会議でもしているのだと思う。

 ……やっぱりこの国の料理長は味付けの仕方がうまい。私みたいに存在するほぼすべての調味料を使えるわけでもないのに、ここまでの味を出しているのは偏に料理長の長年培ってきた知識や工夫によるものだと思う。私ももっと練習しなければ。



「あいら、おいしくない?」


「そんなことない。なんでそう思ったの?」


「むずかしそうなかおしてたから……」



 ……どういう育て方をしたらこんな風に育てるのだろう。サリィに聞いてみると、面白い話が聞けるかもしれない。今度聞いてみよう。





「さぁ、ここからが本番ね!」


「ふっふっふ。アイラよ、今回は妾たちが勝つのじゃ!」



 二人がこんなに意気込んでいる時点で嫌な予感しかしない。と、普段なら思う所だが、ここまで来ると逆に何をしてくるのか少し気になるところだ。



「ふたりはかてないよ? わたしがかつの!」



 それは知っている。ババ抜きをしても神経衰弱をしてもダウトをしても最速で手札を全て消費しきるリリィに勝てる気はしない。いや、万に一、億に一の確率でリリィと同じような手札と、順番がそろえばどうにかなるかもしれない。絶対できないと思うけど。



「それで何のゲームを――」


「「UNOじゃ!」」



 それはトランプじゃない。



「UNOのカードなんて持ってない」


「魔王様にお願いしてこっそりもらったの!」


「妾たちの活躍をもってすれば、このぐらい容易いことじゃ」



 魔王様に何故そんなくだらない願いを? そして、その話を聞いた時の魔王様はどう思ったのだろう。確か、魔族を助けたのはほぼリク様とエリンのはずだからこの二人はほぼ何もしていないはずだ。リリィの友達だから、ぐらいの感覚な気がする。

 ルカの口からルールが説明されて、間もなくゲームは開始される。

 順番は時計回りに『リリィ→ルカ→シエラ→アイラ』だ。





「うのっ!」



 そして順調にゲームは進み、リリィは何事もなかったかのようにカードが残り一枚になった時。ルカとシエラがアイコンタクトで何やら通信し始めた。あんな速度で瞬きをして疲れないのだろうか。



(シエラさん、次何の色でもいいからリバースのカード使って。リリィをスキップで飛ばすから)


(リバースのカードは持ってないのじゃ。ルカみたいに手札が豊富ではないから仕方ないのじゃ。それより妾がアイラに勝てそうなのじゃ! 黄色か数字の3を希望するのじゃ!)


(シエラさんだけずるい! 私だって勝ちたいもん!)


(そのカードの枚数でどうすると言うのじゃ! 10枚を軽く超えておるじゃろ! 大人しく妾に勝ちを譲るのじゃ! この調子ならアイラには勝てそうじゃし……)


(……)


「つぎはるかのばんだよ?」


「ちょ、ちょっと待ってね? 今考えてるから……」



 二人がどういった会話をしているのかは分からないが、なにやら争っているのは分かる。というかそのチームプレイは普通に反則だと思う。チームプレイをするかどうかは別にして。

 そして、ルカはスキップのカードを出して私に順番が回ってきた。



(ルカ、話が違うのじゃ!)


(私だって勝ちたいもん!)



 その後、リリィが普通に1番で上がり、協力しているはずの二人が争い始め、私は2番で上がりとなった。



「あいら、つぎはまだ?」


「多分もう少しかかる。あっちにデザートがあるから二人が終わるまでそっちに行く?」


「いきたい!」


「アイラ、行く前に出し終わったカード切ってくれない?」


「ルカよ、手札の枚数差を考えよ。そこまで長期戦になるわけあるまい」


「ふっふっふ。私の手札はこれだけあるんだからシエラさんにカードを引かせるぐらい簡単に出来るの」



 それはそんな自慢げに言うことではない。が、ルカの言葉も正しいのでカードを混ぜて山札の下にセットしておく。

 カードを切っている間にシエラのカードの枚数は凄い勢いで増えていった。



「ぐぬぬ……。じゃがこれで妾の手札も増えたからやり返せ――」



 そこまで言ってるかとシエラは何かに気が付いたようにピクリと止まる。



”このゲーム、手札が多い方が強い(のじゃ)!”



 シエラのように心を読めるわけではないが、何となく考えていることは伝わってきた。この二人がカードゲームで1番を取る日はまだまだ遠い……いや、もう不可能なのかもしれない。



「あいら、いこっ?」


「うん。リリィはどんなのが食べたい?」


「あまいやつがいい!」



 リリィには悪いけれど、私たちがカードゲームに再び参加する時は来ない気がする。その分、私がリリィの面倒を見なくては。私は甘いものなら何がいいだろうと考えながら、リリィと共にその場を後にした。

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