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天才魔法使いは自由気ままに旅をする  作者: 背伸びした猫
~5章~ メノード島
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天才魔法使い、首脳会談を見守る

「おぉ、リク殿、時間通りだな」


「こんな大それた集まりで時間を破ったりしませんよ」



 デルガンダ王国に魔王様とその部下数名と共に転移魔法でやって来た。無駄に大きい円卓とその周りに椅子。出入り口に兵士……はガロンさん達だ。恐らく、その近くに弟子六人が集結しているのは何かの見間違いだろう。



「初めまして、じゃな。儂はデルガンダ王国国王、トルノス・デルガンダじゃ」


「私はストビー王国王女、ラエル・ストビーです」


「俺は魔族の国を治めている、サタナ・アグレスだ」


「その妻の、サリィ・アグレスです」



 陛下の本名を久しぶりに聞いてそんな名前だっけと思ったのも、魔王様の本名を聞いてそんな名前だったんだと思ったのも内緒の話である。

 各首脳のそんな堅苦しい挨拶の中に、一人てとてとと割り込んでいく。



「そのむすめのりりぃです」



 そう言ってリリィはぺこりと頭を下げる。少しの間沈黙が降りたが、誰かがクスリと笑ったのをきっかけにみんな笑いだした。




「りりぃ、まちがえた?」


「いいえ、間違えていませんよ。改めまして、私たちの娘のリリィです」



 リリィのお陰で堅苦しい空気が少し緩んだ気がする。正直、この空気の中護衛とか言う理由で拘束されるのは正直しんどそうだなと思っていた。いや、別に嫌と言う訳ではなく。リリィにはお礼として後で遊んであげよう。トランプとは別に。



「ルカも言っとく?」


「……遠慮しときます」



 まぁ、状況を把握できていなかったリリィはともかく、ルカが同じことをすれば顔を真っ赤にして帰って来るのは見えている。

 挨拶も程々に、話が始まりそうな雰囲気だったのでリリィには悪いけれど、退室してもらおう。



「じゃあルカ、皆のことよろしく」


「まっかせてよ、お兄ちゃん!」


「……アイラ、皆のことよろしく」


「分かってる」


「ねぇ、お兄ちゃん。なんでアイラに頼み直したの? ……あれ? アイラ今分かってるって言った? 分かってるって何を?」



 そんなルカを珍しくシエラが止める。



「ルカ、早く行くのじゃ! 妾は昨夜考えた作戦を早く試したいのじゃ!」


「そ、そうだね。こんなことしてる場合じゃないよね! アイラ、今日こそ勝つんだから!」


「? ……りりぃもさくせんする~!」



 多分だけどリリィ、よく分からないままにルカとシエラに合わせたな。そういえば小さい子は大人の真似をすると聞いたことがある気がする。悪影響が無ければいいけど……。



「じゃあリク様、行ってくる」



 そう言うアイラに手を振っておく。個人的にルカとシエラの作戦、気になるな。どうせ穴だらけの作戦だろうけど。ちなみに、あちら側にはデルガンダ王国の兵士と魔王様の部下が数名ついて行っている。王の娘がいるのだから当然と言えば当然のことである。残念なことにリリィの楽しそうな顔を見て、ついて行きたそうな顔をしていたレルアさんはこちら側だ。

 そんなこんなで首脳会談は始まるのだった。





 始めは例の黒い霧の話から始まった。いや、それはいいんだけれども――。



「――とまぁ、こんな感じでして。後でギルドマスターにも報告してもらえると助かります」



 話には参加しないつもりだったのだが、そこら辺の話を全て纏めるという役にユーロン島であったこと、ガノード島であったこと、メノード島であったことの全てに関わっている僕に白羽の矢が立った。結果、デルガンダ王国でのドラゴン襲撃の件からメノード島の地下の魔道具から分かった事まで全て話すことになった。

 ……喉が渇いた。



「師匠、水です」


「あぁ、ありがとう。……何でここに居るの?」



 さも当たり前のように水を持ってきてくれたゼナに聞いてみた。



「今回の護衛として雇われまして……」



 ずいぶん昇進したなぁ。そんなことを思っていると、陛下とラエル王女から説明が入った。



「リク殿は知らないじゃろうが、彼らは今やデルガンダ王国でも随一の実力者じゃ」


「そこのアルとフェリアもストビー王国では同じような立場ですね。こちらは冒険者ですらないので護衛としてのお仕事をよく頼んでいます」



 アルとフェリアは才能があったからともかく、ゼル、ゼナ、ユニ、ヴァンの4人は恐らく努力ゆえだろう。初めて会った時が冒険者の下の方のランクだったことを考えると、その急成長ぶりがうかがえる。



「リク、弟子なんて作っていたのか」


「私も初耳ですわ」


「そう言えば言ってませんでしたね。でも、リリィに魔法教えたのと同じことをしただけですよ?」



 そう、そこから先は彼ら彼女らの努力なのだ。事実、僕は大したことをしていない。今となっては師匠という呼び名に違和感を感じるレベルである。



「リリィと言うのはサタナ殿とサリィ殿の娘さんでしたな」


「リリィちゃんは魔法の才能はどの位なんですか?」


「俺は魔法に関しては詳しくないから分からないな……」


「私も同じです。リク、リリィの魔法は凄いのですか?」


「凄いですよ。僕の知っている中では暫定1位です」



 陛下もラエル王女もかなり驚いていたが、それよりも驚いたのは弟子たちの方だった。教えて物の数秒で空中に足場を作り出し、武器に魔力を流し、魔法の威力はそこら辺の湖なら蒸発させるのはさほど難しくない。そんな話を追加でしておいた。あの年でそこまで出来るのだから、真面目に練習すればかなりのものになるだろう。でも僕個人としては、リリィにそんな機会が来ないことを祈っていたりする。多分だけど、これは魔王様とサリィさんも同意見だと思う。



「っと、話がずれてしまったな」


「話を聞く限り、私たちを襲った元凶はリントブル聖王国にあるとみて間違いなさそうですね」


「そういえばロイドがリントブル聖王国に帰ったと聞きましたが、何か連絡はないんですか?」


「リクに全面降伏する、という連絡をしてから音沙汰無しでな。それがまた不気味なのじゃ」



 確かに怖いな。

 取り敢えず、僕に全面降伏をしたという話を聞いて不思議そうな顔をしていた魔王様一行に、そこら辺の事の顛末軽く説明をしておく。



「リクから軽く話は聞いているが、そんなに戦力差があるのか?」


「儂たちは半ば金を毟り取られている状態じゃからな」


「兵力に使えるお金も限られてくるのです」


「そうか……。だが、このまま仕掛けられるばかりでは……どうにかしてその国には入れないのか?」


「身分証のようなものがいるのです。関所で作るらしいのですが、魔道具で測られた実力で扱いが決まるらしいのです」


「ただでさえ戦力のない儂らは実力者を送り込むというのは出来る限り避けたいのだ。戻ってこれる保証もないしな……」



 少しシーンとした後、サリィさんが思いついたように声を挙げる。



「リクはどうですか?」



 まぁ、来るとは思ってたけれども。僕も被害を受けていない訳ではないので、別に断る理由もないし。

 だが、そこでラエル王女が異を唱える。



「リクは近づくだけで攻撃されるのではないですか?」


「なら無理じゃな。それでは身分証とやらも作れんじゃろうし……」


「リクでも無理となると打つ手なしか……」


「いい案だと思ったんですけれどねぇ……」



 そんな感じで雰囲気はさらに暗くなる。

 ……声掛けづらいなぁ。



「えっとですね……。多分その身分証ってこれのことですよね?」



 そう言いながら僕はアイテムボックスから、いつかエリンの恐ろしい魔法を使って手に入れた紙切れを見せる。



「「「「……は?」」」」



 息ピッタリだな。……人間と魔族、案外仲良くやれるのではなかろうか。

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