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天才魔法使いは自由気ままに旅をする  作者: 背伸びした猫
~5章~ メノード島
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天才魔法使い、組織の大元を悟る

 僕らに気を遣ってか、レルアさんは他の魔族がいない部屋へ案内してから僕らに説明を始めた。ちなみに、エリンは部屋について早々見た目を変えている魔法を解いて僕の肩へと座ってきた。



「魔道具で通信が行われていた場所はこちらかと思われます」



 どうやら通信をする魔道具はどこに繋がっているか分からなかったが、近くにあった転移出来る魔道具から転移先の位置を特定したらしい。そういえば、リリィが間違えて魔道具動かして僕のところに来た時もその場所一発で分かってたっけ。そしてその位置は、壁に貼られた大きな地図に赤い丸で囲われている。

 その場所は人間が領土としているユーロン島であり、北(デルガンダ王国)、西南(ストビー王国)、東(リントブル聖王国)という分かりやすい配置のため、それが何処を指しているのかは考えるまでもなかった。



「まぁ、そうなるよね。何となく予想はついてた」


「リントブル聖王国ですか……。魔族とつながりながら勇者を擁しているとか、よく考えてみれば恐怖ですね」



 確かに。



「矛盾してるなぁ、やってることが」


「そうとも言えないのではないか? 俺としては信じたくないが、一部の魔族が人間と手を組んだとも考えられるのではないか?」



 そんな魔王様に真っ先に反論したのはエリンだ。



「その可能性は低いと思います。この街の地下で集めていたらしきあの黒い霧。十中八九デルガンダ王国を襲ったドラゴンと、ストビー王国を襲ったヒュドラの群れと関係があるでしょう。と、なればです。魔族を亡ぼすことを目的にしているのに、人間の街を襲っているのはおかしいんじゃないですか?」


「むぅ、確かにそうだな……」



 ますます目的が分からない。それが現状である。そういえば――。



「あそこにいた人たちはどうなりましたか?」



 生きてる。多分。流石に死なれるとあぁいった輩でも罪悪感を否めない。



「リク様から一撃を貰った部分は見事に粉砕骨折……というか見たことない骨の壊れ方をしてるので重症の方もいますが、命に別状はありません」



 骨の折れ方、ではなく骨の()()()と言っている部分に恐怖を感じる。少しやり過ぎたか。



「リクは気にしすぎだと思いますよ。やっていることを考えれば永眠させたとしても誰もリクを責めません」



 いや、まぁそうかもしれないけれども。兎に角、生きていてくれて何より(?)である。



「それで、そ奴らは何か言っておったのか?」


「『ほとんど溜まった。お前らはもうすでに手遅れだ。どう足掻いても俺たちの勝ちだ』そんなことを言っていた者もいました」



 発言が怖すぎるな。



「溜まった、と言うのは恐らく黒い霧のことですね。と、なると後はそれを何のために集めているか、ですね」



 そこが分からないんだよね。ただただ不気味でしかない。



「ほとんど溜まった、ということはリク達が言っていた魔物は違うのだろうな」


「そうですね。その言葉から察するにまだ出来ていない、みたいな意味でしょうし」



 結局、謎が深まるだけ深まって終わった。この辺は明日の首脳会談でも話に挙がるだろう。流石にギルドマスターはその場には呼べないから、首脳会談終わったら別口で伝えに行かなくては。

 そんなことを考えながらエリン、魔王様と共に城に帰ると、涙目のルカ、無表情のアイラ、不満そうな顔のシエラ、得意げな顔のリリィがトランプを持って円を作っており、その後ろからサリィさんが楽しげに見守っていた。

 アイラ、普段表情はあまり変わらないけれど、ルカにトランプで勝ってた時はそれなりに嬉しそうな顔してたと思うんだけど。



「何のゲームしてるんですか?」


「七並べというゲームらしいですよ」



 七並べか。丁度トランプが配り終わり、何となくみんなの手札を見て回ってみた。



「――っ!」



 僕は一瞬でアイラが無表情の理由が分かった気がした。

 七並べ。自分の手札を使って相手が出したいカードを出せないようにしたりして、邪魔をすることが出来る。確かパスは三回までだったかな。見た感じはジョーカー無しで4人だから一人13枚の手札。そこから数字の7を持っている人はそれを場に出す。それに隣接する数字から置いて行くのだ。

 そんなゲームで、ハートの7以外の1~13のカードが手札にあるリリィは反則と言ってもいい。リリィは一度もパスをしない。……というかする必要がない。予想に反することなど起こらず、普通にリリィが勝った。頭を使って二人の出したいカードを止めていたアイラが順当に2位。下の二人は言わずもがなだ。



「凄い強運だね」


「リリィの強運は凄い。神経衰弱が一回で終わるなんて思わなかった」


「えへへぇ。りく、りりぃすごい?」


「おぉ、凄いぞ」



 怖いぐらいに。というか、そんな神経衰弱面白くなさそう。



「「……おかしい(のじゃ)」」


「何が?」


「ずっとリリィちゃんが1位で」


「アイラが2位なのじゃ」



 いや、その点については全くおかしさを感じない。

 リリィに関してはポーカーフェイスとか必要ないのだろう。普通にやっていれば負ける事は無いと思う。そんな強運、僕も欲しいものである。



「りくもやる?」


「じゃあ、ちょっとだけ」



 ルカが泣いたら終わりにしよう。



「あなたも見てみたら? この子達の反応、見てるだけで面白いわよ」


「そうだな。リリィの応援でもするとしよう」



 いや、応援なんてするまでもなく、リリィが勝つ気がするんだけれども。



「エリンもやる?」


「いえ、私にカードを持つのは厳しいので見ているだけにします」


「それならお兄ちゃんの魔法でどうにかなるんじゃない?」



 そんな一言でエリンも参加することになった。一応、感情を読むようなことはしないように言っておく。

 ゲームはダウト。またルカとシエラが苦手そうなのを……。

 ルカとシエラが嘘をついたらアイラとエリンが確定で見破るので、二人のところにカードは溜まっていく。僕はと言えば、少し気になることがあって、リリィがカードを出した時にちょくちょくダウト宣言をしていた。



「ダウト」


「りりぃうそついてないよ?」ニコリ



 そんなことを言いながら出したカードをめくる。……うん、全部宣言通りの数字だ。僕が試していたことはアイラとエリンにはすぐに伝わり、二人は驚きの表情をしていた。僕も同じ顔をしていたと思う。ここまで来ると才能と言ってもいいのではないだろうか。



「「ダウト」」


「うぐっ」



 あぁ、ルカがそろそろ限界だな。トランプもこのゲームだけで終わりそうである。

 と、思ったのだが思ったよりもルカが粘ってその後も何度かゲームは続いた。結果は言うまでもなくリリィがずっと1位。2~4位を僕、アイラ、エリンで争い、5~6位をルカとシエラで争うという、何とも代り映えのしないゲーム展開が続いた。



「……ぐすん。もう一回」



 以前よりは耐えた気がするが、ルカの目から涙が零れだしたタイミングでトランプは終わった。

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