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天才魔法使いは自由気ままに旅をする  作者: 背伸びした猫
~5章~ メノード島
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天才魔法使い、魔族の港を救う

「そろそろあいつが現れそうな場所だ」


「どのぐらいの頻度で現れるんですか?」


「1年に一回あるかないかだな。もう少し向こう側に行けばうじゃうじゃいるらしいが」


「」ジュルリ



 不謹慎にもほどがある。この人たちがどれだけ迷惑していると思っているんだか。



「そうは言うが主様に会うまでの食事はほぼそ奴らだったのじゃ。仕方ないじゃろう。まあ、同じ生き物とは限らんが」


「ここはシエラのいた島とは違う」


「”郷に入れば郷に従え”って言葉もあるしねっ(ドヤァ)」


「二人の言う通りです。もう少し自重すべきだと思います」


「なんのおはなし?」


「今度話してあげるよ」


「」シュン



 こんな言葉知らないだろうと言わんばかりの、どや顔をスルーされた後の悲しそうな顔をしているルカの頭に手を置いて慰めながら、辺りを見渡す。



『主様、妾が飛んで上空から確認するというのは――』



 却下。僕らは少なくとも人間の街では良い意味でも悪い意味でも顔が広いので、白銀の鱗をしたドラゴンとかいう特徴的なものを見られたら一発でバレる。メノード島の近くで自爆した船に魔族が乗っていた事から、このぐらいは警戒してもいいだろうと思う。念のため、というやつだ。



「エリン、出てきたら威力の調整、お願いしてもいい?」


「消し炭ですか? それとも生ですか?」



 生と言うのは傷を付けないように、という意味でいいのだろうか。それにしてもやたら物騒な聞き方である。とりあえず「生で」と答えておく。



「お前ら、何の話してるんだ?」


「気にしないで下さい。それと団長さん、もしもの時のために逃げる準備をしておいてください」


「おう、任せとけ。ま、見つかった時点で逃げ切れるかどうかは五分なんだけどな。ガハハハッ」



 笑ってる場合か。普通逃げ切れない可能性もあるのか。本当にもしもの時が来たらエリンに転移魔法で港まで送ってもらおう。

 漁も命がけなんだなぁ。何となくそう呟くと、団長の「俺たちも命を貰ってるんだから当たり前だろっ」とかいう超カッコいい言葉が返ってきた。そんな言葉に感心している時、目の前に巨大な魚影が現れる。



「来たぜ! 言ってくれれば船も動かすぞ!」


「いえ、このままで大丈夫ですよ」



 エリンが準備できているのを確認してから魚影の方を見る。……やたらでかいな。いつかシエラが自分ですら倒せなかったと言う蛇のような魚ほどのサイズではないけれど、ガノード島の周りで見た魚よりは明らかにサイズが大きい。この海の向こうにはうじゃうじゃいる、か。流石のシエラでも危ないんじゃなかろうか。



『試してみてもいいんじゃよ?』



 いや、試さないけどさ。

 目の前に水しぶきが上がり、船を飲み込もうと魚が大口を開けて迫ってくる。僕らの乗っている船何て一口で飲み込めそうなサイズだ。多分、無傷で倒すとその後で僕らがお腹の中に納まる。なので、僕は人差し指を立ててからシエラに作戦の変更を申し立てる。



「エリン、やっぱり消し炭の方で」


「了解です」


「待つのじゃ主様! それは勿体な――」



 シエラが何か言おうとしていた気がするが、聞こえなかったことにしておこう。

 僕は指を振り下ろす。魚の頭上に現れた雷はエリンによって作られた魔法陣を通って直撃する。水しぶきや暴風がこちらへとやってきたが、魔法で全て防ぐ。が、辺りの波が揺れるのは予想外だったので船が大きく揺れる。アイラが口を手で押えて具合悪そうに少し離れたところに行ったが、僕は見なかったことにした。船に乗ったあたりから少し顔色が悪かったので今ので限界を越えたのだろう。後で口をゆすぐ水でも魔法で出してあげよう。目の前の魚は勿論、跡形もなくなっていた。



「すごい! おしろでもこんなまほうおしえてくれなかったのに!」



 お城とか言うと正体がばれるので止めて欲しい。でも後ろの団長さんたちを見ると今はそれどころではなさそうなので大丈夫だとは思うけど。



「いい感じに練習の成果が出てますね。今のは私の魔法陣がなくてもこのあたりの魚が浮いて来るぐらいで収まったと思います」



 いい感じとは一体。



「初めのころに比べればという意味です。今のペースで練習すれば数十年後には完璧になるんじゃないですか? それまでは私が面倒を見てあげます」



 まるで親のような言い草に違和感を感じつつ、口を開けて動かなくなっている団長の元へと近づく。あの揺れの中微動だにせず立ち尽くしていたのだから大したものである。船に乗り慣れているとそう言ったスキルでも身に着くのだろうか……。



「団長さん、帰りましょうか」


「あ、あぁ」



 船はゆっくりとUターンし、港へと進みだした。



「おなかすいたー」


「妾もお腹空いたのじゃ」


「帰ったらご飯にしようか」



 その言葉に団長さんがすぐに反応する。



「それなら奢らせてくれ。こんだけのことしてもらったんだからな。腹いっぱい食っていいぞ」


「それは妾もかや⁉」


「勿論だ。遠慮は必要ないぜ」



 シエラから目を離さないようにしないと……。そんなことを考えながら団長さんにコップを一つ貰って、魔法で水を入れてからアイラの元へと向かった。



「大丈夫?」


「ありがとう、リク様。でも、もうかなり楽になった」



 顔色が悪い……というか白い。確か船酔いって流れてる景色より、船の前方の景色を見るのがいいんだっけ。少しふらついているアイラを支えながら前の景色が見える位置へと連れて行く。



「あれ? アイラ船苦手だったの?」


「話には聞いてたけど、まさか船酔いがここまでのものだとは思わなかった」


「それは人によると思うけどね」


「妾の背中は大丈夫なのに船が無理とは」


「それは大丈夫。危なくなったら寝るようにしてるから」



 どうやらアイラの昼寝はそういう目的もあったらしい。



「リントブル聖王国から逃げるときは少し危なかった」



 そういえば顔色悪かったな。



「あんまり無理しなくていいからね」



 どうせシエラの背中が汚れるだけだし。



「主様よ、妾にも気を遣ってほしいのじゃが」


「いつも遣ってるよ? あんまり食べ過ぎないように監視役付けるとか」



 その後、シエラからの不満を聞きながら海のそよ風に吹かれていると港に着いた。



「さあ、俺のおごりだ。好きなものを好きなだけ食べていいぞ?」


「主様にも一度言われてみたいものじゃ」


「シエラが少食になったら考える」



 そういえば、海に出れなくなってたらしいけど食べ物あるのだろうか。と、思ったがどうやらあの巨大な魚が出たのは今朝のことらしく、今朝、例の魚が現れる前に漁に出ていた船もあるため大丈夫とのこと。ただ、今朝捕れたばかりの魚はほとんど無いとか。漁の途中で現れて一斉に逃げてきたから捕れた魚もそう多くはないらしい。



「本当に好きなだけ食べていいのかや?」


「おうよっ! 海の男に二言はねぇ」



 カッコいい。カッコいいけど見た目に騙されてそういうことを言うのは良くない。



「いや、僕お金なら結構持ってるので大丈夫ですよ」



 この島の物価は知らないが、魔王様の城の周りを散策した限りでは大して問題ないと思われる。



「心配すんなって。こんな女性がお腹いっぱいに食べるぐらい問題ねぇよ」



~30分後~

「問題……ねぇ……よ……」



 少しふらついている団長さんは近くの一緒に麻雀をしていたメンバーのところへと向かう。



「ちょっと金貸してくれねぇか」


「いや、あの様子なら俺のを貸しても足りないっすよ」



 結局、港を出るときに団長さんにこっそりお金を返そうとしたら受け取ってくれなかったので、エリンに頼んで近くにあった団長さんの荷物の中に転移魔法でお金を入れた袋を移動させたのはここだけの話である。

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