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天才魔法使いは自由気ままに旅をする  作者: 背伸びした猫
~4章~ ストビー王国
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天才魔法使い、国の危機に招集される

「すみません、すぐ着替えるので待ってもらえますか?」


「ど、どうぞ」



 なんか随分と恥ずかしい思いをした気がする。まあいい。僕はいつもの服装に着替えて再び扉を開けた。



「それで何か御用ですか?」


「リクに助けてもらいたいのです。どうかお願いします」



 王女様が力強く答え、頭を下げる。



「あの、取り敢えず頭を上げてくれませんか? 話は聞きますので」



 僕はここで気が付いた。あ、これ面倒な事だなと。



「では付いて来てもらえますか?」


「どこにですか?」


「城の東門です」



 ……なぜに東門?



「魔物の大群が攻めてきていまして……」



 思ったよりも緊急事態だった。



「どうしたのですか?」



 欠伸をしながらポケットからエリンが顔を出す。



「なんか魔物が攻めてきたんだって」


「スタンピートですか?」


「そんな次元ではありません! 大量のヒュドラがこちらへ向かっているのです!」



 ああ、あの美味しい魔物か。そう思ったが不謹慎な気がしたので口には出さなかった。





 途中でアイラやルカ、シエラと合流し、東門へついた僕は自然と感想が口に出た。



「きっも」



 四本足で首が9つもある魔物がうじゃうじゃいてこちらに走ってきているのだ。こういう感想になるのも仕方ないと思う。幸い足は速くないようだが、ここにたどり着くのに10分もかからないだろう。



「見てるだけで気持ち悪い」


「主様、半分は食料にすることをお勧めするのじゃ」


「なんだろう、お兄ちゃんといるからかな。全く危機感を感じられない」


「ヒュドラがこんな大量にいるところ、初めて見ました」



 みんなは至って冷静だが、流れで付いて来てしまったアイナは怯えていた。



「お、お姉ちゃん……」


「あのぐらいなら大丈夫」



 そんな僕らを見てラエル王女が呆れ顔で声を掛けてくる。



「よくそんな落ち着いていられますね」



 そんなこと言われましても。

 

「リク、何か嫌な気配がします」


「嫌な気配?」



 そう言われて見てみるが、離れているせいなのか、見た目には影響がないのかは分からないが、今は判断できない。あとで考えよう。

 ちなみに、ギルドマスターは冒険者たちを招集して何やら話し込んでいるようである。そこからは声が聞こえてくる。



「Sランク冒険者である俺がいるんだ! 俺についてこい! お前らを英雄にしてやる!」


「「「「「「「ウオオォォォォォォォォ」」」」」」」



 最初に突っかかってきた人Sランク冒険者だったんだ。



「これ僕要らなくない?」


「い、いえ。彼はデミラウスさんは私があなた達の助力を求めると言ったとたんにやる気になりまして」



 デミラウスというのは恐らく先程のSランク冒険者のことだろう。何故冒険者というのはこうも張り合いたがるのだろう。関所にいた彼らも同じ感じだった気がする。さらに言えばデルガンダ王国でもすごく突っかかられた気がする。



「リク様、街の人が怯えてるから早く終わらした方がいいと思う」



 百里ある。



「エリン、魔法の加減お願いしてもいい?」


「任せてください」


「あまり傷をつけないようにするのじゃぞ」



 シエラ、その考えは捨ててくれないかな。王女の呆れ顔が元に戻らなくなりそうだから。

 僕は手の平を天に向けた。



「あ? あいつ何やってんだ?」



 やめろデミ何とか。なんか恥ずかしいだろ。



「――っ!」



 あれ、王女様どうしたんだろう? 突然恐怖の表情を浮かべて膝をついてしまった。スカート汚れますよ?



「リク様から魔力の扱い教えてもらった人はデルガンダ王国でもこんな感じだった」



 ああ、そういえば弟子たちの修行を城で手伝ってた時に僕が使った魔法の感知が出来たとかチラッと言ってた気がする。



「リク、私の方は準備できました」


「了解」



 さて、恥ずかしいしさっさと終わらそう。そう思って手を振り下ろした。













 あれ? 散らされた?



「リク様?」


「お兄ちゃん?」


「主様?」


「散らされましたね」


「う~ん、魔力を集めるところまでは出来たんだけど……」



 さて、先程と相も変わらずヒュドラの行進は止まらず、足音が……というか地響きが伝わるぐらには近づいて来ていた。



「「「散らされた?」」」


「何て言うのかな、魔力を集めるところまでは出来たんだけど、雷に変えようとした瞬間に魔力が周りに散らされたというか」


「何が原因かは分かりませんが、今回は魔法が使えなさそうですね」



 そんな会話を不思議そうな顔で聞いていたラエル王女とギルドマスターの顔色が青ざめる。



「では……魔法が一切使えないのですか?」


「一応他の人にも試してみて欲しいんですけど」


「冒険者たちに声を掛けてみます」



 結果は予想通り魔法は一切使えなかった。それを知った人々が一斉に逃げ始める。が、それをSランク冒険者が止めた。



「お前ら、今から逃げて間に合うと思ってるのか?」



 もうちょっと止め方考えろ。

 まあいいや。取り敢えずこっちで解決策を探そう。周りがかなり騒がしい気がするが、真面目な話、今はそれどころではない。ラエル王女とギルドマスターは皆を抑えるために必死である。



「エリン、精霊魔法は使える?」


「……使えますね。特に問題はありません」


「まぁ、エリンがここにいられる時点で……」


「私がここに居るための魔力はリクの魔力をそのままもらっていますからね」



 うん? ということは属性に変換しなければ問題ないのか? 取り敢えず刀を抜いて魔力を込めてみる。すると、刀はいつも通り青い光を纏った。



「シエラは?」



 シエラは手の平に炎を作って見せる。



「妾も問題ないのじゃ」



 ま、シエラのはそもそも魔法じゃないしね。

 僕たちのやり取りを見ていた人々が騒ぎ始める。



「なんだ今の青い光は……」


「いま魔法を使わなかったか?」


「今あの精霊喋ってたような……」



 皆を止めようと必死になっていたラエル王女が僕らの方へ近づいてきた。



「リク、どうにか出来るのですか?」


「出来る限りは頑張ります。なのでその門の内側にいて欲しいんですが……」


「リク様、応援してる」


「その3人で倒せないことはないと思うけどね」



 二人の信頼は随分と厚いな。心配している素振りが全くない。



「……分かりました。では皆さん、ここは彼らを信じて街へ戻ってください」





 一部を除いて街へと戻る。僕らの境にあるのは格子状の門だ。閉じた門の向こうから元気のいい声が聞こえる。



「お兄ちゃ~ん」



 格子の向こうルカが手を振っている。……なんか檻の向こうから手を振られている感覚だ。というかルカ以外にもたくさんの人がいる。見世物じゃないんだけどなあ。まあ、自分たちの街の危機だし仕方なくはあるけれど。



「それで、何か策はあるのか?」



 デミラウスから声が掛かる。街に戻らなかった一部というのは近接戦を得意とする。要は魔法無しで戦える手練れの兵士や冒険者である。



「無いですよ。正面から突っ込むだけです」


「お姫様の護衛をしている割にはおつむの方は弱いんだな。あれだけの数、策もなしにこの人数でどうにかできる訳ないだろう」



 勝算はある……と言っても信じてもらえないだろうから、反論はしないでおこう。デミラウスの言葉に後ろにいた皆が少しの間呆れ顔を浮かべてからまるで死を覚悟しているかのような表情になる。

 だが、そんな静まり返った場面でもエリンの煽りスキルは遠慮なく発揮される。



「相手の実力も図れない者が冒険者トップとは呆れたものです」


「ま、所詮雑魚ということじゃろうな。相手が主様では仕方ないことではあるのじゃが」



 シエラの言葉も上乗せされ、デミラウスの顔に少々怒りの表情が見えた気がするが、ヒュドラがかなり近づいてきたのを見て気持ちを切り替えたようだ。

 僕は刀を抜いて魔力を込める。



「武器使うのも久しぶりだな」


「普通、魔法使いはそんなもの持ちませんよ」


「主様じゃからなあ」



 さてと。まだ朝ご飯も食べてないし、さっさと終わらせますか。

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