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天才魔法使いは自由気ままに旅をする  作者: 背伸びした猫
~4章~ ストビー王国
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天才魔法使い、王女と出会う

「ちょっとお姉ちゃんやめてよ! 恥ずかしいでしょ!」


「ごめんごめん、つい……」



 奥から王女とよく似たエルフが現れる。腰まで髪を伸ばしているの王女に対し、この子の髪は肩より少し下ぐらいだ。

 お姉ちゃんってことは妹か。何というか、ルカも同じようなこと言ってた気がする。



「久しぶり、ルカ。元気そうね」


「リエルは相変わらず大変そうだね」


「その……マルクス様もお元気ですか?」


「はい。あに……お兄様も元気ですよ」



 人前ではお兄様って呼んでるんだ。

 ラエル王女の妹のリエルの見た目はルカと変わらない。……年齢も一緒なんだろうか。

 そんなことを考えていると、どこからともなく2体の精霊が現れ、エリンの前へと飛んでいく。



「久しぶりですね、元気にしていましたか?」


「「」」コクコクコク



 なるほど、この子がラエル王女の執念に折れたって言う精霊か。



「精霊が……喋った……」



 ラエル王女のキラキラ……というかギラギラした視線に体を震わせたエリンは、肩から降りて僕の背後に回る。あぁ、これは距離捕りたくなるわな。



「お姉ちゃん、自己紹介まだしてないよ」


「おっと、そうでしたね。私はラエル。この国の王女をしています。こちらは妹の――」


「リエルです」



 そう言ってリエルが頭をぺこりと下げる。



「ラエル王女が精霊と契約をしているのは聞きましたが、リエル様もだったのですね」


「お姉ちゃんが森に行くときについて行ったらたまたま精霊に会って仲良くなったんです」


「私は100年かけてやっとなのにリエルだけずるいです」


「そんなこと言われても……」



 その理由はなんとなくわかる気がする。

 そういえばデルガンダ王国からここまでかかるし何で僕のこと知ってるんだろう。まだ例のドラゴン騒ぎからそんなに日は立ってないと思うけど。伝わるとしたらシエラの半分ぐらいの速さは必要だと思う。



「お兄ちゃん、国同士もギルドと同じようにすぐにやり取りすることが出来るんだよ? 自由にいつでもできるって訳じゃないけど」



 僕の心を読んでの説明ありがとう。ま、ギルドがやってるわけだし国のトップがやっててもおかしくないか。



「それにルカの手紙で随分詳しく話を聞いていますよ。攫われたところを助けられたとか、詠唱もせずに魔法を使うとか、とにかくあなたのことを褒めちぎって――」


「わーーー!」



 なるほど、そのタイミングでの手紙か。あれから数か月は経ってるし納得。



「そ・れ・よ・り・も! 少々私とお話しませんか? してくれますよね?」



 勢いが凄い。鼻息が荒い。顔が近い。正直言って怖い。普通に街に見に行きたいんですけど。さっきからシエラが暇そうにしてるし。というか暇すぎて喋ってないな。



「す、すみません、今日は旅で疲れているので明日ということにしても……」


「そ、そうですね。すみません、我を忘れていました」



 この人なんというか、知識欲が凄い。話には聞いてたけどこれほどまでとは。



「宿はお決めですか?」


「い、いえ。まだですけど……」


「では是非ここをお使いください」



 この世界の王族は自分の身を案じるということを知っているのだろうか。



「いえ、それは流石に。人のこと信頼しすぎると後で痛い目見ることもあるんですよ?」


「あなたたちは大丈夫ですよ。精霊が付いている時点で悪意がないのは分かりますし、あの娘大好きの王とシスコンの王子がルカちゃんを託している時点で十分信頼できますよ。それに友好国の姫がいる訳ですし」


「ラエル王女、私のことちゃん付けで呼ぶのやめてって言ってるじゃないですか!」



 精霊便利だなぁ。精霊とシエラが協力したら隠し事とか絶対できないな。

 あ、そうだ。



「ラエル王女、これデルガンダ王国の陛下からの手紙です」


「ありがとうございます」



 ラエル王女はその場で一読して顔を上げた。



「あなた達を出来る限り丁寧にもてなして欲しいとの内容でした。ルカちゃんがいる時点でそうすることは確定しているのですが」



 もてなすって何されるんだろう。別にそこまでしてもらわなくても……。



「お兄ちゃんは何も考えずデルガンダ王国と同じ生活してればいいってことだよ」



 うん、何となく理解した。

 ラエル王女が何かを思い出したように手をたたく。



「リク達のことはこの城の人間しか知らないので街に出ても騒がれることはないと思いますよ」


「それは助かります」



 本当に感謝してもし足りないぐらい感謝してます。



「リク様はどこに行ってもVIP待遇」


「お兄ちゃんだからね」


「リクは何かしたのですか?」コテンッ


「時間があるときにゆっくり話すよ」



 そういえばエリンには何も言ってなかったな。



「ところでお昼はもう食べましたか?」



 今まで暇そうで口を開かなかったシエラの熱い眼差しを受けた僕に断るという選択肢はなかった。





「あの森で精霊に会うなんて運がいいんですね」


「運がいい?」


「えぇ。あの森に精霊がいるのは精霊が住んでいると言われる精霊界とこちらの世界の境界が曖昧だからと言われています」



 へぇ。精霊があの森にはいれても遠くへはいけないのはそれが理由かな?



「私は100年間通い詰めましたが会えたのは月に2、3回程度です。ほとんど見かけないので精霊の数自体が少ないのではと言われています。それに森のどこにいるかも定かではないので苦労しました」



 いや、僕の記憶ではかなりの数いたんですけど。なんなら向こうから案内してくれたまである。

 僕はふとエリンに会った場所を思い出す。もしかしてあの辺が境界の曖昧な部分だったりするんだろうか。



「シエラ、ちゃんと食べる」


「シエラさんが食べないなんて珍しいね」


「緑色過ぎるのじゃ……」



 ほぼ緑の食事にシエラはご不満の様子。ちゃんと野菜も食べないといけな……ドラゴンってそういうの関係あるんだろうか。

 ちなみに、エリンとラエル王女の精霊は僕のポケットの中に入っていった。その時にちらりと見えた僕のポケットの中にはピンクを基調とした洒落た部屋が出来上がっていた。



「それはすみません。ラエル王女の姉や私がエルフなのでここの料理人はお肉を作った料理はあまり知らないんです」


「いえ、気にしないでください」



 シエラの人間に対する態度はどうにかならないものか。いや、今回はエルフだけども。せめてお偉いさんの前では少しは気を使ってほしいものである。



「なぜ妾がそんなことをせねばならんのだ」



 そうだよね。何となく結果は察してた。

 そんな会話をしていると、ラエル王女がパンッパンッ、と手を二回叩く。すると、近くに控えていたメイドたちが食器を片付け、代わりにデザートを持ってくる。



「ならデザートはどうですか?」



 おぉ。これはなかなか……。



「」クイクイッ



 服を引っ張られ、そちらを見るとエリンが顔を出していた。



「リク、その魔法陣の上に私が言ったものを一つずつ乗せてくれませんか?」


「それはいいけど、どうするの?」


「こちらへと送られてくるようにしているので」



 あぁ、なるほど。僕の前の机の上に現れた魔法陣の上に指示されたものを置くと、スッと消えていく。それを数回繰り返すと、エリンは満足して戻っていった。そういえば甘いものが欲しいとか言ってたっけ。



「「こんな一瞬で転移魔法を!?」」



 他に使ってる人を見たことがないから基準が分からない。

 それにしてもこの姉妹息ピッタリだな。そんなことを考えながら僕はデザートを味わった。

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