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天才魔法使いは自由気ままに旅をする  作者: 背伸びした猫
~4章~ ストビー王国
46/120

天才魔法使い、精霊に導かれる

2018/8/24:サブタイトルを変更しました

「うわっ!」


「お兄ちゃん?」


「リク様?」


「虫でもおったのかえ?」



 虫なら僕の視界に入る前に多分燃え尽きている。



「徹底し過ぎじゃろ。それで何が――」


「お兄ちゃん、何この生き物」


「可愛い」



 緑を基調とした服を身にまとった手のひらに乗りそうなサイズの何かは無言で僕の服の袖を引っ張り、ある方向を指さす。



「主様。その羽虫から今すぐ離れるのじゃ」


「羽虫? あぁ、これが精霊か」



 そんなシエラに全身を使ったジェスチャーで反抗の意を伝えている。何というか……可愛い。

 というかどこに連れて行こうとしてるんだろう。



「取り敢えずついて行ってみない? 面白そうだし」


「私も行ってみたい!」


「私も行く」


「ちょっと待て、飯が先じゃろう」



 まぁ、少しではあるけど準備しちゃってるし先にご飯にしようか。



「ねぇ、ちょっと待っててもらってもいい?」



 精霊にそう語りかけるとしょんぼりして小さく頷いた後、近くで体育座りをした。

 ……何この罪悪感。





「お兄ちゃん、なんか食べ辛いんだけど……」



 さっきから精霊がこちらを凝視しているのだ。結構大事な用事だったのかな? すぐにでも行った方が良かったのだろうか。



「気にすることないと思うのじゃ」



 いや、そうは言うけれども。



「アイラ、何しとるのじゃ?」


「ご飯ちょっと分けてくる」


「それなら妾が――」


「駄目」



 シエラ、アイラに対してはなんか弱くない? まぁいいや。それより精霊ってご飯食べるのだろうか。

 アイラが小皿を差し出すと、恐る恐る口に運んで、見ただけで美味しかったのが分かるような動きをした後、森の奥の方へものすごい速度で飛んで行ってしまった。



「あれ、何か用があったんじゃないのかな?」


「どうせ大した用ではなかったのじゃろう」



 う~ん、ちょっと行ってみたかったんだけどな。残念。



「ごめん、リク様」


「いや、いいよ。なんか喜んでたみたいだし」


「あの子一口しか食べてないけど、残りはどうするつもりだったん……だろ……う……」



 どうしたんだろうと思い、ルカの向いている方を見ると、100に届くか届かないかという数の精霊がこちらに向かって来ていた。



「ん?」



 さっきの一匹が僕らの食べている料理の方を指でさして何かを伝えようと必死に動き回る。



「リク様、料理が食べたいんだと思う」


「」コクコクコクコクコクコク



 頷くのはっや。



「アイラ、お願いできる?」


「分かった」


「ちょっと待て、妾の分が無くなったらどうするのじゃ」


「シエラの分追加で作ってあげるから大人しくしてて」


「し、仕方ないのぅ」



 ちょろすぎる。アイラ、シエラの扱い方上手いな。それにしてもかなりの量食べてたはずなんだけどまだ食べるのか。





 そこら辺にかなりの数の精霊が満足そうな顔で横になっている。この子達何しに僕のところに来たんだろう。



「リク様、この子達どうする?」


「どうするって言ってもなぁ。ねぇ、さっきどこに連れて行こうとしてたの?」



 僕の膝の上で気持ちよさそうに横になっている精霊に声を掛けると、ハッとした表情で僕の服を引っ張り先程と同じ方向に連れて行こうとする。

 あぁ、目的忘れてたんだね。



「お兄ちゃん、精霊に連れていかれるような何かしたの?」


「いや、全然身に覚えがないよ。というか会うの今回が初めてのはずなんだけど」



 精霊が首を横にブンブンと振る。いや、本当に会ったの今回が初めてのはずなんだけど。

 後片付けを済ました後、僕らは精霊たちについて行くことにした。



「主様、本当に行くのかえ?」


「ほら、行かないと何か可哀そうだし。あと面白そうだし」


「お兄ちゃん、面白そうが理由の9割占めてない?」



 ……まぁ、否定はしないでおこう。それにしても。



「なんか段々増えてない?」


「凄い見られてるよね」


「なんか恥ずかしい」


「こんなにうじゃうじゃいたら気持ち悪いのじゃ」



 ドラゴンうじゃうじゃよりは何倍もマシだと思うんだけど。木々の間から興味ありげに顔を覗かせていたり、なぜか草に身を隠しながら(隠れ切れてない)こちらを観察していたりといろいろなところから視線を感じる。





「主様、少し、休まんか」


「シエラ、だらしない」


「私も、休みたい」



 かなり奥まで来たのだが、精霊たちが足を止める様子は一向に見られない。日は完全に落ち、月明かりがわずかに差し込んでいる。というか月明かりが僅かにしか差し込まないぐらい木々が生い茂っているので僕の魔法が無かったら暗くてほとんど見えないと思う。

 みんなも息が切れ切れだし、少し休むことにした。



「後どの位で着くの?」



 案内してくれている精霊に聞いてみると手でこのぐらいと作ってくれるが、まったく分からない。もうここまできたら案内されているというより森で迷わせようとしていると言われた方がしっくりくる。



「この森焼いたら見やすくなるのではないのか?」



 精霊たちが一斉に怒っているような仕草をし、シエラの周りをブンブンと飛び回る。



「や、やめんか! 羽虫のくせに生意気じゃぞ!」



 シエラの言葉に反応して数が増える。シエラがうっとうしそうに手を振るが、精霊たちが華麗に躱して、馬鹿にするようにくすくすと笑う。



「こうなったらいっそのこと……」


「はい、ストップ」



 シエラが火を出そうとしていたのでその手を掴んで止める。



「な、何をするのじゃ!」


「いいから大人しくしてて」


「ぐぬぅ」


「ねぇ、シエラさん。飛んで行ったら速いんじゃない?」



 確かに。と、思ったが精霊たちが首を横に振る。



「羽虫共は身を隠すためにおかしな結界を張っておるらしくてな。多分上空からじゃ入れないとかじゃろう」



 その言葉に精霊たちが頷く。



「何で知ってるの?」


「精霊に聞いたことがあるのじゃ」


「え? でも精霊って喋らないよね?」



 今まで僕が見てきた精霊で喋った者はいない。



「そういえば何でこいつら喋らんのじゃろうな。興味がなさ過ぎて全く気にならんかったのじゃ」



 どんだけ嫌いなんだよ。もう少し興味持て。



「リク様、私はもう大丈夫」


「私も十分休んだよ!」


「じゃ、そろそろ行こうか」


「さっさと行ってさっさと帰るのじゃ」





「眠いのじゃが?」



 シエラの言い方が妙に威圧的だが気にしないでおこう。



「後どのぐらいか分かる?」



 これじゃわからないだろうと思いながらも何となしに聞いてみたが、今度は親指と人差し指であとちょっと、みたいな表現をしてくれたのでかなり目的地に近いことが分かった。



「もう少しらしい」


「……もう少し具体的に分からんのかや?」



 精霊がう~んと悩む仕草をした後、先程と同じように親指と人差し指を近づける。さっきと同じじゃない?



「……もうよい」



 シエラに呆れられてなぜか勝ち誇ったような表情を見せる。精霊はよく分からない。



「リク様、あれ」



 アイラが指さした先には暗い森の中でなぜか光を発している不思議な空間があった。

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