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天才魔法使いは自由気ままに旅をする  作者: 背伸びした猫
~3章~ ガノード島
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天才魔法使い、賢者の力を知る

「う~ん」


「お兄ちゃん、どうしたの?」


「いや、魔力どこから来てるんだろうと思って」



 魔法陣に魔力が通っているのは分かるのだが、魔力が地下深くからきているのだ。……なんだこれ?



「精霊術は大地の力を使うって聞いたことある」


「あやつらは自分の力だけでは何も出来んのじゃ」



 いや、もう精霊が嫌いなのは分かったから普通に話してくれないかな。



「それで、なんでこんなところにこんなものが?」


「20年? ぐらい前にこのあたりの食料が少なくなってきてな。人間のいる街でも襲おうかと考えておったときじゃったかな」



 普通に人類滅亡の危機じゃん。ルカとアイラが固まっちゃうからそういう話をサラッとするのはやめていただきたい。

 というかシエラの感覚で20年前ってあてにしていいのだろうか。



「割と最近じゃから多分あっておるのじゃ」



 20年前を最近とか言える当たりが不安なんだけどな。



「この周辺の魔獣やらなんやらを引き寄せる魔法陣を描いてやるとある賢者がやってきたのじゃ」


「凄いな。わざわざこんなところまで」


「主様ほどではないにしても、それなりの魔法の使い手じゃったぞ」



 要は賢者が来てこの辺りに化け物が集まるような魔方陣を描きました。人間の危機は救われました。めでたしめでたし、ということか。



「ということはどっちって言ってたうちの一つが――」


「あの老人のことじゃ」


「じゃあもう一つは?」


「妾が小さい頃親に言われたのじゃ」


「その割に普通に人の街襲おうとしていたのか……」


「いや、ずいぶん時間たったしいいかなと思ったのじゃ」



 いいかなって……。そんな軽い理由で約束を破られては親も報われないな。

 そういえばシエラの両親ってどんなだったんだろう?



「ドラゴンは番がいなくても卵を産めるから親は一人じゃぞ?」



 シエラに会って一番驚いた気がする。ドラゴンの生態とか初めて聞いたんだけど。待って、ドラゴンに雄と雌がないってこと? じゃあシエラって何?



「いや、人間で言う雌雄は性格である程度分けられると思うぞ?」



 ドラゴンの生態系難しい。人間と違い過ぎて理解がついて行かない。これ以上考えるのは止めよう。頭が痛くなりそう。話を聞いていたアイラは驚きの表情を浮かべ、ルカは頭の上にはてなマークが浮かびそうな顔をしている。うん、ちょっとルカには難しかったね。



「お兄ちゃん、何?」


「別に」



 さて、それはともかくこれからどうしようか。一泊だけして島を出るというのも……いや、この島でやることないし別にいいか。



「シエラはこの島にもう少し居たいとかない?」


「何じゃその質問は?」


「いや、僕ら人間は故郷に愛着持ってたりするからシエラはどうなのかなって」


「ホームシック?」


「ちょっと待って。なんでみんなこっち見るの?」



 ルカがホームシックという言葉を理解している。成長してくれたようで何よりだ。



「……お兄ちゃん、今私のこと馬鹿にした?」


「そ、そんなことないよ」



 もういやだこの超能力集団。



「それでシエラ、どう?」


「どうせ暇じゃし、別に問題ないのじゃ」


「シエラさんは愛着とかないの?」


「別にないぞ? 人間の街があんなに楽しいと知っていたら、もっと早く行っていたのじゃ」



 それは人間の全滅を示すのかな?



「生贄に料理とかいいかもしれんのじゃ」



 そんな生贄提示されたら料理人の胃が持たないと思う。



「あの料理はお兄ちゃんが一緒にいたから出てきた」


「国家予算使ってたしねー」


「よし、戻るぞ主様!」


「じゃあお昼食べたら出ようか。その前にシエラ、一仕事お願いしていい?」


「なんじゃ?」





「これだけ捕ればいいかな」



 僕らは今、シエラの背中に乗って海上にいる。



『こんなに魚を捕ってどうするのじゃ?』


「城の料理人に渡したら美味しいの出来るかなと思ってさ」



 そのために、目についた魚を片っ端から狩ってアイテムボックスに放り込んでいる。



『妾はまだまだ行けるぞ?』



 さっきまで面倒くさそうにしていたのに、目的を聞いたらこの変わりようである。



「いやいやいや、お兄ちゃん捕りすぎだから」


「こんなサイズの魚、お城の料理人でも難しいと思う」



 この間のように素材の切断は僕がやろう。火は僕とシエラで提供するということで。



『火加減は任せるのじゃ』


「私は料理を手伝う」


「私は……え、あれ?」


「……味見役?」


「私だけ出来ることないんだね。……ぐすん」



 ……マルクス王子に一緒に遊んでもらうように頼んでおこう。彼なら快諾してくれる、というか自分から進んで受けてくれそうだ。



「さて、デルガンダ王国に戻ろうか」


『もう魚はいいのかや?』


「だから取り過ぎって言ってるじゃん!」


「腕が鳴る」



 アイラの目がギラリと光る。まあ、やる気になってくれるのなら文句はないんだけれども。



「シエラは今日一日飛びっぱなしだけど大丈夫?」


『問題ないのじゃ』


「ガノード島に一泊二日の旅行感覚でいけるの多分お兄ちゃんだけだよ」


「普通に行こうとしたら往復でも一週間以上かかる」



 まぁ、シエラがいたからね。



「主様の場合、妾がおらんでも行けたじゃろう」



 いや、まぁそうなんだけどさ。



「それより王都に着くの夜になりそうだけど迷惑じゃないかな?」


「お父さんたちはいつでも歓迎するって言ってたよ?」


「いやいや、ほら、常識ってあるじゃん?」



 日が落ちてから城にドラゴンに乗って乗り込むってどう考えても迷惑だ。というかそこだけ切り取ったらまるで侵略のようにも聞こえる。



『主様に常識なんてものがあったなんて知らなかったのじゃ』


「お兄ちゃんって変なところでそういうの気にするよね」


「リク様の感覚は常人には分からない」



 皆さん酷くないですかね。僕だって常識の一つや二つ弁えている。



『むしろ一つや二つしか弁えておらんのではないか?』



 従魔って主人に対してもっと優しく接してくれるものだったと思うんだけども。



「リク様の人柄がそうしてる」


「僕そんな変な人柄してる?」


「人柄はともかく普通ではないよね、いろいろと」



 もう駄目だ。何を話しても僕がおかしいという方向にしか行かない気がする。



『いや、事実主様はおかしいと思うのじゃ』


「もういいから早く島に戻ってお昼ご飯にしよう」


『逃げたのじゃ』


「逃げた」


「逃げたね」



 くっ。ここに僕の味方はいないのか。





「お刺身とか大丈夫? 毒とか」


「お城の料理長が毒検知の魔道具くれたから大丈夫」


「確かそれお城に二つしかなかったはずなんだけど……」



 凄い高級品じゃん! 普通に一国の秘宝レベルなんじゃ……。



「妾は齧ったことがあるから料理してあるやつがいいのじゃが……」


「これ付けて食べたら美味しい」


「噛み付いたのを生で食べたことにするのはおかしいんじゃないかな」



 ルカに激しく同意だ。大体噛みついただけで『あ、こいつ美味しい奴だ』とはならないだろう。



「大体わかるぞ?」



 ……それ本気で言ってる?



「それよりもこれを付けるだけでこんなに旨くなるとは驚きなのじゃ」


「ご飯に乗せても美味しいよ?」


「ほう、どれどれ」



 相変わらずよく食べるなぁ。食べる方もそうだけどそれだけ作ってる方も凄いな。なんかアイラの負担が重そうで申し訳ないんだけど。



「リク様、私なら大丈夫」



 なんか心読まれるのに慣れ始めてる自分がいる。

 そんな事実に恐怖しながら僕はアイラの作ってくれたお昼ご飯を平らげた。

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