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天才魔法使いは自由気ままに旅をする  作者: 背伸びした猫
~2章~ デルガンダ王国
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天才魔法使い、慰労される

 しまった。ちょっと威力間違えたな。予想以上の自然破壊をしてしまった。陛下にはあとで謝っておこう。そんなことを考えながら、ふと隣を見る。

 エンシェントドラゴンを見てつい吹き出してしまった。ドラゴンってあんな頭の悪そうな顔できるんだな。僕はトントンと足場を飛んでみんなの元へと戻った。



「リク様、おかえり」


「ただいま」



 さてと、旅に戻りますか。みんな無事だったしこれで解決。



「じゃあ陛下、僕らはこれで」



 僕が後ろを向こうとしたとき後ろから待ったの声が掛かる。



「ちょっと待ってくれリク殿、礼ぐらいさせてはくれんか」


「でもこの国にお兄ちゃんが欲しそうなものとか無いよね」


「それでも礼の一つもしないと僕らの立場がないからな」



 じゃあ、お言葉に甘えておこうかな。



「師匠はさすがです、ね」


「俺たちが死にかけてたのが馬鹿馬鹿しくなるよな」



 僕に向かって小さい子供がテトテトと走ってくる。



「ししょーすごーい」


「ありがとーししょー」



 ……師匠?



「私たちがいた孤児院の子供です」


「僕らが師匠って呼んでたたんでみんなそう覚えちゃったみたいで……」


「いや、別にいいよ」



 なんか足元に子供が集まってきた。が、すぐに震えだす。後ろを見るとエンシェントドラゴンがこちらへと来ていた。



『面白そうだからしばらくお主について行くことにしよう』


「いえ、いいです、マジで」



 次の街では目立たないようにしようと思ってるのにこんなの付いてきたら目立ってしょうがないし。というか、ついて来るだけでなんか面倒なことになりそう。



「それよりみんなが怖がってるから離れてくんない?」


『それよりじゃと? 妾が頭を下げているのにその言いようはなんじゃ』



 頭を下げるってどういう意味か知ってる?



「ちょっと待てリク。もしかしてドラゴンと会話してるのか?」


「え、えぇ。旅に連れて行けと言ってます」



 周りを見ると皆が不思議そうな顔をでこちらを見ている。これじゃ一人で喋ってる変な奴じゃん。



「ねぇ、僕だけに聞こえるようにするのやめてくんない? 頭がおかしいみたいに思われるから」


『妾から見ても十分お主はおかしいから今更変わらんと思うがのう』



 失礼な奴だな。そんなことを考えているとエンシェントドラゴンが少し何かを考えるような仕草をして、体が光だした。光が収まるとそこには肩よりも少し下まで伸びた銀髪に銀色の瞳をした20歳くらいの女の子が現れた。局部は白銀の鱗で覆われている。



「どうじゃ? これなら目立たんし声も皆に聞こえるぞ」



 これで文句はないだろうとばかりにこちらを見てくる。確かにこれで服着たら目立たなさそう。まぁ、それでも断るんだが。周りにいる人たちは驚きの表情を浮かべたまま固まっている。



「えっ? お兄ちゃんを? それなら……」



 ルカが一人でに話し出す。エンシェントドラゴンか。僕も傍から見たらこんな感じだったのか。なんか恥ずかしくなってきた。



「お主、ガノード島の近くにいる魚とか食べてみたくないか? 妾なら美味しいやつのところに連れていけるのじゃが」


「よし、同行を許可しよう」



 何人かが呆れ顔をこちらに向けている。そんな顔でこちらを見るのは止めて欲しい。うん、とりあえず王都に戻ろうか。





「あの、ここまでしてもらわなくても……」


「仕事ですから」



 陛下が課してくれている部屋の扉を開けるとそこにはメイド服の女の子が立っていた。僕が歩くと後ろから付いてきて、扉の前まで行くと僕が通る前に扉を開けてくれる。何この無駄なVIP待遇。



「あ! やっと来た!」


「ごめんごめん」


「リク様は別に遅れてない」



 扉を開けると、そこには大量の食事が並べられた机がいくつもあり、沢山の人がいる。陛下の話では例のドラゴンとの戦いに参加した人たちをねぎらうためのものらしいので、ほとんどが冒険者や城の兵士達だ。それ以外にもあの場にいた非戦闘員だった人もいる。マルクス王子の話ではポーションを運ぶのを手伝ってくれたらしい。よくあんな危ないところに行こうと思えたな。



主様(あるじさま)よ、どうじゃこの服装は?」



 エンシェントドラゴンが服を見せてくれる。なんか楽しそうだな。特別高いものではなく平民が来ているようなものだ。あんまり高価なものを身に着けていると街で賊に狙われることもあるらしいので、ルカもアイラも僕といるときはそこら辺のお店で売っているものを着ている。

 いや、そこじゃないね。今僕のこと主様って言わなかった?



「その方がいろいろと都合がいいらしいのじゃ。お主なら主としても文句はないしの」


「お兄ちゃんの従魔ってことにしといた方が何かと便利だって、お父さんが教えてくれたの!」



 まぁ、あんまりこの国に迷惑をかけるのもあれだし、陛下がそう言うのならそういうことにしておこう。



「静粛に!」



 城の大臣のその言葉で会場が一気に静まり返る。その後陛下が感謝の言葉を手短に述べ、食事会の開始となった。



「リク様、これ」


「あぁ、ありがとう」



 アイラが適当に料理をよそって持ってきてくれた。なんか年下の女の子にこんなことさせるのって罪悪感感じるな。



「私はリク様の奴隷だから気にしなくていい」



 ねぇ、僕の心の声聞こえてるの? 僕の表情を見てアイラが得意げな表情を見せる。3人と一緒に旅して、2人に心読まれるってどうなんだろう。



「師匠、改めてありがとうございました」


「どういたしまして」


「師匠の魔法、凄かった、です」



 多少手加減を失敗したから素直に感謝を受け取りづらい。誰も気づかないだろうし口には出さないけど。



「主様よ、本気だったらどのくらいの威力が出るんじゃ?」


「どうだろう? やったことないから分かんないな」


「あれ全力じゃなかったのかよ」


「師匠の全力の魔法いつか見ていたいです」


「リク様がそんなことしたらどこかの国が滅びそう」



 そんなことする気はないけど、今更信じてもらえないだろうし否定はしないでおこう。



「そういえばお兄ちゃん、エンシェントドラゴンさんってすごく呼びにくいんだけどなんかいい名前ない?」


「それもそうだな。皆なんかない?」


「エント」


「エンドラ」


「ドン」


「シェンシェン」


「トド」


「エンゴン」



 これはひどい。この人数いてこれですか。誰がどの案を出したかは個人の名誉のために伏せておくとしよう。



「……主様が決めてくれんか」



 僕もそんな自信ないんだけどなぁ。



「……シエラとか?」


「ふむ、悪くないな。それでよいのじゃ」



 お気に召したようで何よりだ。そんな話をしていると少し離れたところから怒号が聞こえてくる。うわぁ、殴り合いの喧嘩してるよ。そこへ陛下が止めにはい……なんで木剣渡してるんですか? 陛下が持ってきた木剣を見て、喧嘩をしていた二人がにやりと笑う。陛下と一緒にいた大臣は頭を抱えている。



「「うらぁ~」」



 周りには人だかりができ、食事の乗った机は離れたところに避難させられていた。陛下、楽しそうだなぁ。その隣にいるマルクス王子は二人の戦いを真剣な表情で眺めていた。



「あー、ししょーだー」


「ほんとだー」



 その騒ぎに興味を示さなかった孤児院の子供たちがこっちにやってくる。めっちゃ服汚れてるな。どんな食べ方したんだろう。そんなことを考えながら魔法で服を奇麗にしてあげた。



「「ありがとー」」


「どういたしまして」


「相変わらず師匠の魔法は便利ですね」


「ししょーすごーい」


「すごーい」



 この子達、何も考えずに言ってやしないだろうか。まあ、子供だしこんなもの……か?



「人間がそんな便利な魔法を使えるとは驚きじゃ」


「リク様の魔法はほとんどリク様しか使えないものばかり」


「シエラさん、お兄ちゃんを基準にしちゃダメだよ?」



 そんなこんなで賑やかで騒がしい食事会も、陛下の言葉で終わりとなった。陛下によれば明日一日はいて欲しいらしいので、旅の再開は明後日からかな。

皆様のお陰で総合評価100pt達成いたしました!

ブックマーク、評価をしてくださった方、ありがとうございます!

これからも執筆頑張りますので、よろしくお願いします!

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