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天才魔法使いは自由気ままに旅をする  作者: 背伸びした猫
~2章~ デルガンダ王国
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天才魔法使い、窮地に駆け付ける

今回からリク視点に戻ります。

『お主、何者じゃ?』


「話なら後にしてほしいいんだけど」



 全力で移動しているつもりなのだが、流石ドラゴン、普通について来る。一匹だけだが。



「先に言っておくけど、操られてる仲間を殺されても文句言わないでよ」


『言う訳なかろう。操られるようなやつら同胞ですらないわ』



 ドラゴンの世界ってあっさりしてんだなぁ。慈悲なんてなさそう。



「見えた」


『ちょっと待て、お主、何故この距離で見える』



 話なら後にしてほしいって言ってるのに。人の話はきちんと聞いてほしい。

 僕の視線の先には数匹のドラゴンと戦っているデルガンダの兵士の姿が……あれ? それだけじゃないような気がする。

 遠くには数千匹のドラゴンが待機している。……様子見? というか陛下と王子まで一緒に戦ってるんだけど。取り敢えずそこら辺のドラゴンに雷を落とす。なかなかグロッキーな状態の人がかなりの数いたので、ついでのそこら辺の人みんなを魔法で治しとこう。



「師匠!」



 ヴァンがこちらに手を振っている。他の3人も一緒にいた。あぁ、ギルドに登録してるとこういう時、動かされるんだっけ。ということはデルガンダの兵士と一緒に戦ってるのは冒険者か。それに勇者もいる。それに後ろの方にいるのは……どう見ても戦闘要員じゃないよね。何してんの?

 それにしても王都に入り込んでいなくてよかった。これならそんなに難しくない。



「お父さん!」



 着地したとたんにルカが飛び出し、陛下に抱き着く。余程不安だったのだろう。



「陛下、撤退指示をお願いします」


「わ、分かった」



 陛下の指示が辺りに響き渡る。



「ねぇ、あれ勝てるの?」


『無理じゃな。あの数は予想外じゃ。ここは引いて、時間をかけて少しずつ相手の数を減らしていくのが賢明じゃ』



 図体のわりにやることが狡猾だ。

 まぁ、黒い霧を纏ったドラゴンとやらがかなりの数いる。遠くに浮いているドラゴンを全部合わせたら五千はくだらないだろう。さすがにエンシェントドラゴンと言えどもこれほどの数の利にはかなわないか。逃げるのも無理はないな。



『逃げるのではない。戦略的撤退じゃ。妾はか弱き人間と違って頭が切れるのじゃ』



 そういえば頭の中読まれるんだった。



「リ、リク……、そのドラゴンは」


「多分エンシェントドラゴンじゃないですかね、意思疎通できてますし」



 ドラゴンと交戦していたみんなと撤退しながら、エンシェントドラゴンから聞いた話をみんなに伝えた。

 話し終わった後、何となしに気になったことを聞いてみた。



「そういえば人間とは相互不可侵の約束をしていたんじゃないの?」


『それはどっちの話じゃ?』



 どっち? いや、今それはどうでもいいか。というか。



「何でついて来てんの?」


『お主、あれと戦うつもりじゃろ? 見学しようかと思ってな。他の人間には興味がないが、お主は面白そうなのじゃ』



 面白そうってなんだよ、一国の危機だぞ。



「それはいいけど、他の人たちが怖がってるからもう少し離れててくれない?」



 ここに居るのは戦闘ができる人間だけではないのだ。エンシェントドラゴンを見て震えている者も少なくない。まぁ、戦闘ができる人間もほとんどが怯えているのだが。



『なぜ人間如きのために妾がそのようなことをしなければならんのだ』



 もう嫌だこのドラゴン。さっさとどっかに逃げろよ。





 王都の門のすぐ外に全員で撤退してきた。僕らと陛下、マルクス王子、ギルドマスター、勇者を戦闘していた兵士や冒険者が輪になって囲っている。その中にはなぜかいる非戦闘要員までいる。そして、更にその外側にドラゴンはさらにその周りにいる。ギルドマスターは古傷で戦うことはできないらしく、戦闘の指揮をしていたらしい。あんな圧倒的な戦力を前に殊勝なことだ。



「で、リク殿は共に戦ってくれるのかの」


「えぇ、是非」



 陛下の質問に答えると、周りの人間が沸く。



「あいつが協力するならもしかしたら……」


「でもあの数だぞ。勇者でさえ一人で一匹がやっとなんだ」


「馬鹿、知らないのか。あいつ勇者より強いんだぞ」



 勇者って噂通り一人でドラゴンを相手取れる実力はあったのか。



『おい、奴らが来たぞ』



 向こうから大量のドラゴンが迫ってくる。



「陛下、一つよろしいですか?」


「なんじゃ?」


「自然豊かな森と国、どちらが大事ですか?」


「勿論国じゃ」



 一応許可は取った。これで文句を言われることはないはず。というか、陛下ならこんなことで文句なんて言わない気もするが。まぁ、保険ということで。



「リク、何をするつもりだ」


「皆さんはここに居てください」



 適当に足場を作ってドラゴンが飛んでいるのより少し高い位置で止まり、そこから飛んできているドラゴンの方に向かって進んでいく。何かの間違いで王都の門付近にいる人たちを巻き込んじゃうとあれだし。……よし、ここからならよく見えるし、これだけ離れていれば多少失敗しても大丈夫。

 そんな感じで準備をしていると、エンシェントドラゴンが僕の方へ飛んできた。



『お主、何をするつもりじゃ』


「あれを倒すつもりだけど」


『本気で言っておるのか』



 僕は冗談でこんなことは言わない。それより、ドラゴンが状況に合わせて行動しているということは、どこかで見ている誰かが指示を出しているのだろう。



「近くにドラゴンを操ってた奴がいるか分かる?」


『いや、恐らくおらんな。見た感じ向こうに人の気配は感じんのじゃ』



 ということは遠くから監視できる魔法……ドラゴンの操作も遠隔でできるってことか。……頭が痛くなってきた。まぁ、その辺は僕の仕事じゃないし。管轄の人に任せよう。というか、ドラゴンってべん……じゃなくて凄いな。無駄に長生きしてないね。



『お主今、便利って言おうとしたじゃろ』



 気持ち悪いから勝手に心の中を読むのは止めて欲しいものだ。というか、人の心の声が聞こえるなら、四六時中うるさそう。



『興味もない人間の心なぞわざわざ覗かんのじゃ』



 なんか人間であることを否定された気がする。



『言ったじゃろ、お主には興味があると。面白そうなら妾の下僕にしてやってもよいのじゃぞ』



 口に出さずに会話する違和感がすごい。あとドラゴンの下僕とか却下だ。そんなことしたら毎日が暇すぎて死にそう。ガノード島には何もないって聞いたことあるし。でも、珍しい果物とかあるかも。今度行ってみようかな。

 さて、無駄口もほどほどにして、そろそろいい頃合いかな。僕は魔法の手加減が苦手なのだ。せめて被害を抑えるためにある程度は近づいてもらいたかったのだ。

 僕は右の()()()を天に向けた。





 リクが手を挙げた瞬間、何人かの背筋を冷たいものが走った。



「へ、陛下! どうなされたのですか!」



 動きが固まっているのはリクから魔力の使い方を学んだ者だけだ。



「なんだ……これは……」



 魔力は感知しようとして初めて感知できる。その存在すら知らない人間には感知ができない。出来たところで、ちょっとした違和感程度だ。だから他の者には、彼らがなぜ青ざめているのかが分からなかった。ドラゴンが迫ってきてはいるが、それならもっと早いタイミングから姿が見えていた。明らかに不自然なタイミングだ。



「これ、師匠……だよね?」


「師匠の方から感じるし、多分そうだね……」


「凄い……何これ……」


「師匠、俺たちの前では本気なんて出してなかったんだな……」



 リクから魔法を学んだ者は今まで以上に自分の中の魔力量、どの程度の魔法を使うのにどのくらいの魔力を使うのかが、今までより正確に分かるようになっていた。リクが勇者を倒した魔法を見ていた城の魔導士の何人かは、数十人がかりなら出来ないこともないと思っていた。そして、リクの実力もその程度だと思い込んでいた。



「お兄……ちゃん……」


「リク様……すごい……」



 今、自分の外側の魔力を感知できるのはリクだけのはずだった。だが、今この瞬間、リクに魔法を教わったもの全員が感知出来ていた。



「あり……得ない……」



 城の魔導士のトップですら怖気づく。有り得ない量の魔力が有り得ない速さで上空に集まっている。自分の中の魔力の量が、魔法を使うときに使う魔力の量が、今までより明確に分かるようになったからこそ分かる。原理は魔力を感知させるためにリクが魔力を体に流したのと同じ。だが、明らかにレベルが違った。

 リクが手振り下ろした瞬間、目を開けれていられないほどの閃光が辺りを包み込み、それに遅れて耳を劈くほどの轟音がやってくる。さらに遅れて、立っているのがやっとの暴風がやってきた。

 そして、目を開けた者は唖然とした。目の前には焦げ付いた地面以外に何もない空間が広がっていた。その広さは王都全体の広さとさほど変わらない。その場にいる者にはただただ立ち尽くすことしかできなかった。

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