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天才魔法使いは自由気ままに旅をする  作者: 背伸びした猫
~2章~ デルガンダ王国
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天才魔法使い、勇者に丸投げする

 この世界には大きく分けて3つの島がある。一つは僕らがいるこの島、『ユーロン島』。北にデルガンダ王国、島の中心からやや南西にストビー王国、東にリンドブル聖王国がある。ちなみに、ストビー王国の更に南西の海に面した部分には大きな森があって精霊がいるとかいないとか。

 この島の東側には魔王率いる魔人族がいると言われている、『メノーダ島』がある。この島は僕らがいる島の面積の3分の1程度しかないらしい。たまに思うのだが、何故人類未踏の地であるはずの『メノーダ島』の情報があるのだろう。

 『メノーダ島』と最も近いリンドブル聖王国は、かなりの軍事力を持っているらしい。魔人族のいる島と最も近いのだから、当然と言えば当然だが。

 それはさておき、重要なのはここからだ。残り一つが僕らがいる『ユーロン島』の北西にある『メノーダ島』の更に半分くらいの大きさの『ガノード島』だ。この島にはドラゴンが生息していて、時々デルガンダ王国の近くにドラゴンがやってくることはあるそうなのだが……。



「あそこには人間の言葉を話せると言われているエンシェントドラゴンがおってな。一昔前の勇者が互いの大陸に干渉しないことを約束したと言われておる」


「その話はかなり有名だ。この国の住人なら大半が知っているような話だな」



 へぇ。そんな立派な勇者もいるんだねぇ。



「お兄ちゃんは田舎者だから知らないだろうけどね」


「余計なお世話だ」


「リク様、そんなお子様の言うことなんて聞く必要ない」



 アイラの方が年下だよね?



「アイラの方が小さいじゃない!」


「私、中身ならルカより大人な自信がある」


「そんなことないもん! ねっ、お兄ちゃん!」



 僕は咄嗟に目線を逸らした。



「何よその反応!」



 ルカが頬を膨らませてこちらを睨む。

 話がそれた。本題に戻ろう。



「たまたま竜がこちらに来ただけの可能性は?」


「私は若い竜がこちらへ来たという話は聞いたことがあるが、成竜が来たというの初めて聞いた。明らかに今までとは違うケースだな」



 マルクス王子って結構できるやつっぽいんだよね。顔も2枚目って感じだし。シスコンの部分を除けば理想的な国の王子って感じがする。



「そこが問題なのじゃ。成竜はエンシェントドラゴンには逆らわんと聞いておる。『ガノード島』で何かあったと考えるのが筋じゃろう」



 エンシェントドラゴン、美味しいのかな……。いや、会話ができる相手を食べるのは無しだな。特に理由ないけど、なんとなく嫌だ。



「それで、僕に頼みというのは?」


「島に行けとまでは言わんから、近くに行って様子を見てきてほしい」


「幸いこの国には勇者(笑)がいるそうですしそちらに頼んでみてはいかがですか?」



 適材適所という言葉がある。こういうのは勇者の仕事だ。少なくとも、冒険者ですらないただの旅人がするような仕事ではない。



「おぉ、そうじゃったな。今この国にいる勇者は、なりはあれでも実力はあるからの。お主にも引けを取らんじゃろうて」



 なりはあれでもって……。



「そんなことあるわけないじゃない! その勇者ならお兄ちゃんが一撃で」



 ルカの言葉を遮る。



「それは一度お会いしてみたいものです」



 やめろルカ。せっかくいい感じに話が進もうとしているのに邪魔をするんじゃない。

 勇者に任せるということで話が付き、僕らは陛下のもとへご飯を食べに向かった。ドラゴンの解体は明日の夕方までに終わるという話だったので、後日また来ることになった。



「リク様、あの勇者で大丈夫でしょうか」


「さぁ?」


「なんで断ったんだ?」


「2、3日はこの街を観光すると決めているので」



 マルクス王子の質問に真顔で答えたら呆れた顔をされた。



「それに勇者はドラゴンを倒せるくらいには強いってギルドマスターも言っていましたし、大丈夫だと思いますよ」


「お兄ちゃんが出るような問題じゃないってことね!」



 いや、そういうつもりはないんだが。



「まぁ、どのみち妹の恩人に関係のないこの国のために命を賭けろ、なんて僕には言えないしな。多分ギルドに登録していたら無理やりにでも行くことになっただろうが」



 その話マジですか。断っといてよかった。ギルドに登録とか僕からすれば百害あって一利なしだな。というかマルクス王子、負けてから異様に丸くなった気が……。





「そのような事があったとは……」


「お兄ちゃんのせいで霞んじゃってるけど、あの人も一応勇者らしいから大丈夫じゃないかな」



 今僕らは王宮の料理に舌鼓を打ちながら陛下にギルドで聞いた出来事を報告していた。というか一応って……。まぁ、否定はしないんだけどさ。今更だが陛下の名前はトルノス・デルガンダというらしい。名乗るのを忘れていたと頭を下げられたが、ルカのせいということにしてその場を流した。ルカが何か言っていた気がするが覚えていない。



「父上、あの後勇者はどうなったのですか?」



 そういえば気絶したのを放置してきたんだっけ。



「あやつなら鍛冶屋に行ったはずじゃよ。武具がボロボロになって使い物にならなくなったと嘆いておったわい」



 ふぉっふぉっふぉと笑う陛下。僕の頭の中に一つの不安が浮かぶ。



「武具の修理代請求されたりしませんかね?」


「リク様、あの勇者ならお金なんて払わないと思う。ギルドでもそうだったし」


「あぁ、確かに」


「何の話?」



 コテンと首をかしげるルカにアイラが説明する。



「私の思ってた勇者と違う」


「リク様も同じようなこと言ってた」



 そうだよね。誰も勇者と聞いてあんなの想像しないよね。

 そんな話をしていると、夕食を食べ終わった僕らの前にデザートが運ばれてきた。……プリン? 食べてみると僕の知っているプリンの味とは明らかに違ったものだった。



「どう? お兄ちゃん。美味しいでしょ」


「すごい美味しい……。初めて食べた味だ」


「リク様とドラゴンの肉を食べた時以来の衝撃」


「ドラゴンの肉を食べた……だと?」



 マルクス王子が驚きの声をあげる。



「あれも美味しかったなぁ」


「そういえばお兄ちゃん、ドラゴンのお肉全部貰ってたよね?」


「初めてドラゴンの肉を食べた時にそうするって決めてた」



 そのくらいの衝撃はある味だった。マルクス王子が何かを考えている顔をしている。……あげませんよ?



「リク、その肉を城の料理人に料理させたら美味いと思わないか?」


「「」」ゴクリ



 ……こいつ、天才か。結局、明日の晩御飯もここで食べることになってしまった。ドラゴンの解体が終わるのが明日の夕方なので少し遅めの夕食になってしまうかもしれないが、陛下も快く了承してくれた。というか、少し嬉しそうにしていた気がする。



「お兄ちゃん、お願いがあるんだけど」


「何?」



 ルカがいつになく真剣な表情で話しかけてくる。面倒ごとは勘弁してほしいんですけど。



「私にも魔法を教えてください!」


「リク様の弟子が増えた」


「増えた? リク、弟子なんていたのか?」


「はい。実は……」



 ドラゴンに追いかけられていた4人が弟子になって修行をしたことを、簡潔に話した。



「ほう。ではリク殿の弟子たちも詠唱無しで魔法を使えるのか?」


「えぇ、本人たちによるとまだ実用レベルではないそうですが。この街で冒険者として頑張るらしいですよ」


「リク殿の弟子か。それは今後が楽しみじゃのう。何かあった時は後ろ盾になろう」



 一国の王を後ろ盾になってくれる冒険者……。こんな冒険者、他にいるだろうか。



「ねぇ、お兄ちゃん。私の話忘れてない?」



 ルカが不安そうな声を出す。



「忘れてないよ。ちゃんと教えてあげるから」


「よしっ」



 ルカが両手のこぶしを握ってガッツポーズを決める。



「リク、私にも教えてもらえないだろうか。話によれば私の剣を切ったのもその修行でできるようになるのだろ? 妹に劣る兄というのもみっともないしな」


「魔力の扱いには個人差があるので必ずできるようになるとは言えませんが、教えるのは構いませんよ」



 一人二人に教えるのならそんなに時間もかからないと思う。4人組を見ている限り、魔力の感知さえできれば僕が手伝うことなんてほとんど無かったし。やったことと言えば魔法の的を作ったぐらい?

 アイラに宿を取りに行こうという話をしたら陛下に滞在中はここで泊まればいいと言われた。断るのも失礼かと思い、僕らは陛下のお言葉に甘えることにした。

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