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天才魔法使いは自由気ままに旅をする  作者: 背伸びした猫
~7章~ これからの世界
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ストビー王国

「主様よ、暇なのじゃが」


「いや、そんなこといわれても……」



 そんなことを言われても、今僕らにはやることがない。ゼハルを倒した後、シエラが宴会がどうのと言っていたがそれは開催されていない。各国王によると、全ての国を奪還したらそう言った事をする予定らしい。なので、宴会はそこまで持ち越しとなった。そのせいで少しばかりシエラがご機嫌斜めだ。

 その気晴らしと言うか、暇つぶしというか。今僕らはガノード島上空にいる。正確にはガノード島があった場所だ。最後にはなった全力の雷魔法によって大地ごと粉々になってしまった。粉々と言っても海から出ていた部分と少しだけなのだが。

 聞いた話によるとここ周辺は特殊な気候らしく、この場所にしか自生していない植物などもあった。デルガンダ王国に移植したこともあったが、話を聞くと思うようには育っていないらしい。その結果どうすることになったかと言えば――。



「りくー、これでどーおー?」


「流石リリィ。どこかのお姫様とは格が違う」


「うっ。私だって……」



 リントブル聖王国へと必要な物資や人を送り終えたリリィは僕が破壊した島の修復……というか島の作成を少しずつしている。砂場に山を作る要領で作っているので、浅瀬がほとんどなくなることになる。まあ、それはそれで近くに大きな魚が住み着いてドラゴンからすれば良いことだったりするかもしれないので気にしていないけど。

 リリィはこちらを見て褒めて欲しそうな表情をしているが、正直なところ出来た島は元のサイズとは程遠い。リリィの魔力が切れたら後は僕がやっておこう。取り敢えずリリィを撫でておく。



「えへへぇ」



 リリィは満足すると再び元の作業へと戻った。

 島を作り終えたらデルガンダ王国で自生を試みていた植物をこちらへと持ってきて植える予定だ。元には戻せないが、少しは前みたいな島に出来ると思う。



「リク、魔法陣だけでも張っておきませんか?」


「そうだね」



 それはかつて僕の祖父がエリンと共に作った魔法陣。その効果に加えて闇霧無効化の効果も付加すると言うものだ。ちなみに、リントブル聖王国の城の地下。ゼハルが封印されていた所にも闇霧無効化の魔法陣を描いてある。まだ完全に晴れていない闇霧を気にせずにリントブル聖王国に物資や人を送り込めたのはその恩恵だったりする。

 リリィの作り出した小さな島の中心にドーム状の建物を作り上げ、中に魔法陣を描いた。



「これりりぃもできるようになる?」


「う~ん、どうかな?」



 と、言いつつも無理だろうなと思っている。そもそも闇霧無効化の魔法陣だってエリンだから作れた訳だし。



「主様よ、そろそろあちらも終わったのではないか?」


「それは流石に早すぎると思うけど……」



 というか朝に出てたし。流石に半日じゃ終わらない。というか持って行った食料からして絶対に数日じゃ終わらない。



「もう少し待てないのですか?」


「シエラはせっかち」


「もう少し落ち着きがあった方がいいよね、シエラさんって」


「うぐっ……」


「……シエラさん? なんで今私の言葉にだけ反応したの?」



 シエラの言うあちらというのはストビー王国から魔物を排除するために向かった兵士たちの事だ。言ってくれれば転移魔法で移動させるのに、わざわざリントブル聖王国から徒歩で移動している。闇霧を纏った魔物を国の中だけでなく、道中に現れたのもついでにせん滅するつもりとのこと。別に時間が無い訳ではなかったので、エリンの力を借りて人数分の闇霧無効化の装備はそろえてある。流石に武器までは作れなかったけど。

 そして、その指揮を執っているのがラエル王女だったりする。ストビー王国の魔物を殲滅したらエリンの魔法陣で国全体の闇霧を無効化。それと同時にストビー王国の国民を送って国の復興という手筈だ。ある程度それが落ち着いたら次はストビー王国とリントブル聖王国を拠点にしてデルガンダ王国の奪還だ。

 よってラエル王女から精霊を通じてストビー王国奪還の連絡があるまで僕らは暇なのである。



~数週間後~

 リリィが自分でやり遂げたいと言うので結局僕はそれを見守るだけで手を貸さなかった。そんなこんなで少しずつガノード島が再生していく中、ようやくラエル王女の精霊から連絡が来た。何かあったらいけないので、不満そうなアイラ、ルカ、リリィを護衛役のシエラと共にメノード島に置いてエリンと二人でストビー王国上空へと移動した。



「これは……」


「随分と酷い景色ですね」



 リントブル聖王国は例の壁のせいもあり侵入ルートが限られていたために魔物の数はさほど多くなかったと聞いている。だが、ストビー王国とデルガンダ王国はそうはいかない。城の上空から見ると至る所に魔物の死骸が転がっている。そのせいで以前に見たデルガンダ王国よりもひどく感じる。そんな景色に気を取られていると、城の方から僕を呼ぶ声が聞こえた。



「兄ちゃ~ん!」



 そちらを見るとラエル王女とリエル様、その二人の横にアルとフェリアがいた。僕は呼ばれるがままそちらへと近づいた。



「お疲れ様です、ラエル王女」


「私なんて……。皆さんが頑張ってくれたお陰です」



 そう言いながらラエル王女はアルとフェリアの方に視線を移した。2人ともラエル王女の言葉にどこか誇らしげな表情を浮かべている。



「2人もお疲れ。活躍はエリンを通じて聞いてるよ」


「兄ちゃんの武器のお陰だよ」


「この杖を使えば私でなくてもかなりの威力を出せると思います。これ、いつお返ししたらいいですか?」


「そのまま持ってていいよ」


「「え?」」



 そんな驚かれてもな……。僕が持ってても使わないし。勇者三人組は普通に貰ってくれたんだけど……立場的にいろいろなものを貰いなれてるからだったりして。



「まあ、僕は使わないし持ってても勿体ない気がしてさ。それなら国を守るために使ってもらった方がいいかなって」


「そういうことならもらっておくけど……」


「……国のために使わせてもらいます」



 さて、二人を説得したところで本来の目的に戻らないと。



「ラエル王女、魔法陣はどこに作ればいいですか?」


「この国には地下に広い空間も無ければ、城が王都の中心にある訳でもありません。なので、王都の中心の建物を崩してそこに作ってもらいたいのです。近くの住民の方は私が説得しておきましたので問題ありません。それと、出来ればなのですがガノード島のようにして頂けると……」



 あれ、ラエル王女にガノード島の話なんてしたっけ? そう思って聞いてみるとアイナから聞いたらしい。多分だけど、姉であるアイラから聞いた話をそのままラエル王女に伝えたのだろう。そんなこんなで王都の中心へと移動したわけなのだが。



「人が多いですね。別にそれでも問題はありませんけど、見世物のようになっているのはあまりいい気分ではないですね」



 そんなエリンの言葉通り、周りに人が集まっている。確かにこんな魔法陣作れるのエリンだけだし、見る機会なんてほぼないだろうから集まるのも無理はない気がする。が、あまりいい気分がしないのは僕も同意見だ。だからと言って邪魔もしないのに無理に引き離したりはしないけど。



「まあ、今回だけだと思うからさ」



 多分。デルガンダ王国は地下に空間あったし。……でも王都の中心ではなかったような気がするが、今は黙っておこう。



「リクがそう言うのなら……」



 少し不満げではあったが、エリンはそのまま地面に魔法陣を描いた。ちなみに、地面の整地は僕がしておいた。先にガノード島のように覆ってしまってもよかったのだが、野次馬たちのキラキラした目に負けて出来なかった。



「リク、魔法陣の方は終わりました」



 さて、後はこれを覆う建物を適当に作って終わりだ。これが必要となる機会はもう来ない気がするが、一応壊されないようにエリンの力も借りてかなり頑丈なドーム型の建物で覆っておく。ラエル王女曰く、見張りの兵士を常につけるとのこと。この周辺には策も作って一般人が入れないようにするらしい。果たしてそこまでする意味があるのかと言われれば何とも言えないが、もしもの時を考えればそれも正しい判断なのだろう。というかそれ以前に旅人の僕がとやかく言う事ではない。

 さて、後はリリィに手伝ってもらって人を運ぶだけだ。





「リク、リリィ、これで最後だ」


「わざわざすみません、魔王様」


「気にするな、俺に出来ることなんてたかが知れているからな」


「りくのほうがいろいろできる?」


「……リク、リリィ、では頼んだぞ」



 子供の言葉って刺さるととても痛そうだ。今の魔王様の表情を見てそれを確信した。

 さて、魔法陣の上に全員乗ったようだし転移させよう。そう思った時、一人の少女が口を開いた。



「すみません、少しだけ待ってください!」


「何か用、アイナ?」


「いえ、まだお礼を言っていないなと思いまして。何から何まで本当にありがとうございました。それと、お姉ちゃんの事、よろしくお願いします」


「出来る限りのことはするよ。アイラとは話せた?」


「はい、私もお姉ちゃんとお手伝いさせてもらっていたので、その時に……」



 この姉妹器用そうだからさぞ活躍したのだろう。



「またアイラを連れて行くよ」


「はい、ありがとうございます」



 きっとストビー王国の復旧でも活躍してくれるだろう。そう思いながら僕はリリィと共に転移魔法を発動させた。

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