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天才魔法使いは自由気ままに旅をする  作者: 背伸びした猫
~6章~ リントブル聖王国
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天才魔法使い、備える

 僕は読み終えて手記を閉じたが、誰も口を開かなかった。いや、開いてはいるけど、誰も声を出せていない。手記の中身を簡単に要約すると、大賢者と呼ばれていた賢者の祖先、当時の魔王、精霊王、エンシェントドラゴンが協力してゼハルを封印したという事かな。多分エンシェントドラゴンはシエラの祖先だろう。寿命を考えればシエラの親の可能性すらあり得る。……確かシエラは親に人間を襲うなって言われてたはずだからその可能性も低くないかもしれない。



「エリン、精霊王っていうのは――」


「多分ですけど、その時に大賢者と契約したのが私だと思います。精霊王は消えることがあれば代わりに新たな精霊王が生まれます。なので、その時に戦ったのは私の先代の精霊王かと……」



 奇遇にも昔ゼハルと戦っていた者の子孫がここに揃っているわけか。……いや、魔王は世襲制じゃないからそう言う訳でもないか。



「それで主様よ、どうするのじゃ?」



 そんなこと言われても、選択肢は一つしかない。



「出来るだけのことはやるよ」



 が、一つ問題がある。やるなら僕も全力でやる。それをエリンに手伝ってもらうのはいいとして、場所がまずい。自分の全力を把握しているわけではないが、そんなことをして人間が住んでいた国や街がどうなるかぐらいは想像できる。

 ……それなら――。



「僕から一つ提案があるんだけどいいかな?」





 僕はその後、弟子四人組とアルとフェリアに集合を掛けた。その後、集まった六人をエリンの力を借りて人気のない開けた場所に移動してきた。



「――と言う訳だから、少し手伝って欲しいんだけど大丈夫?」


「えっと……。兄ちゃん、俺たちがそんな武器使っていいのか?」



 アルは自信なさげにそう言っているが、正直それ以外の選択肢が僕には思いつかなかった。ちなみに、勇者三人組には既に渡してあったりする。



「いいんじゃない? というかアルたちが適任だと思うんだけど……。魔力の扱いも上達速かったし」



 そう答えても、皆どこか申し訳なさげだ。……いや、一人だけ違うな。



「師匠、それでその武器ってどんなのなんだ?」



 ヴァンが少し興奮気味にそう聞いて来るので、僕の持っている刀に魔力を込めて見せた。



「……師匠、俺近接戦はあんまり得意じゃ――」


「いや、弓もあるよ」


「弓? 弓矢じゃないのか?」


「うん、弓」


「……」



 いや、そんなあからさまにしょんぼりするのは止めて欲しい。というかする必要がない。僕はアイテムボックスから弓を取り出して見せた。それは弓とは言えない代物だった。弦も矢もないのだから。それを見てヴァンはさらに落ち込む。



「師匠、それ壊れてるんじゃないのか?」


「壊れてないよ」



 性能は壊れてはいるんだけども。



「まあ見ててよ」


「え、あぁ、うん」



 僕が魔力を込めると、黒い弓は白くなるわけではなく、両端から白いひものようなものが現れ、それはやがて繋がって弦を作り出した。それを見たヴァンは目を点にさせている。が、ヤバいのはこの先だ。弦に手を掛けると同時に白い不定形の矢が現れる。弦を引いてそれを放つと、放物線を描いて飛び、着弾地点で爆発を起こした。



「え……。いや、は?」


「今のは結構抑えて使ったから、ヴァンでもこのぐらいは出来ると思うよ」



 エリンと迷惑にならない場所に移動してから、賢者の村にあった武器は一通り試した。それで気が付いたのが圧倒的なコストパフォーマンスだ。込める魔力が少なくても大地から勝手に魔力を取ってくれるのでさほど魔力が必要ない。杖に関しては精霊魔法程とまでは行かなくとも、大地の力を使った強化がされる。要は少しでも魔力の扱いが分かればそれだけでかなりの威力を出せる。それでも当然、魔力の扱いに長けた者の方が効果は大きい。



「皆の分もあるから、ちょっと使ってみてくれる?」



 そう言いながら六人にそれぞれが使っていたのと同じような形の武器を渡した。

 剣を扱うゼルとアルは、



「軽い……」


「思ったよりも魔力が……」



 とのこと。思ったよりも魔力が込められてしまうのは多分、勝手に大地の力を吸収してしまっているからだろう。だけど、正直ゼルやアルが手加減する必要性は皆無なので今のところ問題は無さそうだ。

 そして、杖を扱うのがゼナ、ユニ、フェリアの三人だ。三人とも試し打ちをしてかなり驚いている様子だ。



「こんな強い威力にしたつもりは……」


「勝手に魔力が、上乗せ、されてる……」


「精霊の力を借りているのと同じ感覚が……」



 フェリアは精霊と契約しているせいか、それと同じ効果だと勘付き始めているようだ。威力の微調整は必要になりそうだが、さほど時間は掛からないだろう。この点に関しては僕よりもよほど優秀である。……エリンがいるから別にできなくてもいいよね?



「それは私たち精霊の力が込められた武器です。なので、フェリアの感覚はあながち間違いではありません。あなた方が感じている違和感は武器が勝手に大地の力を吸収しているせいだと思います」



 そんな言葉を聞いて、フェリアが首を傾げた。



「じゃあ精霊の力を借りる必要は――」


「いえ、流石に武器に込める程度の力では精霊本来の力には及ばないようです。なので、さらに威力を求める時は精霊を呼び出すといいと思います」



 そんなエリンの言葉を聞くと精霊魔法に比べて劣っているように聞こえるが、精霊を呼ぶ魔力が必要ないと考えればそれだけでかなり有用だ。それに、精霊魔法と違って精霊と契約していなかったとしても大地の力が使える。威力で言えば精霊魔法の方が上だろうけど、こっちはこっちでかなり優秀な代物だ。

 そんなエリンの説明を聞いた後、ゼルが首を傾げながら口を開いた。



「それで師匠、僕らはいつまでにこの武器を使えるようになればいいんですか?」


「それはエリン次第かな」


「……どういうことですか?」



 多分だけど、手記の内容から察してゼハルを倒してもすぐに闇霧が晴れると言う訳ではない。だけど、その状態が何年も続くようならどうしてもその中で行動する人手が必要となる。そこで必要になるのが闇霧を無効化できるエリンの精霊魔法である。エリンから聞いた話だと闇霧を防ぐ魔法陣はかなり繊細な作業が必要らしく、他の精霊には出来ないらしい。だからエリンには申し訳ないけど、働いてもらわなくてはならない。ゼハルを倒した後ではなく、戦う前にそれをするのはもし僕らが負けた場合の事を考えてである。

 そんな事情を簡単に説明すると皆納得してくれたので、僕とエリンは闇霧対策とは別の作業を終わらせるためにその場を離れた。





 転移魔法で移動した先では、すでにリリィとサリィさんが揃っていた。



「おそい!」


「リリィ、リクも忙しいのです。あまり急かしてはいけませんよ」



 仕事と言うのはリリィの精霊との契約である。そういえば魔王様はいないのだろうか。リリィのことになるとついてきそうなものだが……。そう思って聞いてみると、



「流石に向こうを優先してもらいました。あの人がいなくなると面倒ごとが増えますからね。涙を流しながらではありましたけど」



 とのこと。涙って……。きっと子離れが出来ない親というのは魔王様のような人の事を言うのだろう。



「りく、はやくりくみたいなまほうつかいたい!」


「ごめんごめん。エリン、お願いできる?」


「はい、任せてください」



 そんなこんなでリリィの精霊との契約が始まった。

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