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天才魔法使いは自由気ままに旅をする  作者: 背伸びした猫
~6章~ リントブル聖王国
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天才魔法使い、目を覚ます

 目を覚ますと、見知った天井がそこにはあった。勿論、僕が見知った天井の時点でどこかの城の一室である。この時点で自分の異常性に気が付けるのがとても悲しい。少しずつ意識を失う前のことを思い出してから考えてみたものの、やはりおかしい。



「なぜにメノード島?」



 思わず声に出してしまった。そう、ここは十中八九メノード島にある魔王様が住む城の一室である。僕が寝るときに借りていた部屋だ。状況が分からなさ過ぎて混乱しそうだ。……いや、今の時点で既に混乱はしているか。取り敢えず体を起こし――。



「っ!」



 痛い。凄く痛い。体を起こそうとしただけでとても痛い。声は出せるから呼べば誰か来てくれるだろう。そんなことを考えていると、誰かの走っている足音が凄い勢いで近づいて来る。その勢いそのままに僕のいる部屋の扉がバンッと大きな音を立てて開かれる。



「無事か主様!」



 あぁ、そうか。シエラは心を読めるから僕が意識を取り戻したのに気が付いたのか。



「無事ではあるけど、ちょっと体動かすのはしんどいかな」



 シエラの方を向くのをためらうレベルで。



「流石に心配したのじゃ。あれから全く目を覚まさなかったのじゃからな」



 あれ、もしかして結構長い間寝てた?



「あぁ、実は――」



 シエラがそこまで言いかけた時、シエラが来た方向から足音が聞こえる。



「リク様!」


「お兄ちゃん!」



 何か本当に心配を掛けたようで申し訳ない。そんな二人に続いて、やけに軽い足音が近づいて来る。



「りくぅ!」



 僕の名前をそう呼びながらリリィがダイブ……ダイブ⁉ いやごめん、ちょっと待って。と、言おうと思ったが、その時には既に空中にいたので止める方法が無かった。



「――っ!」


「りく!」



 いつかルカにダイブされた時と違って声すら出ない。……あの、リリィさん、それ以上強く抱きしめるのはやめてくれませんかね本当にまずいです。なんか骨が軋んでいるような気がするのは気のせい。

 ……いややっぱ気のせいじゃないです。



「ごめん、リリィ……一旦離れて……」


「いや! はなしたらりくがどっかいっちゃう」


「行かない……から……」



 と言うか今本当に動けないから! 体からミシミシという音がするとと共に、全身に痛みが走る。というかシエラさん、心の声読めてるんだったら助けて欲しいんですけど。



『良いのか? 無理やり引き剥がそうとしたらもっと強く抱き着くと思うのじゃが……』



 はい、却下。

 だ、誰か……。そんな僕の思いにこたえるように扉の方から再び人がやってきた。



「リリィ、リクさんから離れなさい!」


「で、でも……」


「リクさんが苦しそうでしょう?」



 その言葉にハッとしたようにリリィがこちらを見た。自分がどんな表情をしているかは分からないが、異常な量の汗が出ていることは分かる。



「り、りく……?」


「大丈夫だから……だから……一旦降りてくれると……ありがたい……です……」



 なぜか敬語になってしまった。

 リリィはそんな僕の言葉にしょんぼりしながらベッドから降りた。



「ごめん……なさい」


「いや、いいよ。心配かけちゃったわけだし、僕の方こそ悪かったよ」


「お兄ちゃんがあんな事になったら誰でも心配するよね」


「リク様、まだ調子でない?」


「ちょっと体が痛いというかあんまり力が入らないと言うか」


「いや、妾たちの方を向くのも厳しいのはちょっととは言わんと思うのじゃが」



 あのね、シエラ。心が読めると言ってもそれは今は言わないで欲しいんだけど。



「ぐすん」



 ……あぁ、駄目だ。顔を向けられないからどうにも見れないけど、リリィが泣いていることは声で分かる。全くこれだからシエラは……。



『……すまないのじゃ』



 シエラがいい訳もせずに素直に謝るとは珍しい。



『リリィの泣き顔を見ていると、罪悪感が込み上げてきたのじゃ……』



 うん、何となく察した。



「リリィ、僕は別に大丈夫だから別に泣かなくていいよ」


「で、でも……」


「リク様もそう言っている。リリィの元気がないとリク様の治りが悪くなるかもしれない」


「……本当?」


「本当。だからリリィはリク様の前でそんな顔をしちゃダメ」



 僕の前で無理して気丈に振舞うようになっても困るんだけどな。でも、今の場をしのげるのなら別にいいか。本当にそうなったら後で言えばいい話だし。

 そんなひと悶着を終えた後、サリィさんが声を掛けてきた。



「リク、今の状況はどのぐらい分かりますか?」


「意識を失ってからのことは全くです」



 分かるとしたらエリンが何かをしているという事位である。先ほどから物凄い勢いで魔力が消費されている。僕の自然に回復する分と拮抗するぎりぎりで常に消費され続けている。



「では、そこから話しましょうか」


「あれ、何でサリィさんがそんなことを知ってるんですか?」


「リクが意識を失った後のことも、エリンが魔法で私たちに伝えていてくれたので」



 ……何か恥ずかしいな。サリィさんの言う魔法と言うのは、エリンが離れた所の様子を見せてくれるときに使っているあれである。アイラとルカを預けるためにデルガンダ王国へと戻った際、エリンと共に各国を巡ってその仕掛けを作っておいた。エリンから聞いていた話から察するに、上空に僕らの様子が映し出されていたはずだ。多分、ロイドからリントブル聖王国の話を聞いた辺りからのことはすべて伝わっていると思う。



「まず、リクは意識を失ってからデルガンダ王国へと戻ったのです」



 と、いうことはシエラとエリンに助けられてから突然転移したのはデルガンダ王国周辺だったのか。



「その後、デルガンダ王国へとあの黒い霧が伝わってきたのです」



 あれ、リントブル聖王国からはかなり距離があったと思うんだけど。



「それにいち早く気が付いたエリンが地理的に一番遠いメノード島へとリクたちを移動させてきたのです。意識のないリクを寝室へと運んだ後は、シエラとエリンが各国を回って出来うる限りの人間をメノード島へと転移させました」



 エリンはともかく、シエラが人間のために働くなんて珍しいな。



「妾だってそのぐらいの情けはあるのじゃ」



 人を食料として見ていた者の発言とは思えないな。今回は本当に助かったから普通にありがたいけど。



「それで、そのせいで騒動とか起こらなかったんですか?」


「エリンのお陰で魔族側も事の大きさや状況は大まかに察していましたし、何よりあの人の周りにはリクが人間だと分かっている者もほとんどでしたので」



 魔王様の側近のほとんどが僕が人間だってこと知ってるから、良い感じに纏めてくれたと。多分だけど、ラエル王女と陛下の周囲の人間も魔族と触れ合う機会があったのでその影響もあると思う。



「それでも人数が人数なので何もなかったと言う訳ではないのですが……。勇者とリントブル聖王国の王子を名乗る方が協力していなければ悲惨なことになっていたと思います」



 どうにか納まったようで何よりである。エリンの例の魔法はリントブル聖王国には発動させていないので、ロイドたちが協力してくれたのはかなり大きいと思う。というか、一番魔族を敵対視してたのはリントブル聖王国の人間な訳だし。



「それでエリンの事なのですが――」



 それ凄く気になってました。



「リクが意識を失った1週間前からずっととある場所に籠って、リクを治すための魔法陣を組んでいるようです。精霊界への扉を無理やり開いて他の精霊にも手伝ってもらっていると言う話も聞きました」



 僕1週間も意識なかったんだ。というかその間ずっと籠りっぱなしって大丈夫なのだろうか。多分だけど、僕の魔力を凄い勢いで消費し続けているのは精霊界への扉とやらのせいだろう。そんなことを考えていた僕の目の前へ突然魔法陣が現れた。目の前よりは真上と言った方が正しいかもしれない。その魔法陣は見慣れた転移のためのものだった。そこから現れたのは勿論エリンである。

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