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カクレジマ  作者: YUU_PSYCHEDELIC
3/3

カクレビトは泣いている。

この不思議な世界に迷い込んだ私は、しばらく森の中を彷徨っていた。

何もわからず、ただ街だけを求めて。

しかし、どれだけ歩いても辿り着かない。

お腹も空いてきたし、何より寝る場所を探さなくちゃ。


「うわぁ。」


思わず、声に出してしまった。どこまでも続く深緑。

せめて集落だけでも。一日だけ、泊めてくれれば...

東の空に沈む夕陽を追いかけ、無心で草むらを掻き分ける。

疲れ切ってしまい、思うように足が動いてくれない。

でも、弱音を吐いてる場合じゃない。倒れでもしたら、死んでしまう。

こんなところで死にたくない。死にたくない。

だけど、自分自身が邪魔をする。心に身体が追いついてこない。

見えない場所に伸びていた蔦に足を取られ、無情にもその身体は地面に打ち付けられた。

もう力は出ない。何もできない。せめて、美しく死ねれば...

こんな私でも...



その頬に、ほんのりとしたぬくもりを感じたことに気づいたのはいつだろう。

しばらく森の中に倒れ込んでいたようだ。辺りは、すっかり夜になっている。

でも、さっきとは違う場所のような気がする...

そう思い、見上げてみると、そこには煉瓦造りの小さな家が建っていることに気付いた。


「着いた...」


木で出来た小さな扉をゆっくりと叩く。たぶん、中には人が住んでいるはずだから。

一度じゃ聞こえないなら、二度叩いてみよう。何度でも、聞こえるまで。


五分ほど続けてみたけど、反応が帰ってこない。もしかして、外出中?

嫌な予感がした。流石に、ここから歩いていく力は残っていない。

絶望と、諦めと。私の眼には涙が溜まる。

夜の闇は更に深くなっていく。

寒さは増していくのに、コートも何も持っていない。

また死を覚悟しなきゃいけないのか。

もう完全にすべてを投げ出したくなっていた。


涙が止まらない。悔しさが止まらない。

何も出来ない、逃げてばかりの自分がもどかしい。

カクレビトは泣いている。

声にならない、想いを涙に乗せて。

スカーフで涙を拭っても、どんどん溢れてくる。


その涙は、悲しみという名前の雨を呼んでいた。

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