プロローグ
「ぐはぁ!」
豪華な屋敷の二階から吹き飛ぶ騎士。周りに通行人はいたが何故かそれに見向きもしない、それがまるで日常の事かのように。
「これで二千三百六十五人目の挑戦者か、いつになったら挑戦なんて下らない事を止めてくれるのかねぇ。」
吹き飛んだ騎士のもとに近寄る一人の人物、仮面を付けゆったりとしたローブを着ているため見た目ではその性別は分からず何らかの手段で変えているのか声で判断することもできない。
「黙れ!自分で戦うことをしない召喚士が最強と呼ばれる事が許せないのは騎士として、許せないのは当たり前だ!」
「はぁ、そんな下らない事で私にケンカを売りに来たのかい?正直、最強なんて称号いらないんだよなぁ。私は平穏に暮らしたいのだよ。なんならあげようか?最強。」
「っ!ならどっか遠くの世界にでも行け!この糞が!」
そう言って騎士は走って何処かへ去っていった。
「どこか遠くの世界、それもいいかもねぇ。」
彼、もしくは彼女は屋敷へと戻っていった。そしてそれから屋敷からは様々な怪奇現象が発生した。屋敷全体が発光したり、屋敷の目の前の道路に身元不明の黒髪黒目の少年少女達が30名ばかし倒れていたり、ゾンビが大量発生したり、用途不明の魔道具が大量に落ちていたり、何も起きなかったり、そんな日々にようやく近隣住民が慣れてきたころある事件が起きた。屋敷があった土地が更地と化していたのだった。
この事実にある魔導士は嘆いた、「世界の損失だ」と
またある王は驚喜した、「これであの国に侵略できる」と
だが大半の民衆はこう思っていた、「ああ、あの変人がいなくなって嬉しい」と
そんな変人は今どこにいるのか?
答えは本人と屋敷だけが知っている。