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エスケープ・ダンジョン~オルガニア迷宮へようこそ~  作者: ほうこう
第一層 空中庭園攻略編
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第6話『第1階層 空中庭園』 第1節

 大きな神の像がある広間から、近くの扉を出た俺たちの目の前にはあり得ない光景が待っていた。


 入った時にはなぜかみんな部屋の中央で止まっているのを、変だといぶかしく思ったが部屋の中に入って納得した。

 壁というものが見当たらず、床の四角い石畳の先には突如として青い空が広がっている。

 下の方を見てみるとそこも青一色で真下をのぞいてみる勇気は俺にはなかった。


 そうして茫然としていると最後に入ってきたであろうハーフリングのブレントがバタンと扉を閉める音がしてそちらを見てみると、閉めたとたんに扉が消え、扉のあった場所にも真っ青な青空が広がるばかりだ。

 今周りには10m四方はあろうかという床の石畳と、見渡す限りの青い空そして真上の太陽しかないこの場所は、海の上に浮かぶ絶海の孤島のようだ。


 その光景をみていると突然耳鳴りを起こし少し顔をしかめたが、すぐに元に戻る。具合でも悪いのかなと思ったが別にそんな事もないので、気のせいという事で流すことにする。


「ここって空の上なのか?」


「いえ、ここは空の上ではありません」


 俺の問いかけはカズに向かってしたものだったのだが、答えてくれたのはイザベラさんからだった。


「いやいや、そんなことないんじゃないですか?壁だってないんだし、周りは空ばっかりだし」


「いえ、壁が途切れているところまで手を伸ばしてみればわかります。私もさっきやってみました。たぶん光魔法で作った幻覚か何かでしょう」


 そんなことして大丈夫なのかよ、下手したら落ちて死んじゃうじゃん。

 無理無理、絶対無理。


「ほら早くしなさいよ、男でしょ!もっとしゃっきりしなさいよ」


「いやいやいや、俺も男だけどカズだって男じゃん、なんで俺なんだよ。」


「僕女の子だよ。」


「嘘つけ~てめぇと一緒に風呂に入ったこともあんだぞ、立派なもんがぶら下がってたわ。」


「ゼンの……エッチ」


「やめろお前がやっても可愛くもなんともないわ、わかったよやればいいんだろやれば。」


 叫びすぎたせいかなんか苦しい、それはともかく俺は一歩一歩床の途切れているところまで、ゆっくりと近づいていき床に這いつくばりながら手を伸ばしていく。


 あとちょっとあとちょっと、…………あれ?

 なんかおかしい床の縁をつかもうとしているのに見えない壁を感じる。指が先に進まずにそこで止まったままになっている。

 そのまま俺は立ち上がりながらゆっくりと手を上に登らせていくが、見えない壁は上までずっと続いているようだった。


「すげぇなんか見えない壁があるぞ、お前らも触ってみろよ。」


 そう言って振り向いてみると見事に誰もいない、全員アルフレードを中心に広間の中心で何か話し合っているようだ。なんだよ、お前らが触ってみろって言ったくせにほんとに何なんだよ。


「あんちゃん、ヘコみぃなや。あたいたちが慰めてあげるからさ~」


 誰もいないかと思っていたら、視線よりもずっと下にいたらしい。


 ハーフリングの双子(確かエミリーとメアリーだったか)は2人とも格好はほぼ同じの長い髪をポニーテールにまとめて黄緑色の布の服を着て、革の胸当てをつけ腰に小さいナイフを提げている。2人で1つだけ違うのが背中に背負っている楽器だろう、一人がギターのような物を背負い、もう一人が木の笛が横に連なったような感じの物を背負っている。


 それにしてもこいつらはホントに小さい、幼稚園児だといっても違和感がないだろう。顔は西洋人ぽく目鼻立ちはしっかりしていているが、体形は少しふっくらしていてなんか触ったらモチモチしてそうな感じだ。


「よういうわ、あんた人を慰めたことなんてあらへんでしょ」


「そんなことないわ、あたいかて人を慰めたことありますぅ~」


「じゃあやってみせてぇな、あたいが慰められる人、あんたが慰める人な」


「ええよ」


 気を抜いて黙っていたらいつの間にかコントが始まっていた、何を言っているかわからねぇと思うが俺にもわからねぇ。


「うぅ~うぅ~」


「だいじょうぶですかぁ~、生きてますか~。ああこれはもうだめそうですなぁ助かりませんなぁ、ほなお達者で」


「どこが慰めてんねん、追い打ちかけてるやないか、諦めるんやないわ。」


 そこまで言い終わると二人は俺の事をじっと見つめてくる、俺がクスリともしないからいぶかしく思っているらしい、そして少し涙目だ。なんだこの同調圧力はなんかこわいんですけど、うん一応笑っておくか。


「あははは、すっげぇおもしろいおもしろい、うんありがとうよ慰めてくれて。だけど俺もあっちの話し合いに参加したいからよ」


「ホント世話が焼けるにいちゃんやなぁ、ってにいちゃん誰やねん」


「誰か知らないでやってたのかよ!」


 ホントに恐ろしい双子だ、その後なんとか自己紹介だけして無理やり話を終わらせて話し合いしているところに向かう。

 あのまま双子としゃべっていたらいつまで喋っていたかわからない、ホントに恐ろしい双子だった。


 アルフレードを中心に集まっているみんなは何やら話し合っているようだが、密集しすぎていて何を話し合っているかよく聞こえない。

 なんとか覗き込むとイザベラさんは座り込み床を必死に調べているのが見えた。

 丁度近くにオッサンがいるので話を聞いてみるか。


「なぁオッサン、今って何のこと話してるんだ?」


「うん?ああゼンか、いまちょうどなあそこのイザベラ副隊長の足元に文字があるのを発見してな。どうやらそれを解読しているようだぞ」


「へぇ、文字か。少しは読めてるのか?」


「まぁ少しだけだな、書いてあるのが神霊文字らしくてな。隊長や副隊長は勉強してるらしいが、俺にはさっぱりわからん」


「神霊文字ってなんだ?今の言葉と違うのか?」


「神霊文字はな大昔に神様たちが使っていたって文字だな、俺たちはもう使わねぇがタイバス大陸に住んでるやつで使う奴がいるってのは、噂話か何かで聞いたことはあるけどな」


「ふーん」


 となるとそんな文字の事を知らない俺は何もできない。そもそもタイバス大陸だの、神霊文字というのもよくわからん。

 静かに待つしかない。


 だが落ち着いてみると何かおかしい。部屋自体もだが、なんだが体も重く少し眩暈がする気がするし息も苦しい。

 周りを見てみると騎士たちは平気な顔をしているが、カズとアズの二人は少し荒い息をしている気がする、それからエミリーとメアリーは少しだけ顔色がさっきより悪い気がする。

 何か異変が起こっている気がするでも何かはわからない、そう思っているとイザベラさんが突然立ち上がる。


「みなさん重大なことが判明しました、この部屋は少しずつ空気が抜ける仕組みになっているようです。つまりこのまま何もせずにいると窒息死する(・・・・・)可能性があります。」


 そういったイザベラさんの声はいつもの冷静な声だったが、言葉の端々は少し震えているように思えた。




なんとか書くことができましたので投稿します。

誤字脱字など一応推敲しているんですが多くあると思いますので、教えていただければありがたいと思います。

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