第5話『ようこそ異世界迷宮へ』 第4節
騎士隊長のアルフレード達とハーフリング族のバイロン達との共闘関係を結んだ俺たちはドアの先ゲームに挑戦するために準備を整えていた。
バイロンたちは多すぎるハーフリング族を帰らせているのだが、なんかエセ関西弁の熱弁と別れを惜しむ歌みたいのが聞こえてきて、少し鬱陶しい。
その間暇になった俺たちは12人の騎士達と一緒に迷宮攻略の準備をしていた。
というか一緒にいるのはいいんだが何を話せばいいかさっぱりわからない、カズは人見知りであんまり喋らないし、アズはスイーツ脳すぎて暴走しそうなのが怖い、かくいう今もイザベラさんと何やら話しているアルフレードをガン見している。
そうしていると騎士たちの一人の中で他の人は銀色の豪華な鎧を着ているのに、一人だけ鉛色の地味な鎧を着ているせいか、他の騎士から浮いている擦れたオッサンがこちらに歩いてきている。
まさかあれか?よくあるお前らなんぞ隊長は認めても俺たちは認めねぇぞ!かかってこいとかってやつか?
だったら敗色濃厚だ、たとえオッサンでも戦闘の訓練を受けた人に敵うわけがない、もし何か言われたら食べ物でもあげて見逃してもらおう、そうしよう。
「ようお前ら、おれ達と一緒に行くことになったんだってな?」
「はい、そうです。すいません食べ物あげるんで許してください」
「いや、まだなんも言ってねぇだろうが。おれはただお前たちがどんな奴か話でもしてみようじゃねぇかと思ってだなぁ」
どうやら俺の思っていたのと違うようだ。
それから何となしに他の騎士を見てみると、俺とオッサンが話しているのを一瞬だけ見ると興味なさげに視線を移したり鼻で笑ったりしてる気がした。
ってあれこれってもしかして……。
「なぁオッサンもしかして……」
「いきなりオッサンかよ、まあいいけどよ。それでなんだよ」
「ボッチなのか?」
「はぁ?ボッチ?一人ぼっちってことか?いやいやそれはねぇよ、おれが話しかけると他の奴が迷惑そうな顔するとか、みんなで話してる時に話しかけても無視されるとかそんなん全然ねぇよ」
「やっぱりボッチなんじゃねぇか!!」
なんだこのオッサン、騎士の中で話しかける奴が誰もいないから話しかけてきたのかよ、怖がらせんなよ。まったく。
それよりもこれはチャンスかもしれない、この世界の情報を聞いたりゲームの事、それにオルガニアの迷宮について聞いたり。それになにより、この寒々とした雰囲気も壊せるかもしれない。
「なぁオッサン……」
「オッサン、オッサン言うんじゃねぇよ。おれの名前はロドリゴだ!お前はなんていうんだ?」
「ああ俺か?俺は和田禅市だよ。ゼンでいいよオッサン」
「もうオッサンで定着しちまったんだな……まぁいいんだけどよ。ふ~んワダね~聞いたことない名前だな、ゼンお前達はなんて国から来たんだよ」
これはどう答えたもんか、そう思ってカズの方を見ると好きにしたらいいといった感じで目配せしてくる。
まあアズの方は言わずもがなで俺とオッサンの話なんてはなから興味がないらしい。
まあいいや大体はホントのこと言って具体的なことははぐらかそう。
「俺たちがいた国はニホンという国で島国なんだ。」
「ニホンねぇ~、全く聞いたことねぇな。まぁ島国だっていうならまだ誰も言ったことのない国なんだろうな。お前らの着ているその服もニホンの服なのか?ずいぶん立派だが」
「ああ、そうだよ。ものづくりにかけては自信がある国なんだよ。じゃあ逆にこっちからオッサンの国のこと聞いてもいいか?」
「ああ、いいぜ。まあおれは大したこと知らないがな。」
「オッサンの国は何という国なんだ?」
「ガルド聖王国だな、大陸五大国の内の1つで、ヴィレス大陸の中央部にある国だな。名前ぐらい知ってんだろ?」
「いや全く知らん、それでオッサンらはその国の騎士なのか?」
「まぁな、おれだけ毛色が違って傭兵上がりだが、他の奴は貴族の次男坊とか三男坊ばっかりでおれ以外はちゃんとした騎士だぞ」
なるほどなそれでオッサンは浮いてしまっているわけか、なんか可哀そうになってきた。
さぞ居心地が悪いことだろう。
「まあオッサン元気出せよ、きっといいことがあるさ」
「なんかいきなり慰められたな。それよりもお前らにこの迷宮をクリアするように言ったやつって何もんなんだよ、お前らみたいな子供をこんなあぶねぇ所に送り込むなんてよ」
「それは……」
「おや、面白そうな話をしていますね、私も気になっていたのです。君らを送り出した人物は何者なのか」
そういいながらイザベラさんと話し終わったのか、さわやか笑顔で来る金髪イケメンもとい隊長のアルフレードがこちらに歩いてきていた。
バロールの事を話してもいいんだけど、こっちだってよくわかっていないんだから話しても中途半端なことになるだろう、そんなことを考えているとそんな空気を読み取ったのかアルフレードから切り出してくる。
「いや、すまなかった君たちの事を根掘り葉掘り聞くつもりはないんだ、言いたくないこともあるのだろう、だから別に答えなくたっていいんだよ」
「そうですよ隊長、そんなに無遠慮に聞いちゃダメですぜ」
「いやいやオッサンだからね最初に聞いてきたの?」
「ハッハッハッ、君たちはいつの間にか仲良くなっていたんだね、良かったよ」
そんな風に俺たちが話しているとイザベラさんはロドリゴや俺の事をあまり気に入っていないのだろう、ぶ然とした表情で俺たちに話しかけてきた。
「隊長、そろそろ行きませんと……」
その声を聞いて、中央の神の像の砂時計を見てみると、最初は一番上まであった砂が残り3分の1ほどに減っていることが分かった。もうそろそろ出発しなければ不味いかもしれない。
「ああ、そうだな。隊員たちの準備はどうなっているかな?」
「はい、1人以外問題なく終えております。ロドリゴあなたは終えているんでしょうね?」
「へい、副隊長殿。問題なく終えております」
「そうですか、隊長準備すべて完了です」
「よろしい、それではカズト君たちとハーフリング族の準備完了次第出発とする。カズト君準備はどうかな?」
「はい大丈夫です。いつでも出発できます」
後はハーフリング族だけそう思い辺りを見渡してみると、先ほどまでやっていた見送りが終わったのか四人のハーフリングがこちらに向けて走ってくる。
一番前が筋肉質なバイロンでその後ろの瓜二つのバイロンよりも一回り小さいハーフリングの女の子二人が後ろについてきており、その後ろにはムッとした顔をしている線の細い男が付いてきている。
「いやぁすんまへん、送別会やるのに時間かけすぎましたわ。あ!そうそう改めて紹介しますわ、こっちの2人がエミリーとメアリー姉妹や、バードで歌も歌えるし薬剤師でもあるんやで!」
「「よろしゅうな~」」
「そんでこっちがブレント、武器の扱いにもたけてるし鍛冶なんかもできる器用な奴や」
「……よろしゅうな」
「そんじゃあ皆さんにあいさつ代わりに一曲披露しまっかな」
「それはまた今度にしてください!今は一刻も早く扉に入らなければなりません!!」
イザベラさんが電光石火の勢いのツッコミでハーフリングを黙らせる、さすがウチの姉貴に雰囲気が似ているだけある。うん、マジで今でも怖い。
だがバイロン達も準備が終わったようだ
「それではバイロンさんそちらの準備は大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫でっせ。今すぐでも大丈夫ですわ」
「わかりました、それでは……総員整列し傾注!!」
アルフレードのその大声で騎士全員が整列し姿勢を正した。
その様子を見ているとこちらまで緊張してくる。さすがは正規軍だ、いまの掛け声だけでもとても規律が正しいのがわかる。
「我々はこれよりオルガニアの迷宮に挑む、この先には困難な道が待っていることだろう、しかし我々にはそれを乗り越える力がある、それに諸君は絶対に諦めない勇気を持っていると確信している。そして最後まで生き残りこの迷宮を攻略できるのも我々だと私は確信している!!いまこそ我々はガルド聖王国騎士の誇りをかけ国のため皇帝陛下のために命を懸けるべき時が来たのだ!!総員命を懸ける覚悟はできているか!!」
「「「「然り!!」」」
「よろしい、では攻略開始せよ!!!」
「攻略開始!!全員戦闘隊形を整え扉に進行せよ!!」
そういうとイザベラさん達は戦闘隊形になりオッサンが斥候の役目を果たすのだろう、一番先頭になって扉を開けて入っていくその最後尾にアルフレードはついていくのだろう、様子を見ている。
「それでは私たちも向かうとしましょう」
「そうですね、それじゃあ僕たちも行こう」
そうカズが言うと俺もそれに続いて部屋に入ることにする、つうか騎士たちの気合いに気圧されてしゃべる気力もわいてこない、アズも黙ってついてきている。
バイロン達もおいてかんといて~なんて言いながら付いてきている、ホント何なんだろうこのエセ関西弁たまにイラっとする。
そして俺たちが扉を潜った先にあったのは一面の真っ青な空だった。
すいません、話のストックがもうはや尽きてしまいました。
もしかしたら次に更新するのは遅くなってしまうかもしれません。
予めご了承ください。




