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エスケープ・ダンジョン~オルガニア迷宮へようこそ~  作者: ほうこう
第一層 空中庭園攻略編
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第4話『ようこそ異世界迷宮へ』 第3節

 俺たち三人は金髪イケメンのアルフレードと共闘関係を結ぶために彼のいるほうに向かっていた。


 どうやらいまだにハーフリングと話しており、なにやら揉めている様だった。

 ハーフリングのほうが熱心に話しており、金髪イケメンの仲間であろう女騎士が対応に苦慮しているような感じだった。


「ほんま頼みますよ、ワイ達は非力なハーフリング族なんやでパーティーに入れてくれてもいいんとちゃいますか?」


「先ほどから言っているでしょう?あまりに私達に利益がなさ過ぎると、それにあなた方は人数が多すぎます。ミナスとかいう神族の方は人数が多いほうがいいとは言いましたが、多ければいいというわけではないのは明らかです」


 そういったのを聞いて辺りを見回してみると確かに、ハーフリング族はわらわらと、と言う表現の通りに十数人が固まって立っていた。

 確かにこんな人数では機動力に欠けていざという時に動けなくなるかもしれない。


 だがそれにしても……。


「どうしたのゼン?話しかけないの?」


「いや、だってその、アレであれだからさ……」


「あ!わかったあれでしょ。あの前にいるきつそうな感じの女の人、あんたいつもは普通に女の子と話せるのにクラスの委員長とかが来ると逃げ出してたでしょ。なるほどね確かに雰囲気は似てるわよね」


「い、いやそんなんじゃないし、別に普通に話せるし」


 アルフレードの前でハーフリングと話している女騎士は片目にモノクルをかけ、たぶん長いのであろう銀髪を結いあげて後ろでまとめている、女性物の騎士鎧を付け腰には細い剣を下げている姿はとても似合っており威厳や風格といったものを感じた。


 そして何よりも俺が戸惑いを感じたのは彼女のきつい眼差しと全体の雰囲気だ、それが自分の姉と同じものを感じ自然と足が震えてくるのだ。


 ホントに姉との思い出に碌なものがない、5つ上の姉は絶対的な強者でいつものようにパシりにされアイスやお菓子を買いに行かされ、機嫌が悪いと理不尽に本で叩かれたり蹴られたりした、まだ他にもっとひどいエピソードがあるが今はやめておく。姉がほしいとか言っている馬鹿にはほんとに無償で、いや粗品もつけるからどうかもらってほしいと小さい頃からいつも思っていた。


 なので似たような人物に遭遇すると無意識に拒絶反応が出る。これはもう遺伝子に刻まれてるといってもいいくらいなのだ。


「あ~ごめん、俺お腹痛くなってきちゃった。お前ら二人で行ってくれる?」


「なによ情けないわね~。それじゃあカズ行こっか。この使えない男はほっておいて」


「うん、そうだね。肝心な時にダメな男はほっておこう」


「すまねぇ、頼む」


 そういって俺は二人から二歩ほど離れてついていくことにする。

 俺たちが話している間もまだ女騎士はハーフリング族の男と言い争っているようだ。

 それにしてハーフリング族の男は小さい。小学校低学年か幼稚園児ほどしか身長がない、だがガタイはなかなかのもので遠くから見ても筋肉がついてるのがわかる。そして軽そうな皮の鎧を着て腰に短剣と巾着のようなものを下げていて背中に自分の身長ぐらいのリュックを背負っている。

 まぁ身長を除けばガッチリしたただのオヤジだ。


「ほんならわかったわこちらはワシ、バイロンとエミリー・メアリー姉妹それから手先の器用なブレントの四人でええでっしゃろ?」


「人数の件はだいぶましになりましたが、あなた方もゲームに参加する以上叶えたい願いがあるのでしょう?願いは三つしか叶えられません。あなた方に割く余裕はないと思いますが」


「ちょっと待ちぃや、ワシらは願いは一つしか叶えんでいいと思っとります。もしそれを聞いてくれるんやったらハーフリング族に伝わる秘宝を出したってええわ」


「しかし……」


「あの、すいません。」


 ハーフリング族と女騎士が口論している所にカズは空気も読まずに入ってく。

 いや~ほんとすげぇな俺だったらあんな怖い女の前に、空気を読まずに入ってくなんて絶対できない、マジでカズトはすごいよホント。


「はぁ~、誰ですかあなたたちは?」


「僕たちもゲームに参加しようと思っているんですが、三人しかいないので、パーティーに入れていただきたいと思いまして」


「何なのですかホントに、あなたたちは。こちらとしても足手まといを連れていくような余裕はないのですよ」


「それはわかっているつもりです。僕たちも戦闘なんかに向いてないとは思いますが、自分の身は自分で守るつもりですし。それに知識もそれなりに持ってると思いますから、何かしら役に立てるのではと思っています」


 カズトがこんなに他人と話してるところを始めて見た、俺が驚いてみているとアズサも驚いたようでじっとカズトの顔を見ている。


「それに僕たちはクリアしても願いを叶えてもらわなくて大丈夫です」


「……それはどういうことですか、それではあなた達はどうしてこの迷宮にやってきたのですか?」


 女騎士はこちらの事を胡散臭いとでも思ったのか、一気に険しい表情を浮かべている。

 確かにこの迷宮へは願いを叶えるために来ている奴が大半だろう。それで願いを叶えなくていいという奴がいたら怪しんでも仕方ない。というかメッチャこえぇよ、なんであんなに睨んでんの?さっきから冷汗が止まんないんだが。


「僕たちはある人との契約で、この迷宮をクリアするように言われてきたんです。その契約の中では願いを叶える権利の事については言ってませんでした。なので僕たちはゲームをクリアする。それだけのために来たんです。」


「…………。」


 カズトが言ったことの内容を吟味しているのかもしれない、カズトの話を聞いた後考える様にモノクルを持ち上げている。


「あんちゃんら、済まんへんけどこちらが先約やねん、というわけでこっちは一緒に行ってええんやろ?」


「それは……」


「イザベラ副隊長ちょっと待ってくれないか、私が彼らと話をしよう」


「隊長ですが……」


「いいから、私に任せてくれ」


「そうですか、承知しました」


 そう言ってイザベラと呼ばれた女騎士は下がっていく。

 やはり金髪イケメンのアルフレードは隊長だったようだ、これで何とか話が進めばいいんだけど。


「すまないね、うちの副隊長は有能なんだが少し石頭でね、許してほしい。改めまして私の名前はアルフレード・デ・シルヴァ、さっきの彼女がイザベラ・ミランダという、それで君たちは私たちと協力関係を結びたいということでいいのかな?」


「そやねん、ワイら体力やなんかには自信あんねんけど、魔法なんかはさっぱりやねん。だから一番話ができそうなあんちゃんらを選んだわけやねん。協力してくれるならそっちも助かると思いまっせ」


「そうですか、よくわかりました。それで君たちは人族だよね?君たちはどうなのかな?」


「あ、はい、すいません。先に僕の名前は黒須賀数人(くろすかずと)です、こっちの二人が和田禅市(わだぜんいち)と大石あずさです」


「初めましてぇ大石あずさです!あの~アルフレード様って呼んで……痛った!何すんのよ!!」


「いいからアズ、お前は黙っていようなぁ~」


 アズこいつはホントに危ない、スイーツ脳の権化のような奴だ。

 変な雰囲気になってなければいいと金髪イケメンの方を見ると、なにも気にしていないようでさわやかに白い歯を見せてこちらに笑いかけている。

 なんだよ中身もイケメンなのかよ。


「すいません、話がそれてしまいました。僕たちは皆さんよりもずっと遠いところから来まして、わからないことだらけで魔法なんかも使えません。ですがこちらにはないような知識を持っていると思いますのでどうか一緒のパーティーに入れていただいて協力関係になりたいと思っています」


 それから数秒間があった、断られともいいと思っていたがそれでもものすごい緊張感があり何秒間が1分ぐらいに感じる。


「そうですか……わかりました、それではあなた方と一緒にパーティーを組みましょう!」


「隊長!!それは……」


「ただし、我々はあくまで協力関係、それはどちらが上といった関係ではなく私たちはお互いに寄りかからずに危機に瀕したときは自分達の努力で危機を乗り越えてください。ただ協力関係なので助けられる時はお互いに助け合う、それでよろしいですか?」


「ワシらはそれでええで」


 カズトは俺とアズサの方を見て同意を求めてくる。

 俺は力強くうなずき、アズサはなんだかよくわからないといった感じでうなずいた。


「僕たちもそれで構いません」


「わかりました、これで私たちは共闘関係です。よろしくお願いしますね」


 こうして俺たちは異世界人と騎士団、ハーフリング族という奇妙な共闘関係を結んだのだった。


読んでいただきありがとうございます。

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