第41話『第2層 水禍劇場 第3ターン』 第2節
ルーが真剣な面持ちで俺たちへ次のターンへの参加の意思を示し、その余りにも必死なようすを見た俺たちは呆気に取られてしまっていた。
そんなルーをアズは我が子を見守るような感じで見つめていた。
「でもルー、相手の魔族はかなり危険な呪術を使ってくるんだぞ。大丈夫なのか?」
「あの……えっと……その、大丈夫です。ボクはちゃんとドルイドの力で……みんなを守れるから」
俺の問いかけに危なっかしく答えるルーだったが、声には自信があるように聞こえる。
しかしなんだってこんなに突然自分から行くなんて言い出したのか不思議だ。
「ルー君、私は君がどんな能力を持っているのか知らないんだが、防戦一方の時や相手の攻撃をかわすときなどに使える魔法などを持っているのかい?」
「はぅ……効果が、あるかはわからないんです。でもきっとお役に立てます」
「そうか、それでもやってみないよりはマシか……イザベラ君、きみはどう思う?」
アルフレードの後ろに控えていたイザベラさんは、先ほどの魔法などによる疲れなのかいつもの覇気が見られないものの凛とした表情で答える。
「はい隊長。私は先ほどブルーノを治療する姿を見ていましたが、彼女の能力は信用できると思います。それに彼女は一見気弱そうですが、治療している時に見せた芯の強さは本物かと思います。獣人にしておくにはもったいないですね」
「なるほど、確かに我々ではブルーノのケガをあそこまで処置することはできなかっただろうな。ではアズサ君はどう思いますか?」
「ひゃい、あの……えっと……」
「いやもじもじしてないで早く答えろよ!」
「わかってるわよ!そう急かせないでよ。あのですね、ルーはこんなにちっちゃくて可愛くてちっちゃいんですけど、みんなの期待に必死に答えようとしてるんだと、短い付き合いだけどわかるんです。だから……あたしはルーの事を信じてます!」
「うぅ……ありがとうございます」
イザベラさんとアズから褒められまくったルーは、顔をローブのフードで覆い隠しフード端を握りしめて恥ずかしいようで俯いている。そのフードで覆われた頭をよしよしとアズが撫でていた。
「そうだね、ではルー君次の周回は君に賭けよう」
「はいっ!……一生懸命頑張るです!」
「頼んだよ。それではほかの人選だが、どうするか……」
「はいっ!あたしも行かせてもらえませんか!」
手を挙げたのはアズだった。
まぁなんとなく手を挙げるのではと思っていた。妹分のルーが出ると言っているのだ、アズが出ないわけにはいかないとアズならそうすると思っていた。
だけどアズの奴能力とか何も使ったことがないし、大丈夫なのかよ。
「アズサ君がかい?いやだが君は剣も魔法も何も使えないと聞いているが」
「はい、使えません!でもゼンが周回できるのなら私だって出来ます!」
いやいや俺は能力を使ってぎりぎりだった、しかも1人は死にかけたのだ。
安易にできると言って参加すれば他の人間を危険にさらすかもしれない、ここは釘をさしておかなければいけないかもしれない。
「おいアズ、お前分かってんのかよ、お前が出て下手したら他の奴まで危険な目に合うかもしれねぇんだぞ。それ分かってんのかよ」
「分かってるわよそのぐらい!でもね、友達や仲間が必死に頑張っている時に何もできないのは死ぬほど嫌なのよ!」
その言葉に俺は次の言葉を失ってしまった。
アズの気持ちが痛いほどわかってしまった。同じ気持ちの俺には何も言う権利などない。
俺だってずっとここで待ってろと言われたら、絶対に行くと言っていただろうから。
「それじゃあ俺だって行くよ。アズだけだと心配だしな」
「いいわよ、あんたはもう一回行ったんだから。あんたはここで休んでなさいよ」
「そういうわけにいかねぇだろ、それに俺は唯一前回のこと知ってんだ。俺も行くぜ!」
「しょうがないわねぇ、足引っ張んじゃないわよ」
「どっちがだよ、お前こそ足引っ張んなよ」
「あ~と、それじゃあ僕も行きたいんだけどいい?」
「「カズはダメ!」」
「あ、はい」
そんな風に揉めているとアルフレードは、わざとらしくオホンと咳払いする
俺たちはそれに気づいてあわてて話すのをやめる。
それからアルフレードはこちらを見据えながら話し始めた。
「それじゃあアズサ君は本気で出るつもりなんだね」
「はい、アルフレード様!」
「これは遊びではないんだよ。それは分かっているね?君の命を守れるのは君だけだ」
「はい、あたしは本気です。やらせてください」
「わかった、今は戦力を遊ばせている余裕はない、君に賭けてみよう」
「ありがとうございます!あたし頑張ります!」
そう言うアズは今まで見たこともないような嬉しそうな笑顔を浮かべていて、なんとなく複雑な気分だ。
「それでは後は私が参加して……」
「それはダメです隊長。隊長は後のために戦力を温存してください。私が代わりに出ます」
「しかし君も先ほどの魔法でかなり疲れているだろう。君こそ力を蓄えていた方がいいのでは?」
「隊長は私を過小評価しています。私はまだまだ魔法を使用可能です。余りなめないでいただきたいですね」
「あ、ああ、済まなかった」
イザベラさんは疲れてるからなのか、言葉の端々に棘がありアルフレードはたじたじになっている。
やべぇよあれ、うちの姉貴がストレスでイライラしてる時と同じ顔をしてるよ。ああいう時は下手に近づかず嵐が過ぎ去るのを待つしかねぇぞ。
この時ばかりはアルフレードに同情してしまう。
そんなこんなでメンバーは俺にアズ、ルー、イザベラさん、それに先ほど弓を使っていた騎士ジルベルトに一番動きが身軽という若手のダミアン、それに無口なハーフリングのブレントの計7名で挑むということになった。
敵陣に目を移すとどうやら今回はジャッバールが出ずに、ハーキムという老人とそれに付き従うように6人程が攻撃に参加するようだった。
老人は真っ黒なローブに大きく赤い宝石を身に着けており、他の魔族とは違い笑顔を浮かべているもののジャッバールと同じくらいにおぞましい雰囲気があり、怖気付きそうになる。
そうしているうちに砂時計の砂はすべて落ちる。
俺たちは浮遊する石に乗り、俺たちは赤い足場に魔族たちは中央に移動していく。
魔族の呪術への対抗策など何もない、このゲームを確実にクリア方法だってまだ見つかっていない。
それでも俺たちは前に前に進まなければならない、諦めて負けを認め下を向けば全員死んでしまうだろう。そう思うと足がすくみ動けなくなる。
だから俺は前だけを見て次にやることだけを考える、今はぶつかっていって答えを見つけるしかない。
俺たちは素早く動けるように戦闘態勢に入り、老人たちも呪術の準備に入っているのが良く分かる。
そうして準備を整えたのだろう事を見たGMオイロスの声が次のターンが始まりを告げたのだった。
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