第31話『第2層 水禍劇場』 第3節
質疑応答の時間が始まり、一番先に手を挙げたのはイザベラさんだった。
「私の名前はイザベラ・ミランダと申します。偉大な神族の方、質問をよろしいでしょうか?」
「これはこれはご丁寧な挨拶ありがとうございます。ですが堅苦しいのは結構ですよ、ワタクシの事はオイロスとお呼びください。ご質問をどうぞ」
「オイロス様ありがとうございます。それでは質問ですが、こちらの階層でのTPについて伺ってもよろしいでしょうか?」
「そうでございますね。ではこの階層のTPについてお話ししましょう。ここでのTPは周回達成者と攻撃成功者つまり足場から落とした者の事ですが、それによるポイントの総計を2倍したものをTPとしてクリア者にお渡しいたします」
そして次に質問を行ったのはカズだった。
先ほどの取り乱し方が嘘だったかのように落ち着いているので、もう大丈夫なのだろうここはカズに任せよう。
「戦闘不能者とはどのように判断されるのですか?」
「それはこちらで判断いたします。そうですね、例えば気絶している者、歩けなくなっている者、自分よりリタイアを宣言した者、そして死亡したものでしょうか?ですが例外的なものはこちらの判断に任せていただきます」
「わかりました。では別の質問ですが。攻撃成功者とは相手を足場から落としたものだけの事でしょうか?そのほかの場合は適用されない?」
「はい、そう通りでございます。周回者が自分から落ちた場合などはポイントは入りません」
「わかりました、ありがとうございます。もう一つ質問しても大丈夫ですか?」
「はい、問題ございません。ご質問をどうぞ」
「周回者の足場ですが、12個あるかと思いますがほとんど飛び越して赤い足場だけしか使わないというのは可能でしょうか?」
「ええ可能となっております。ルール上赤い足場に足がついた時点でそこまで到達したことになります。しかしながらこのステージには高さ制限があり、今私がいる高さまでが限界高度になります。そして周囲にもステージを離れすぎると水の壁が出来、それに触れた時点で水に落ちたのと同じ扱いになります。おきをつけください」
「わかりました、ありがとうございます」
そう言ってカズは何か考える様に俯き、ブツブツと何かつぶやいている。
それにしても、もし俺たちの中に空を飛べる奴がいたら、結構無敵じゃないか?まぁ相手もその点は警戒してくるかもしれんが、普通に足場を渡ってくよりも絶対に安全だ。多分限界高度は3mといったところだろうが。
でも飛べるのって……。
『ア?テメェ俺様に何やらそうとしてやがるぅ、俺様はテメェらのサポート役だ。それ以外の協力は一切しねぇからな!』
(わかってるって、そんな怒るなって)
『ホントかよぉ』
ホントだってのもしかしたら手を貸してもらうことになるかもしれないけど、今はそんなこと考えてない。
そんな感じでエスリン12と念話で会話していると、GMのオイロスは辺りを見回しながら言葉を発する。
「他に質問される方はいらっしゃいませんか?なければ終わりにいたしますが」
その問いに答えたのはジャッバールの付き人であるサニヤだった。
「わたしはジャッバール家の侍女サニヤと申します。オイロス様お願いいたします。どうかジャッバール様にかけている戒めをお解き下さいませ」
「それにつきましては、説明が終わり次第解こうと思っておりますが、そちらの方は何やらこちらに敵意を持っているようでございます。なのでもし次ルール違反を行うようでしたら強制退場していただくことになりますが、よろしいですか?」
「はい、わたしが自分の身を賭して必ず主をお止めします!!」
その声は彼女の必死さが伝わり、思わず彼女の味方をしてしまいたくなるほどだった。
その言葉を聞いたオイロスは仮面で隠れていない顔をニヤリと歪ませる。
「ではほかに質問者はいらっしゃいますか?」
その声に手を挙げる者は一人もいない。その事を確認すると一つ頷き言葉を続ける。
「それではペナルティを解除いたしたいと思います。長らく失礼いたしました」
そう一言言ったのち右手を掲げると、ジャッバールは光に包まれその光が途切れた途端に怒鳴り声が響く。
「貴様!!余計なことを言いおって!貴様も我を愚弄する気か!!」
「申し訳ございません、出過ぎた真似をいたしました。お許しください」
サニヤは腰を九十度に曲げ許しを請うように微動だにせずにジャッバールの言葉を待っている。
それを見てジャッバールは拳を振り上げようとするが、何を思ったのか途中でつまらないとでもいうように鼻を鳴らすと拳を下げてサニヤに背を向ける。
「今回だけは貴様の忠誠に免じて発言を聞かなかったことにしてやろう、せいぜいこれから役に立つのだな」
「はっ必ずやお役に立って見せます」
その様子を見ているオイロスはわざとらしく感動したなどと呟きながら手を叩いている。
その手を叩く音が空虚に部屋に響き渡る。
「いや~とてもいい主従関係で感動いたしました。さてさて、それではこれよりゲームを始めさせていただきます。攻撃と周回はこちらのコインで決めさせていただきたいと思います。裏が出た方が攻撃、表が周回になってございます、裏と表どちらがよろしいですか?」
そう言いながらオイロスは金色に光るコインを摘まみながら不気味に笑っている。
先に答えたのはジャッバールだった。
「裏だ!!」
「それでは私は表にいたしましょう。」
ジャッバールに続いてアルフレードが、ジャッバールとは対極に冷静に呟くように宣言した。
それを聞いたオイロスはそれではと呟き右手の親指の上にコインを置き、勢いよく弾く。コインはきれいに垂直に上がり、そしてゆっくりと光を反射しながら落ちてくる。それをオイロスは寸分の狂いなく、左手の甲の上に乗せる。
「決まりました、攻撃側はガリブ家親衛隊の皆様方。周回側はハウソーン同盟部隊になっております。それではハウソーン同盟部隊の皆さまは周回する人数をお決めください。その人数によって攻撃側の人数が決定いたします」
「申し訳ありませんが、相談する時間をいただけますか?ルールを整理する時間もほしいのですが」
「かしこまりました、それではこちらの砂時計の砂が下に落ちるまでにお決めください」
アルフレードからの申し出に、オイロスはポケットから小さな砂時計を出す。それではこちらから見えないのではと思ったのだが、その砂時計はオイロスが放り投げると空中に浮かび、人間の子供くらいの大きさまで巨大になる。
まごついている時間などない、すぐに俺たちは集まって会議を行うことになった。
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